新しいモータ
今年のJMAGユーザ会は昨年好評をいただいた特別セッションを1日目に企画いたしました。
今年の特別セッションのテーマは『新しいモータ』です。とどまるところを知らないモータへの要求性能の向上やモータの活躍範囲が大きく広がるにつれて、新しいコンセプトに基づくモータの開発が盛んになってきています。スロットコンビネーション、材料、駆動方法などに思いもよらなかったアイディアが展開されています。今年はそこに焦点をあてたいと思います。講演者はそれぞれユニークなモータの開発に携わった方々にお願いしました。個々の新しいアイディアに加え、そのアイディアが生み出された経緯や方法論についてもお話がうかがえると思います。
講演
Novel Permanent Magnet Brushless Machines and Applications
シェフィールド大学 教授 Zi-Qiang Zhu氏
最初にお話いただくのは、英国シェフィールド大学のZi-Qiang Zhu教授です。
Zhu教授はモータ設計の分野で精力的な研究活動を続けておられ、近年では特に新しい原理に基づくPMモータの開発で世界をリードしています。教授が指導しているシェフィールド大学の研究室は設計の方法論だけでなく、試作から実測までを一貫して実施しており綿密な実証に裏付けられた研究成果を世の中に送り出しています。今回の講演では新しいアイディアの源泉になっている高度な理論の一端をやさしく解説いただくとともに、シミュレーション技術の活用についてもお話をいただく予定です。
次世代モータドライブを拓く新方式可変磁束モータ群
東洋大学 理工学部 電気電子情報工学科 准教授 堺 和人氏
続いて東洋大学の堺氏から、新方式可変磁束モータ群の研究についてご講演いただきます。
世界規模で問題になっている二酸化炭素とエネルギー消費の増加の改善のために、システムの省エネルギーが効果的であるとお考えになり、高効率化のために利用されている永久磁石モータの可変速運転の総消費電力量低減の課題克服のために、永久磁石の磁化を直接的に変化させるメモリモータや可変磁力モータに着目した背景など新たな未来を拓く新方式ついて興味深いお話が伺えると思います。
強め界磁型順突極モータに関する研究
日産自動車株式会社 総合研究所 EVシステム研究所 渋川 祐一氏
日産自動車の渋川様からは、強め界磁型順突極モータについてご講演いただきます。
従来の順突極構造を持つIPMモータにおいては、順突極を維持しながら十分なトルクを得ることは難しいとされていましたが、今回ご紹介いただくモータ構造では、この問題が解決できるとともに、極低速領域におけるセンサレス制御性も向上させることも可能になりました。
従来のモータとの比較検討結果についてもお話いただく予定です。
省レアアース高出力密度ハイブリッド界磁モータの研究
名古屋工業大学 大学院 工学研究科 おもひ領域 准教授 小坂 卓氏
最後に、名古屋工業大学の小坂氏から、ハイブリッド界磁モータの研究成果についてご講演頂きます。
ハイブリッド界磁モータとは、磁石磁力と電磁石磁力を効率的な3次元磁気回路で協調作用させたモータです。
現在、ハイブリッド自動車に搭載されているIPMモータに対して、希土類磁石使用量を半分に抑えながらほぼ同等の出力密度の実現可能性が示されています。
また、ダウンサイズの試作機試験により、可変磁力性能や、高トルク性能について実現可能性の妥当性が示されています。
近年、期待が寄せられているレアアース資源問題に対する対策について興味深いお話が伺えると思います。
成熟機器におけるイノベーション
副題の“成熟機器におけるイノベーション”は、一見確立したかに見える、例えば、モータやトランスなど成熟機器の開発アプローチにメスを入れ、さらなる進化を目指すもので、JMAGの最重要テーマとして取り組んでいるものです。
実際、温暖化対策をはじめ現在の世の中のニーズに応える最も正直な方法は、それら成熟機器を“別の新しい何か“で置き換えることではなく、成熟機器を徹底的に、または、新しい視点から見直すことで、その性能や開発プロセスを少しでも改善することではないでしょうか。
このテーマに関しては2007年の基調講演で田淵電機の阪部氏よりトランス設計についてその複雑さと今後の課題についてお話をいただきました。
2008年には、日立製作所の井出様から長い歴史を持つ大型回転機の設計開発において今日も最先端のシミュレーション技術を駆使して性能向上に取り組まれている様子をお話いただきました。
また、昨年はウィスコンシン大学のThomas M. Jahns教授を筆頭に安川モートル出光様、トヨタ自動車竹原様、千葉工業大学山崎教授に、省エネ機器のキーコンポーネントとして急速な発展を遂げているIPMモータに焦点をあて、成熟機種であったPMモータをどのような視点で捉え、そして、考えることで世の中を変えるようなモータに進化して行ったかをご講演いただきました。
成熟機器であるモータの、多くの人の予想を超える進化、すなわちイノベーションの物語は、モータに限らず多くの成熟機器の設計開発にとって勇気を与えてくれるものだと思います。
当日のユーザ会は本特別セッションに続き、ユーザ事例、新しい製品や技術の紹介が満載です。
皆様のご参加を心からお待ち申し上げます。
株式会社 JSOL エンジニアリング本部 山田 隆
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