設計プロセスにおける利用
FEAを用いない従来の典型的なモータの設計プロセスを図1に示します。
一般に電気機器の設計では、磁気装荷と電気装荷のバランスを取りながら要求仕様を満たして行くことが基本となります。しかし設計に余裕のない場合や両者の最適なバランスを詰めていくような場合は、鉄心を太くして磁気飽和を避けるのか、それともコイルスペースをとって巻き数を稼ぐのかのせめぎ合いになることが多いと思います。磁気飽和特性を考慮しながら、上記のような形状のわずかな違いを反映した設計においては、経験値や内製ツールのみによる検討は精度面における信頼性が不十分になりがちです。
ここで設計プロセスにおける代表的な問題点を以下に取り上げてみます。
- 磁気回路の確認: 突極性の強いモータではFEAなしでの評価が難しいケースがある。
- 磁石パーミアンス: 動作時のパーミアンス評価は駆動電流だけでなく回転運動も考慮する必要があり複雑。
- 動作時の誘起電圧: 突極性が強いモータでは、基本周波数以外の高調波成分が多く乗るため、定量的な評価が難しい。
- 損失評価: 銅損はある程度見積もりが可能だが、鉄損や磁石の渦電流損失の評価は分布が複雑で難しい。
また過去のデータに基づく経験値や内製ツールのみの利用は、設計時の初期検討において、経験値やツールが許す範囲に限定された発想や結果しか得られないというデメリットが生じかねません。
たとえば磁石の渦電流による減磁の影響は渦電流の影響を考慮した評価を通して初めてその影響を把握することができます。もし経験値やツールで考慮できることが形状や磁化特性のみであるとすると、これらのデータをいくら取り替えて検討しても渦電流の影響を考慮した正しい評価にたどり着くことはできません。
これらの問題はFEAをうまく使うことで、定量的かつ客観的な評価ができるようになります。
磁気回路の確認はFEAを利用する上でもっとも基本的な利用法ですが、磁束線密度コンターや磁束線の流れを見ることは磁気回路をそのまま可視化して確認していることになります。(図2) また磁束の漏れ具合を見ることで、初期設計時には想定しない磁気回路が構成されていないかを確認することも出来ます。
動作時の磁石パーミアンスも磁石各部の動作点が想定される範囲内で動作しているかを時系列的に追いかけることができます。パーミアンスの劣化が著しい箇所には、フラックスバリア形状を再考するというフィードバックが得られます。
埋め込み型磁石モータに見られる突極性の強いモータでは誘起電圧波形に高調波成分が乗りがちですが、これを考慮した解析は盛もちろん、FFTによる波形分析により問題となる周波数成分を割り出すことができます。またこの高調波成分が誘起する損失も問題になりますが、誘起電圧波形と合わせて一度に評価することができます。これらの結果を利用して渦電流低減の為の磁石の分割(図3)、電磁鋼帯のグレードを検討するといった利用が可能になります。
このようにFEAの解析結果から、表1に示すように初期設計の問題を洗い出して必要な修正を加えることで、実機の試作を行うことなく机上のシミュレーションのみで、次の改善された設計案に移ることができるようになります。
 図1 従来の典型的なモータ設計プロセス例
 図2 初期検討におけるモータの磁束密度分布
 図3 初期検討におけるモータ磁石部の渦電流分布 (左:磁石非分割)と検討後の渦電流分布(右:磁石4分割) ( JAC022 IPMモータの永久磁石渦電流解析 )
 図4 FEA導入による図1フローの短縮化、付加価値の追加
表1 初期検討における検討事項

|