JMAGをご活用いただいている学生の皆様のポスター発表を企画しました。
この機会に、各教育機関でどのような研究がされているのか、JMAGがどのように活用されているのかを知ってみませんか?
各日ポスター会場で、発表される学生の皆様とのディスカッションもぜひお楽しみください。
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12極20スロット5相マルチモードリラクタンスモータにおけるSynRMモードとSRMモードの性能をバランスさせるマルチスタディ多目的最適化設計手法
東京科学大学 工学院 電気電子系 清田研究室
國分 涼 氏
磁界WPTにおける鉄筋コンクリートの鉄筋の絶縁処理有無による渦電流抑制効果とコイル特性に及ぼす影響のJMAGを用いた解析値と測定値の比較
東京理科大学 電気電子情報工学専攻 居村研究室
大西 琉磨 氏
本発表では、集中巻を有する直入れ始動の2極誘導機に着目する。従来の分布巻で構成された2極誘導機はコイルエンド高さがモータサイズを大きくしていた。コイルエンド高さの低減のために集中巻を適用すると、磁束の2次成分が基本波成分と逆方向に回転し、負のトルクを発生させるため一般的に使われていない。そこで、本発表では、磁束変調を用いた集中巻の2極誘導機を提案する。まず、動作原理を数学的に説明し、エアギャップ中の磁束密度を解析し、様々なスロット数において妥当性を検証する。そして、運動方程式を用いた過渡解析で原理を検証する。

本研究では、スポーク型IPM(Interior Permanent Magnet)モータに関する新規なロータ構造を提案する。提案構造において、磁石はフラスコ形状に成形され、従来のスポーク型IPMモータと同様にロータ内に放射状に配置される。この構造により、磁石はロータコアに圧着され、遠心力に対抗して保持される。そのため、従来の構造において漏れ磁束の主要な経路となっていた磁石保持用のブリッジを排除することが可能となり、結果としてロータ磁束を増加させることができる。
提案構造の利点は漏れ磁束の低減にあり、これにより同等量の磁石を有する従来のスポーク型IPMモータと比較して、より高いトルクを実現する。本構造の有効性を検証するため、有限要素法を用いた数値解析により、その磁気特性および強度特性を評価した。さらに、得られた結果を従来型モータのものと比較検討した。数値解析、実機での試験では、提案モータの最大トルクは、従来型モータを上回ることが確認された。

本研究では、V字型IPMモータ向けの新規ロータ構造を提案する。V字型IPMモータを用いることで、d軸上に集中磁束を形成でき、高トルクが得られる。しかし、外形側ブリッジに生じる漏れ磁束が設計上の課題であった。提案モータでは従来の長方形磁石に代わり、台形磁石をロータコアを挿入する。磁石の幅は半径方向に徐々に狭くなる形状とし、これにより外径側ブリッジなしでロータコアによる磁石支持を可能にした。本研究ではその有効性を検証するため数値解析及び実機検証を実施した。これらの結果より、長方形磁石を用いた従来のIPMモータと同等のトルクを得るために必要な磁石量を10.2%削減できることが確認された。

柵で囲うことなく作動させることができる協働ロボットでは、ロボットの軽量化は高速化、安全性の向上、配置変更の容易さに直結することから、主要部品であるアクチュエータの軽量化が求められている。これを実現する方針として、モータの出力トルクを維持しつつモータを軽量化することが挙げられる。
そこでモータの高トルク密度化を目的として、本研究ではウォームギヤを模した磁気ウォームギヤードモータ(MWGM)を提案し、クローポールの導入によりトルク密度を向上した。しかし内包する磁気ウォームによるトルク増幅効果は明らかになっていない。
本発表では、MWGMと同様に磁気ギヤの機能を有し、低速高トルクの特長を持つ永久磁石バーニヤモータ(PMVM)とMWGMのトルク性能を比較する。理論上のトルクと実際のトルクの両方を比較するため、固定子コアには2種類の材料を適用する。ここでJMAG-Designerにおける材料変数の機能を用いてスタディ内での材料の変更を実現し、材料ごとにスタディを設定し開始する手間を減らす。解析の結果、磁気飽和を無視できる条件ではMWGMのほうが高性能だが、実際は磁気飽和の影響でPMVMと同等の性能に抑制されることを示す。

近年、環境問題に対する意識の高まりに伴って、電動農機・建機の開発が加速している。これらに搭載されるモータは、限られたスペースで高いトルクを発揮することが求められる。この特性を満たすモータとして、アキシャルギャップ構造を有するモータが有力な候補となる。
アキシャルギャップモータは、軸方向に構造が一様でないため、ラジアルギャップ構造のように2次元解析ができない。そのため、最適設計手法を適用する際には、モータを周方向に展開した2次元リニアモデルが利用されるケースが多い。しかし、磁束分布や磁石渦電流などが精度良く模擬できないため、損失の誤差が大きくなる懸念がある。特に、高周波になるほど、その傾向は強まると予想される。
本発表では、周波数を変化させながら、スーパーコンピュータを用いた3次元最適化と、2次元リニアモデルによる最適化を行い、それぞれの結果を比較することで、実用的な精度を実現可能な周波数の上限について調査を行った。

レアアース磁石の安定供給の問題の対策としてネオジウム磁石を使用しないモータが要求されている。また、永久磁石モータにおいては、高磁力の永久磁石磁束によって高速回転域の効率低下と故障時の短絡電流の問題がある。これらの課題を解決するためフェライト磁石とアルニコ磁石を補助的に適用し、低速と高速域で永久磁石の磁力を可変して駆動できる永久磁石リラクタンスモータを提案する。提案モータは同期リラクタンスモータの約1.6倍の高トルクの発生と、磁石磁束量をゼロにしたリラクタンスモータ駆動も可能であることをJMAGによる解析で確認した。

近年、自然エネルギーへの関心の高まりから洋上風力発電の利用が推進されている。風力発電機に一般に用いられる機械式の増速ギヤは摩耗や発熱による保守の問題がある。これに対して、非接触で増速が可能な磁気ギヤは、本質的に振動や騒音、発塵が少なく、保守性に優れるため、次世代のギヤとして期待されている。数ある磁気ギヤの中でも磁束変調型磁気ギヤは、内外回転子のすべての磁石が常にトルク伝達に寄与することから、トルク密度や効率が高く、実用化が最も期待されている。一方で、内外回転子に用いる磁石使用量の削減や軽量化はコスト削減等の観点から重要な課題である。洋上風力発電に用いる磁気ギヤは、その直径が約10 mにも達するため、FEMによる三次元電磁界解析を用いた磁石形状の最適化は、モデルサイズの観点から容易では無い。そこで、本研究では洋上風力発電用大型磁気ギヤの磁石使用量削減と重量トルク密度増大の両立を目的として、スーパーコンピュータを用いた大規模並列計算による磁石形状の最適化について検討を行った。

横方向磁束型スイッチトリラクタンスモータ(TFSRM)は巻線がトロイダル状であることから、巻線占有率を高くすることができる。そのため、一般的なSRモータと比較して大トルクになることが期待されている。これまで、TFSRMの構造パラメータとトルクの関係について、線形材料を用いた場合の極数や固定子ヨーク、固定子極幅とトルクの関係については報告されているが、非線形材料を用いた構造パラメータとトルクの関係は明らかになっていない。そこで、本発表では非線形材料である無方向性電磁鋼鈑を用いた場合の固定子のヨークと極幅がトルクへ与える影響を3D-FEMを用いて明らかにする。
近年、地球環境保全および省エネルギーの観念から、モータの高効率化が求められており、モータに使用される鉄心材料はこれを実現するためのキーコンポーネントである。鉄心材料にはそれぞれ特性があり、1つの鉄心材料を使用するのではなく、複数の鉄心材料を使用することでそれぞれの長所を活かして短所を補い合うことで、さらなる高効率化が期待できる。本研究では、飽和磁束密度が高い無方向性ケイ素鋼板と低鉄損なアモルファスの2種類の鉄心材料を固定子に併用したハイブリット鉄心材料モータを提案し、最適な鉄心材料の割合について検討を行う。
加速器とは、電場・磁場を用いて荷電粒子を加速させビームを発生させる装置である。現状、加速器のビーム調整には膨大な時間を要してしまうため、ビーム調整の高速化が求められている。そのためには、磁気ヒステリシスを考慮可能な高精度なリアルタイム磁場制御手法の確立が必要不可欠である。先に発表者らは、FEMと同等の精度で計算時間を大幅に短縮可能な縮約プレイモデルという手法を提案をした。本発表では、縮約プレイモデルの解析結果を実験結果と比較することで実測再現精度の評価を行ったので報告する。
電動モビリティの高性能化に伴い、広い速度域と軽量化を両立できるモータが求められている。従来の可変界磁PMSMは界磁巻線と専用回路が必要でシステムが大型化する課題がある。そこで本論文では、固定子コイルエンドの起磁力と直流零相電流 i_z を用いて界磁を制御するアキシャルギャップ型PMSMを提案し、デュアルインバータで i_z をd–q電流と独立に供給する構成を採用した。回転子鉄心には “コンシクエントポール”構造を適用し、i_z の極性で磁極をS/Nに切替えてギャップ磁束密度を増減させる。電磁界解析と回路シミュレーションにより、従来のPMSMや界磁巻線付き可変界磁PMSMと比較した。結果として、負の i_zにより磁束をほぼゼロまで弱められ、正のi_z でトルクを強化でき、同一線電流 6.5A_{rms} 条件で最大トルクがi_z=3.5A_{dc/phase} 時に約32%向上、さらに提案モータは従来の界磁巻線方式に対して約39% 高いトルクと、より広いNT特性(速度域)を実現した。以上より、追加の界磁巻線なしで界磁制御を可能にする提案方式の有効性が示された。

有限要素法(FEM)は電磁界解析に広く利用されており、高精度な解析が可能である。しかし、要素数が増加すると解析時間が大幅に増大するという欠点を有している。特にリアルタイム制御に用いる制御パラメータの決定においては、解析の高速化に加えてマルチフィジックス解析への対応が求められる。本発表では、解析高速化手法であるモデル縮約法の一つであるCauer Ladder Network法に着目し、3次元のFEMモデルをマルチポートのカウア梯子回路等価回路に置き換える手法について報告する。

MRIやNMRの高性能化には磁場の均一性が重要であり、そのためには製造時に生じる磁場のムラ(誤差磁場)を補正するコイルの最適設計が有効となる。
しかし、従来のコイル設計は理想的な誤差磁場を仮定して行われることが多く、磁石の個体差や配置誤差といった実機固有の複雑な磁場分布を正確に反映させることは困難であった。
本発表では、この課題を解決するため、実測された三次元磁場分布から直接オーダーメイドの補正コイルを設計する手法を提案する。まず、磁場測定機を用いて補正対象空間の磁場分布を精密に測定する。
次に、この実測データに基づき、適応クロス近似(ACA)により計算を高速化した流れ関数法を適用することで、誤差磁場を打ち消す目標磁場を生成するための最適な電流分布を算出する。
この一連のプロセスにより、単なる理想的なシミュレーションではなく、実機固有の特性に基づいた補正コイル形状を効率的に導出することが可能となる。
今後は本手法で設計したコイルを金属3Dプリンターで製作し、実機での磁場分布測定及びNMR測定を通じてその有効性を実証する。

粒子線がん治療用加速器では、患者のがん形状に合わせた高精度なビーム照射が求められ、そのためには加速器用電磁石の鉄心における磁気ヒステリシスの影響を考慮した磁場生成が必要不可欠である。
ヒステリシスモデルの一つであるプレイモデルは、エベレット関数を用いて形状関数を同定することで多数のパラメータを決定論的に求めることができるため、加速器用電磁石の発生磁場の計算などの、高い再現性が求められる状況では有効な手法とされている。
また、加速器分野では効率的な計算が可能な、磁気スカラポテンシャル法による磁界解析が広く用いられる。
加えて、磁気スカラポテンシャルによる数値解は磁界Hであるため、H入力プレイモデルと相性が良いとされている。
一方で、我々での研究では、B入力プレイモデルの方が非対称マイナーループの実測再現精度において優れている可能性が示唆されている。
本研究では、その原因をプレイモデルの性質であるマイナーループの合同性に着目して検証する。
そのために、任意の形状のBHループを測定するための環境をdSPACEを用いて構築した。
本発表では、BおよびH入力プレイモデルの再現精度を検証するため、任意波形のBHループを取得可能なdSPACEベースの測定環境を構築し、今後の比較解析に向けた基礎的検討結果を報告する。

マルチモードリラクタンスモータ(MRM)は、高効率な同期リラクタンスモータ(SynRM)モードと高出力なスイッチトリラクタンスモータ(SRM)モードを単一の筐体で駆動し、それらを適宜に切り替えて性能を向上させる。さらに、永久磁石を使用しないモード切替モータとして、初めて多重巻線や巻線切替が不要であり、駆動回路のコスト増加をある程度まで抑制する。特に、12極20スロット5相MRMは、性能とコストの両面から有力である。他方、モード切替モータに共通する課題として、従来からモード間の性能トレードオフがあり、MRMも例外ではない。本発表は、SynRMモードとSRMモードの性能トレードオフをバランスさせたMRMを実現すべく、JMAG-Designerの多目的遺伝的アルゴリズムとマルチスタディ解析を活用した最適化設計手法を検討する。また、5相MRMに特有の電流ベクトル制御を適用することで解析ステップ数を短縮し、最適化設計を高速化する。

EVには都市走行・高速走行など様々な走行環境が存在するため、EV用の電動機としては幅広い動作領域が要求される。このような要求に対して、インバータを複数台使用した変速機能付誘導機(Induction Motor Transmission System,IMTS)が有効であると考えられる。IMTSでは同一のモータ構造で極数を切り換えて駆動するため、各極数駆動に適した形状を最適化によって探索することが望ましい。しかし、IMの解析時間は他の電動機と比較して時間が長く、形状最適化等の多ケース解析をローカルPCで実行するのはコア数等の制約が伴う。
そこで本発表ではスーパーコンピュータ「TSUBAME4.0」を用いた多目的の形状最適化を行い、スーパーコンピュータにおけるJMAG利用方法及びIMTSの両極数駆動に適した形状を報告する。

粒子線がん治療用加速器では、患者の腫瘍形状に合わせた高精度なビーム照射が求められ、そのためには加速器用電磁石の鉄心における磁気ヒステリシスの影響を考慮した磁場生成が不可欠である。 ヒステリシスを表現する手法の一つであるプレイモデルは、エベレット関数に基づいて形状関数を決定できるため、決定論的かつ高い再現性を持つ磁場解析手法として知られている。 本研究では、プレイモデルの構造を保持したままモデル次元を縮小し、主要な磁化応答のみを抽出する縮約プレイモデルを構築した。加速器用電磁石を対象に、有限要素解析によってミッドプレーン上の磁場分布を取得し、得られたデータからエベレット関数を用いて形状関数を同定した。その結果、有限要素解析と同等の精度を保ちながら、大幅な計算時間の短縮を実現した。 さらに今後は、ユーザーサブルーチン機能を用いて磁気余項を解析中に算出・反映する拡張を進め、実際の磁化過程に即したヒステリシス挙動の再現を目指している。 本発表では、加速器用電磁石のヒステリシスを現実に即して再現可能とする縮約プレイモデルの提案と、その実装手法について報告する。
脱炭素社会の実現に向け、電気自動車への走行中ワイヤレス給電の実用化が期待されている。本研究では、道路内部の鉄筋が給電コイルに与える影響を明らかにするため、絶縁処理を施した鉄筋と未処理鉄筋の2条件で、コイルの電気特性および伝送効率を測定し、JMAGによる解析結果と比較した。その結果、受電コイルでは解析値と測定値が良好に一致した一方、送電コイルではフェライトの影響などにより誤差が生じた。また、絶縁処理によって渦電流損が大幅に低減することを確認した。今後は、より実際の鉄筋形状に近いモデルで解析精度の向上を図る。

近年、データセンターのUPSや電気自動車(HEV)などの用途において、高電力密度コンバータの需要が増加している。そこで用いられる大型インダクタは欠かせない受動部品であり、損失の正確な評価が必要となる。しかし、大型インダクタでは磁束密度の不均一性を考慮する必要がある。 本研究では、PWMインバータ励磁下における大型トロイダルACフィルタインダクタの鉄損を高精度に予測するため、ロスマップ法とFEM解析を組み合わせた解析手法を提案する。提案手法では、磁界および磁束密度の空間分布を解析的に表現する半径方向モデルを導入することで、磁束密度の不均一分布を考慮した鉄損評価を実現した。 また、実機試験で得られた実測値と提案手法で得られた解析値を比較することで、提案手法の有用性を実証している。 その結果、PWM励磁下の大型トロイダルインダクタに対して、精度と計算効率を両立した鉄損予測が可能であることを確認した。

ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づき、5種類の自動車用モータ(銅巻線PMSM、SynRM、PMaSynRM、IMおよびアルミニウム巻線PMMについて、製造時および走行時の環境影響を比較評価した。
アルミニウム巻線およびレアアースフリーモータの有用性について環境負荷の観点から有用性を評価する。また、同一体格および同一占積率でアルミ巻線PMSMを設計する際の課題についても示す。

近年、電気自動車の普及に伴い自動車駆動用モータの高性能化が求められている。本研究では最高速度が3万rpmの高速自動車駆動用モータにおいて低トルクリプル化、低損失化、低コスト化を実現する構造について検討を行った。トルクリプル対策には一般的にスキュー構造を採用することが多いが、スキュー構造には製造コストの増加や、軸方向漏れ磁束による損失増加などの課題がある。そこで本研究では、分布巻き分数スロット構造を提案し、JMAGによる解析でトルクリプル・損失の観点から従来構造と比較を行った。その結果、従来のスキュー構造に対して優れた構造を明らかにしたので報告する。
