JMAGをご活用いただいている学生の皆様のポスター発表を企画しました。
この機会に、各教育機関でどのような研究がされているのか、JMAGがどのように活用されているのかを知ってみませんか?
各日ポスター会場で、発表される学生の皆様とのディスカッションもぜひお楽しみください。
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磁気飽和の大きいSynRM向けセンサレス制御における干渉項を考慮したdq軸インダクタンスと高周波電流応答に関する検討
明治大学 理工学部 電気電子生命学科 パワーエレクトロニクス研究室
瀧澤 壮太 氏
近年、自然エネルギーへの関心の高まりから洋上風力発電の利用が推進されているが、機械式の増速ギヤは摩耗や発熱による保守の問題がある。これに対して、非接触で増速が可能な磁気ギヤは、本質的に振動や騒音、発塵が少なく、保守性に優れるため、次世代のギヤとして期待されている。磁気ギヤには様々な種類があるが、その中でも磁束変調型磁気ギヤは、内外回転子のすべての磁石が常にトルク伝達に寄与することから、トルク密度と効率が高く、実用化が最も期待されている。一方で、内外回転子ともに永久磁石を使用するため、性能を維持しながら磁石使用量を削減することが重要である。洋上風力発電に用いる磁気ギヤは、その直径が約10 mにも達するため、FEMによる3次元電磁界解析を用いた磁石形状の最適化は、モデルサイズの観点から容易では無い。そこで、本研究では洋上風力発電用大型磁気ギヤのトルク特性向上と磁石使用量の削減の両立を目的として、スーパーコンピュータを用いた大規模並列計算による磁石形状の最適化について検討を行った。

電気自動車(BEV)やハイブリッド車(PHEV)の普及が急速に進み、これらに使用されるインダクタはこれまで以上に大電力で励磁されることが予想される。大電力で励磁されるインダクタにおいては、磁気コアの磁気飽和を防ぐためにエアギャップを挿入することが一般的である。しかし、このエアギャップの導入により磁気抵抗が複雑に変化し、ギャップから磁束がコア外部に漏れることでフリンジング磁束が発生する。このフリンジング磁束により引き起こされるジュール損失(フリンジング損失)はインダクタの損失特性を複雑化させ、大容量インダクタの損失評価を困難にする。本研究では、JMAG-Designerを使用してフリンジング損失を考慮したインダクタの損失をより正確に評価するためのシステムを模索する。

柵で囲うことなく作動する人協働ロボットでは、ロボットの軽量化は高速化や配置変更の容易さに直結することから、アクチュエータの軽量化が求められている。
そこでトルク密度が高いモータの開発を目的として、本研究ではウォームギヤを模した磁気ウォームギヤドモータ(MWGM)を提案した。これまでクローポールと半スキュー構造の導入によりトルク密度を向上したが、さらに向上する必要がある。
本発表では、半スキュー構造の寸法を最適化する。計算コストを削減するため、静解析を利用できる無負荷鎖交磁束を目的関数とする。局所的な磁気飽和を緩和するため、JMAG-Designerの”ブーリアン”機能を活用してクローヨークに傾きを設ける。解析結果を比較し、最適化によりトルク密度が向上したことを示す。

永久磁石同期モータ(Permanent Magnet Synchronous Motor: PMSM)は、高速回転時に弱め磁束制御を行う必要があり、その際の銅損による効率低下が問題となる。この問題を解決するために、可変磁力モータ(Variable Magnetomotive Force Motor: VMFM)が研究されている。VMFMは、可変磁力磁石の磁化状態を変化させる際、瞬間的に大きな磁化電流を流すため、パワー半導体デバイスの定格の増加、直流電圧に対する駆動電圧の余裕において課題がある。以上の問題に対し、本報告では、共振回路を併用した磁化専用コイルを備えた可変磁力メモリモータドライブシステムを提案し、シミュレーションにより検証した結果を報告する。

ドローンは、農業、点検・整備、物流など幅広い分野で活用が期待されており、今後、市場規模が拡大することが予測されている。これに伴い、ドローンの駆動源となるモータには、軽薄短小で所望のトルクを発揮することが求められている。扁平に適したモータ構造として、アキシャルギャップ型が知られているが、固定子鉄心の形状が複雑になるため、従来の電磁鋼板では製造が必ずしも容易では無いという課題がある。そこで本研究では、形状自由度が高い圧粉磁心を固定子鉄心に採用し、ドローン用アキシャルギャップ型PMモータの解析・設計を行った。設計に際しては、有限要素法(FEM)による電磁界解析を用いて、トルク重量比の最大化を目的関数として、遺伝的アルゴリズム(GA)によってモータ各部の最適化を図った。また、3次元FEMモデルでは実用的な時間で最適化を図ることは困難であるため、これと等価な2次元リニアモデルを用いた。結果として、同一体積のラジアルギャップ型PMモータと比べて、トルク重量比が約25%大きくなることが明らかとなった。

電気機器の高効率化には高精度な鉄損算定が必要であり、そのためには磁性材料のヒステリシス特性を考慮した磁界解析が有効となる。ヒステリシス特性を実現するためのモデルとして、複数のプレイヒステロンと形状関数を組み合わせることで任意のヒステリシスループを表現するプレイモデルが広く用いられている。
プレイモデルで用いる形状関数は磁束密度を等間隔に配置する必要があるが、実測データではこれを厳密に制御しながら、多くのループを測定することは容易ではなく長大な時間を必要とする。
本発表では、測定されたヒステリシス特性に対して、パラメトリックな有理多項式近似を行うことにより、補間されたマイナーループを取得し、そこから形状関数を求める手法を提案する。この手法により、不等間隔の実測データからでも等間隔なプレイモデルを作成することが可能となり、比較的少ない測定データをもとにプレイモデルを構築することが可能となる。

電気自動車用の駆動モータは回転速度が低速の場合と高速の場合の全ての運転領域で高効率であることが求められる。そこで、ロータに永久磁石を使用せず電磁石を使用する巻線界磁型同期モータが注目されている。このモータは、ロータに印可する電流の大きさを調節することで全ての運転領域で高効率を実現できる可能性がある。現在、スリップリングを使用した直接給電方式の巻線界磁型同期モータが量産されているが、スリップリングの設置により軸方向に大型化している。そこで、本研究では非接触給電によりロータのコイルに給電する方式の巻線界磁型同期モータに着目する。本発表では、電力損失の少ない非接触給電技術の確立とそれに対応した巻線界磁型同期モータ構造の検討をJMAG-Designerを用いて行う。

マルチモードリラクタンスモータ(MRM)は、同期リラクタンスモータとスイッチトリラクタンスモータの2つの動作モードを、単一の筐体において最低限の制御自由度で切り替えることが可能である。とくに、HEV用主機電動機を想定する12P20Sとした5相MRMは、最大トルクの最大化を目標関数とした単目的遺伝的アルゴリズムを使用し、機械形状と電流波形の双方で設計された。また、6P14Sおよび10P14Sとした7相MRMが、同様の設計候補として検討された。本発表は、電流ベクトル制御を考慮した多相MRMの最適化設計について、その手法と各ケースの結果を紹介する。

本研究では、同期リラクタンスモータ(SynRM)に切替可能な界磁巻線型フラックススイッチングモータ(WFFSM)の性能向上を目指している。このため、WFFSM動作だけでなく、SynRMとして動作した時の特性も考慮する必要がある。しかし、これまでの設計では、基底回転数におけるWFFSM動作のトルクを最大化することのみを考えて設計していたため、WFFSM動作の高速域で効率が極端に悪化する領域が発生する問題や、SynRM動作させた時に高速域で急激にトルクが減少する問題が発生していた。そこで、連成解析機能を用いることにより、WFFSM動作させた時とSynRM動作させた時の両方の性能を考慮して設計できることを報告する。

近年、省エネ化や省資源化の機運の高まりから、高効率化が可能であり、回転子に永久磁石を用いないシンクロナスリラクタンスモータ(Synchronous Reluctance Motor: SynRM)の使用分野が拡大している。このSynRMを、突極性を用いたセンサレス制御方式によりベクトル制御を行う場合、磁気飽和が大きいという特性から、磁極位置推定誤差に対するインダクタンス変化の影響が大きく、高精度な磁極位置推定を行うことが困難である。この問題を解決するために、磁気飽和による非線形特性や高調波成分に対応可能なセンサレス制御方式が研究されている。本報告では磁気飽和の影響がある場合の高周波電流応答の特性について飽和特性および軸干渉の影響を考慮した高周波電流応答の特性にについてJMAG-RTモデルの磁束解析を用いた結果と実機検証の結果を比較検証する。
