モータのモデルベース開発事例

はじめに

電動化におけるキーコンポーネントであるモータに要求されるのはコンポーネントとしての高い性能だけでなくシステムとの高い整合性です。
シミュレーションを活用したモデルベース開発はモータ開発においても必須になりつつあります。
モータ設計で高い実績を持つJMAGがモデルベース開発のための新しいワークフローを提案します。
事例では、EV用のモータの開発が、システム設計、コンポーネント設計、試作・性能評価、システム検証の中で具体的にどのように進んでいくかを示しています。
尚、示されている事例は全て一貫してJMAGを使ったシミュレーションによるものです。

1. システム設計

ここでは、最終製品に要求される性能から、システム設計を通じてコンポーネント要求、すなわち、モータの要求仕様へとブレークダウンします。
これまで、経験とルールベースで行ってきた作業を、シミュレーションを多用することで、システム要求を満たすことを確認しながら、モータの仕様を固めていきます。シミュレーションによって非常に広範な設計空間を高速に調べ上げることができるため、漏れなく、より合理的に、後工程での自由度を残しつつ、設計空間を絞っていくことができます。
ここではEVへの要求から駆動モータ、ドライブの要求を割り出しています。まず、システム要求からモータの体格、出力を割り出した後、可能性のあるモータについてエネルギーフローの検討を行い、モータへの基本要求を決めた後、モータタイプの選定を要求である最大トルク、最大出力の評価によって行っています。効率の高さと磁石量が少ない(低価格)という理由によってI字型のIPMが選ばれています。
システムレベルにおいて具体的なモータ形状、構成まで踏み込んで検討することで、手戻りの少ない効率的な開発が可能になります。

システム設計を通じたモータの要求仕様へのブレークダウン

※画像または下記タイトルクリックすると詳細を確認いただけます。
#01 モータドライブ要求仕様の決定証
#02 航続距離の検証
#03 振動低減対策
#04 最大出力、最大トルク、最大効率による設計案の選択
#コラム:MBDにおけるモデル精度

2. コンポーネント設計

前段のシステム設計で固まったモータへの要求を基に、具体的なモータ形状、構成を決めていきます。ここでのシミュレーションの使われ方も進化しています。
これまでは、経験とルールによって設計されたモータの性能確認のためにシミュレーションが使われてきましたが、新しいワークフローでは、シミュレーションの特性を生かしたパラメトリック解析によって広範な設計空間を調べ上げ要求に合致する最適なモータを見つけていきます。
今回は巻線としては出力密度を上げるために占積率が稼げる角型導体と分布巻が選ばれましたが、これは素線タイプ、スロット形状、巻線方法のパラメトリック解析の結果です。ロータは多くの設計変数を持つため、数多くのパラメトリック解析によって特性を広く俯瞰した上で、磁石位置と形状を最適化しました。スロット開口幅は段スキューを考慮したコギングトルクを最小化するように決定しています。最終的に、厳しい環境にも耐えられる十分な減磁耐性を持っていることを確認しています。
また、設計されたモータをドライブするための制御パラメータの適合のために、詳細なモータ特性を制御設計のプロセスに渡します。

コンポーネント設計

#05 抵抗 #06 鉄損 #07 トルク #08 ロータ設計のための出力・損失相関図 #09 コギングトルク、誘起電圧波形 #10 磁石の減磁と保磁力の分布 #11 制御設計用モータ特性 #12 制御パラメータの適合

※画像または下記タイトルクリックすると詳細を確認いただけます。
#05 抵抗
#06 鉄損
#07 トルク
#08 ロータ設計のための出力・損失相関図
#09 コギングトルク、誘起電圧波形
#10 磁石の減磁と保磁力の分布
#11 制御設計用モータ特性
#12 制御パラメータの適合

3. 試作・性能評価

設計で意図した通りの性能を、実機として発揮できるか、何か問題が生じないかをこのフェーズで確認します。
HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)などを利用した今日の最新のシミュレーション技術を駆使して、コンピュータ内で実機に肉薄します。この仮想試作によって試作コストを大幅に削減できるだけでなく、極めて幅広い動作条件について性能を確認することができます。また、実物では確認ができないモータ内部の磁界、損失、温度、力の分布を見ることができ、よりスマートに性能の確認と改善のアイディアを得ることもできます。
ここではまず効率マップを確認しています。実機では温度管理の問題もあり非常に時間と手間のかかる作業になりますが、シミュレーションでは簡単に生成することができます。減磁の原因となる磁石のホットスポットの確認、振動の原因となる電磁力の詳細な分析も行い、設計されたモータが要求性能を満たしていることを確認しています。

試作・性能評価

#13 効率マップ #14 磁石の温度分布 #15 トルク脈動 #16 電磁力分布 #17 固有モード

※画像または下記タイトルクリックすると詳細を確認いただけます。
#13 効率マップ
#14 磁石の温度分布
#15 トルク脈動
#16, 17 電磁力分布、固有モード

4. システム検証

できあがったモータを使った時に最終製品が所望の性能を発揮することを確認します。
システム検証としては制御との整合性、熱・振動などの物理系との整合性を確認していきます。
制御に関してはMIL/HILの技術を使います。モータの磁気飽和はもとより空間高調波、偏心などの詳細情報も取り込んだ精緻なモータモデルを使うことで、広範かつ詳細に制御動作を検証することができます。物理系の整合性は、冷却および音振動などのシミュレータとの連携シミュレーションによって行います。モータの仮想試作・評価によって得られる詳細な発熱分布、電磁力分布を外部シミュレータに渡すことで、精度の高い検証が行われます。
ここでは、制御検証の一例としてインバータ故障時の電流・トルクの応答性を確認しています。このシミュレーションはJMAG-RTとMATLAB/Simulinkを用いて行っています。またモータをギア、インバータとつないだ際の振動についても確認しています。

システム検証

#18 ECU制御のテスト #19 航続距離の検証 #20 システム振動評価 #21 車両走行時の振動評価

※画像または下記タイトルクリックすると詳細を確認いただけます。
#18 ECU制御のテスト
#19 航続距離の検証
#20 システム振動評価
#21 車両走行時の振動評価

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