北海道大学 小柴 正則
概要
有限要素法(Finite Element Method,.FEM)は極めて汎用性の高い数値解析手法の一つであり、マイクロ波・ミリ波工学、光エレクトロニクス、レーザ・量子エレクトロニクスなど、情報通信関連分野においても盛んに利用されるようになっている[1]-[3]。とりわけ、マイクロ波・ミリ波・光導波路、3次元共振器、電磁波放射・散乱などへの応用が活発化している[4]-[6]。
ところで、こうした光・電磁波問題の有限要素法を用いだベクトル波解析においては、スプリアス解と呼ばれる非物理的な解が発生し、これがFEMを利用する場合の大きな障害になってきた。このため、10年ほど前からスプリアス解を抑圧、除去するための方法に関する研究が本格化し、現在では、ユーザが戸惑うと思われるほどに多種多様な対処法が開発されるに至っている。特に最近では、エッジ要素と呼ばれるベクトル型の要素が各種考案され[7]-[10]、これがスプリアス解の除去に極めて有効であることが広く認識されるようになってきた。また、エッジ要素はスプリアス解の除去に威力を発揮するばかりでなく、導体ストリップのエッジにおける電磁界の特異性をも正しくモデル化できるため、光・電磁波問題の有限要素法解析には必須の要素になりつつある。
そこでここでは、有限要素法の利用実績が豊富な導波路問題を例に取り上げ、これまでに開発されてきた各種のベクトル有限要素法の特徴や問題点を様々な観点から整理し、特に導体エジジを含む、例えばMMIC用伝送線路の解析、特性評価には、導波路断面内の電磁界に対してエッジ要素、伝搬方向の電磁界に対して通常のノーダル要素を用いた、いわゆるエッジ/ノーダルハイプリッド要素が有効であることを示す。
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