さらなる高効率・高出力のモータ開発が求められる中、モータの磁気設計者からの熱設計への要求が高まっています。
- 巻線温度が絶縁階級ごとに決まっている温度上限に収まるように、磁気回路設計、熱設計が行えること
- 磁石温度が要求される出力が得られる温度上限に収まるように、磁気設計、熱設計が行えること
- 温度上限を満足するように、磁気設計と熱設計が同時に行えること
- これらが定性的な評価であっても、手元で高速に行えること
磁気設計段階において精度と使いやすさのバランスが取れた熱設計手法が求められています。
磁気設計・熱設計の同時評価
JMAGは磁界解析と熱解析のモデルで設計変数を共有化することで磁気特性・熱特性の評価を同時に行います。
寸法や極スロット数などの設計変数を磁界と熱のモデルに同時に反映し設計検討が行えます。
モータトポロジー:極スロット数、形状
材料:磁石タイプ、コアグレード、巻線
電源:巻線設定、駆動方法、電流ベクトル、制御方法
冷却:部品間の熱抵抗、冷却タイプ、冷媒物性、冷媒流速 など
得られた磁気特性や熱特性は1つの画面で確認できます。
トルク(駆動力)特性、効率、電磁力分布、損失、定格運転時の温度など多面的な評価ができます。
設計変数一覧も同時に確認でき、効率マップを確認しながら最大出力時の温度を確認する、部品温度が高すぎる場合には設計変数の値を変更して再度効率マップと温度を確認する、といった繰り返し評価を簡単に行えます。
要求トルクを満たしながらも銅損を低減し、コイルの温度上昇を低減
サポートする熱抵抗・冷却方法
ウォータジャケット
スプレー
ATF
強制対流
接触抵抗
これらの冷却方法は熱等価回路でモデル化されます。
冷媒の流速や形状寸法、接触状態など設計パラメータを入力するだけでCFD, 実測値のデータベースに基づいて等価回路の熱抵抗を自動で算出します。これらの熱抵抗素子を含むモータの熱回路、境界条件も自動生成されます。
モータの放熱経路と実際の熱等価回路の例(冷却方法:ウォータジャケット+スプレー冷却)
ギャップ部分の対流伝熱、ハウジングとコアの接触抵抗を考慮した放熱、ウォータジャケットによるコアからの放熱、ハウジングからの放熱、ロータコアからシャフトを介した放熱、コアの表面からの自然対流による放熱、コイルエンド部へのスプレーによるコイルからの放熱を考慮します。
各冷却タイプによる冷却効果は熱抵抗として考慮されます。
ワークフロー
1.モデルタイプ/シナリオの選択
- モデルタイプ/シナリオ選択よりモータタイプと評価項目を選択します
- モータタイプには代表的な磁石配置のブラシレスモータ(インナーロータ/アウターロータ)や誘導機が含まれます
- 特性評価は磁気特性および熱特性から選択できます
2.設計変数の設定
- モータの極スロット数や形状、駆動条件、冷却タイプなどはリスト化されています
- 必要に応じて設計変数を変更し初期のモータ設計案を決めます
3.解析の実行
- 磁気特性、熱特性共にFEA解析が行われます
- FEA解析に必要な条件の設定やメッシュの作成は必要ありません
4.特性の確認
- トルク、効率マップなどの磁気特性、温度変化などの熱特性をグラフやコンタで確認することができます
5.パラメトリック評価
- 要求を満たさない時や特性を追い込みたい時には設計変数を変えて感度や特性を見ながら設計を進めていきます
- 複数の設計案の解析を同時に実行できますので、短時間で様々な設計案を評価できます
6.概念設計の完了
- 概念設計における要求を満たした設計案をベースに、詳細設計に進みます
- ここまでの条件設定や形状など全てのモデルはJMAG-Designerに登録されていますので、これを起点にコイルエンドを含めたAC損の解析、制御を考慮した効率マップの作成など詳細な設計を進めることができます