第3回 JMAGのメッシュ生成エンジンの存在価値とは?

強力なシミュレーションエンジン

このテクニカルレポートでは、JMAGの技術開発内容をご紹介します。
第3号である今回は、シミュレーションエンジンの二本柱の1つであるメッシュ生成エンジンについて、その価値と私たちの取り組み内容をご紹介します。

電気機器の解析に特化

JMAGのメッシュ生成エンジンの存在価値は、電気機器の解析に特化していることです。なぜ特化する必要があったのか。それはお客様のニーズによるものです。磁気飽和や表皮効果、電磁誘導、機器の運動など、電気機器では様々な現象が起きています。それぞれの現象では見るべきポイントが異なり、解析をする上で必要なメッシュも変わってきます。つまり、多様なメッシュ生成が求められるのです。
世の中に存在する汎用的なメッシュ生成エンジンでも、解析ノウハウや時間があれば多様なメッシュを生成することができるでしょう。ただし、より簡単に高い品質のメッシュを生成したい、というニーズはとても高いです。それはCAEがものづくりを“支える”ものであって、開発や設計で使えなければ意味がないものだからです。
JMAGのメッシュ生成エンジンは、電気機器の解析に特化しています。解析ノウハウや時間は必要ありません。様々な電磁気現象を正確に表現できるメッシュを簡単に生成できます。図1にメッシュ解像度の違いによる渦電流損失の比較を示します。メッシュの解像度が解に影響していることが確認できます。

図1 メッシュの解像度の違いによる渦電流損失の比較図1 メッシュの解像度の違いによる渦電流損失の比較[1]

重要なのは精度と簡便性

電気機器の解析に特化したJMAGのメッシュ生成エンジン。重要視したのは、高精度かつ簡単であることです。具体的にどのように精度向上と簡便性を実現しているのか。取り組み内容を2つご紹介します

(1) メッシュノイズの低減により精度向上

モータのコギングトルクは出力トルクに対して0.1%程度しかない上に、振動や騒音低減の流れを受けさらに低コギング化が進んでいるため、高い精度の解析が求められることがあります。このような場合は、メッシュノイズが解に与える影響は大きく、正しい解を得られないという問題が起こります。JMAGのメッシュ生成エンジンは、ノイズキャンセリング技術によってメッシュノイズの低減を実現しています。これにより、解析ノウハウがなくてもコギングトルクを高精度に解析することが可能です。図2にノイズキャンセリング技術の有無によるコギングトルクの違いを示します。メッシュノイズを低減していない場合はコギングトルク波形の周期性や上下対称性が崩れ正しい解が得られていないのに対し、メッシュノイズを低減した場合は正しい解が得られていることがわかります。

(2) 高品質メッシュを効率よく自動生成

解析においてメッシュ生成はモデル作成作業の一部に過ぎません。一方で、解の精度を向上させるためには必要な箇所に適切なメッシュを生成する必要があり、機器内部の電磁気現象の把握や解析ノウハウが必要になります。簡単に精度のよい解を得るにはどうしたらいいか。高品質メッシュを自動的に効率よく生成できなければいけません。
JMAGのメッシュ生成エンジンは、アダプティブメッシング法により高品質メッシュの自動生成を実現しています。この手法では、プログラム内部でJMAGソルバーと連携しながら、電磁気現象を高精度に解くための最適メッシュを生成します。これにより、作業者に依存することなく精度のよいメッシュを効率的に自動生成することが可能です。JMAG Users Conference 2005では、株 式会社ケーヒン様にアクチュエータ開発における自動メッシュ生成機能の使用例をご講演いただきました。

図2 ノイズキャンセリング技術の有無によるコギングトルクの違い図2 ノイズキャンセリング技術の有無によるコギングトルクの違い[2]

自動生成することが可能です。JMAG Users Conference 2005では、株 式会社ケーヒン様にアクチュエータ開発における自動メッシュ生成機能の使用例をご講演いただきました。

ロバスト性やスピードも重要

もちろん、電気機器の解析に特化することだけが大事なわけではありません。データに対しても形状に対してもロバスト性であることやメッシュ生成スピードも重要だと考えています。なぜなら、メッシュが生成できなければ本末転倒ですし、いくら精度のよい解が得られたとしてもメッシュ生成に膨大な時間がかかっては意味がないからです。
JMAGのメッシュ生成エンジンはスピード向上を実現しました。図3にメッシュ生成エンジンの違いによるメッシュ生成時間の変化を示します。解析対象や要素数によって違いはありますが、従来のメッシュ生成エンジンに比べ、新しいメッシュ生成エンジンでは生成時間が9分の1に短縮されています。

メッシュ専任チームの存在

お客様のニーズに応えられるようにJMAGはメッシュ生成エンジンの改良をし続けています。様々な研究開発に取り組んでいますが、それらを実施しているのがJMAGのメッシュチームです。

図3 メッシュ生成エンジンの違いによるメッシュ生成時間の変化図3 メッシュ生成エンジンの違いによるメッシュ生成時間の変化[1]

JMAGのメッシュチームは、長年培ってきた解析ノウ ハウをもとに電気機器の解析に適したメッシュ生成を 行う技術を有しています。開発のための実装はもちろん、研究成果の論文発表[2]-[5]やお客様のニーズを直接ヒアリングするためのコミュニケーションも積極的に行っています。

電磁界解析で最先端をいくJMAGのメッシュ生成エンジン

JMAGのメッシュ生成エンジンはこれからも進化します。さらなる精度向上や高速化や大規模モデル対応など。お客様に、より簡単に精度のよいメッシュを生成していただくためにやるべきことがまだまだあります。
モデル作成作業の一部であるからこそ「簡単」で、解析精度を左右する重要な基盤であるからこそ「高品質」なメッシュを生成を目指し、JMAGは電磁界解析の最先端を進み続けます。

次号は材料モデリングについてご紹介します。


[1] : JMAG Users Conference 2008 ポスターセッションより
[2] : 三輪、たに、橋本、山田:「アダプティブ・メッシング法による回転機の高 精度トルク計算手法」、電気学会論文誌D、Vol.123、No.7、pp.790-797、2003
[3] : たに、山田、河瀬:「三次元有限要素法による渦電流および相対運動 を伴う過渡応答解析法の開発」、電機学会静止器・回転機合同研究会 資料、SA-98-10、RM-98-74、1998
[4] : たに、山田、河瀬:「有限要素法による磁気ヘッドの磁界解析のため の最適メッシュの作成」、信学技法、MR98-52、pp.29-35、1999
[5] : たに、山田、河瀬:「三次元有限要素法およびメッシュ結合法を用い たリニアソレノイドの動作特性解析」、電機学会静止器・回転機合同研究会 資料、SA-99-16、RM-99-70、1999

[JMAG Newsletter 2009年11月号より]

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