三菱電機株式会社 米谷 晴之
概要
近年、モータの小型化、高出力密度化の需要に伴い、従来のフェライト磁石と比較してエネルギー積が大きいネオジ磁石を用いたDCBLMが急増している。モータによっては定格の1%以下のコギングトルクが要求される製品があり、筆者はこれまでにコギングトルクの低減法について検討を行ってきた。しかし、ある程度コギングトルクが小さくなれば電磁界解析と実測でコギングトルクが異なるケースが多くなった。この原因のーつとして、実際にはネオジ磁石の着磁状態が解析で用いられたような完全着磁でないことが考えられる。
ネオジ磁石は着磁電圧が高く、磁石の全体に渡って完全着磁することが難しいと考えられ、特に、コギングトルクに多大な影響を及ぼす磁石の端の部分では着磁ヨークからの漏れ磁束の影響で完全着磁が難しく、外部磁場の向きが周方向に向くため図難軸方向への着磁が考えられる。このことは、着磁ヨークによってコギングトルクが変化することからも想定される。さらに、ネオジ磁石は若干の導電性を持つため、着磁時に渦電流が発生する。このことも磁化困難軸方向への着磁や不完全着磁に影響を及ぼすことが考えられる。
ネオジ磁石の磁化特性はフェライトのそれとは異なり、少ない外部磁場で急激に着磁される。ただし、これが不完全着磁であれば残留磁束密度は比較的大きいものの保持力が小さくなり熱的にも不安定な特性となる。
これらのことから、ネオジ磁石を用いたモータでは、磁石の着磁状態に関して十分な検討を行う必要があることがわかるが、これまでに解析などにより磁石の着磁状態を検討した例がなかった。そこで、本報告では疑似的にネオジ磁石の磁化過程を考慮した有限要素法による電磁界解析コードをJMAG-WORKS上で開発し、不完全着磁や磁化困難軸方向の磁化がコギングトルクに与える影響について検討した。
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