高性能アキシャルギャップモータ向け新グレードSomaloy® 700 7P 調査結果

Taha El Hajji, Lars Sjöberg
Alvier Mechatronics AB
Helsingborg, Sweden

Contents
Abstract
Index Terms
Ⅰ. 緒言
Ⅱ. SMC材料について
 A. 各材料グレードの特徴
 B. 材料グレード 特性比較
Ⅲ. モータ設計およびモデリング
 A. モータトポロジー
 B. 電磁界解析手法
Ⅳ. モータ特性比較
 A. 無負荷誘起電圧
 B. 効率マップ
 C. Summary
Ⅴ. 結言
REFERENCES

Abstract

電気自動車(EV)の駆動用途において、ますます高出力密度化および高効率化への要求が高まる中、アキシャルギャップ型永久磁石モータの採用が急速に進展している。Soft Magnetic Composite(SMC)材料は、等方的な磁気特性を有し、複雑な三次元磁路を実現可能であることから、アキシャルギャップ型モータ構造に特に適している。本稿では、新世代のモータ用SMC材料である Somaloy® 700 7P に関し、既存グレードとの比較結果を報告している。具体的には、150 kW級のダブルロータシングルステータ型アキシャルギャップモータを対象として有限要素解析(FEA)を実施し、Somaloy® 700 7Pと、既存グレードの Somaloy® 700HR 3P および Somaloy® 700HR 5P との比較評価を行った。比較評価の結果、低速領域におけるトルク特性は、各材料の飽和磁束密度が同等であることから同等レベルであった。一方で、7P材は新たな絶縁被覆技術および新グレードに適した熱処理プロセスの採用により、高周波帯域における渦電流損失を大幅に低減できることが確認された。このように7P材を適用したモータは、既存グレード同様の出力密度を得つつ、高速運転時の鉄損低減により効率を高められることが示された。これより、Somaloy® 700 7Pは次世代の高性能電動モビリティ用途において重要な材料技術であることが明らかとなった。

Index Terms

SMC, Somaloy® 700 7P, アキシャルギャップモータ, 効率マップ, 出力密度

Ⅰ. 緒言

脱炭素化に向けた世界的な潮流を背景として輸送機器の電動化が急速に進展しており、電動機技術にはこれまでにない高い性能要求が課されている。現代の電気自動車(EV)や電動航空機において、効率、出力密度、およびコスト競争力に対する厳しい要求を満たすため、設計者は先進材料の活用や磁性コアを用いる新たなトポロジーの検討を積極的に進めている。その中でも、アキシャルギャップ型永久磁石(AFPM)モータは、従来のラジアルギャップ型モータと比較して、優れたトルク密度を実現できるとともによりコンパクトな実装が可能であることから、有望な候補として期待されている。AFPMモータのステータコア材料として、Soft Magnetic Composite(SMC)材料は極めて大きな利点を有することが知られている。SMCは粉末冶金材料からの派生であり、高純度鉄粉の各粒子表面に絶縁被覆が施されており、粉末を圧縮成形および熱処理することで所望のコア形状へ加工し使用される。SMCにより製作されたコアは優れた等方的磁気特性を有し、従来材料では実現が困難な複雑な三次元磁路が可能となる。さらに、粒子ごとに施された絶縁被覆によって渦電流の発生が抑制されるため、高速駆動モータで求められる高周波数帯域での作動においても優れたコアロス特性が期待される。SMCが車載駆動用アキシャルギャップモータへ適用され始めて以来、過去10年以上にわたり、SMCモータの性能限界、材料組成、および製造プロセスの継続的な改良が進められてきた。本調査では、新たに開発された Somaloy® 700 7Pの電磁気特性について、既存材料である Somaloy® 700HR 3Pおよび Somaloy® 700HR 5Pとの比較評価を行う。なお、Somaloy® 700 7Pの材料データは、電磁界シミュレーションソフトウェアであるJMAGのバージョン26.0において、材料データベースへ追加される予定である。評価は、車載駆動用モータを対象として、材料レベルおよびモータレベルの観点から解析評価を実施し、Somaloy® 700 7Pの性能ポテンシャルを明らかにする。

Ⅱ. SMC材料について

進化を続けるSMC材料の各グレードは、透磁率、高周波数帯域における鉄損、および機械的強度、これら互いに相反する主要特性によって特徴づけられる。

A. 各材料グレードの特徴

Somaloy® 700HR 3P: 当グレードでは、水蒸気雰囲気中での熱処理によって粒子間に磁性酸化物のネットワークが形成される。この構造により、3点曲げ強度(TRS)が120 MPaに達する優れた機械的強度と、最大比透磁率770という高い磁気特性を両立している。一方、粒子間の酸化物を介した圧粉コアでは渦電流が大きくなり、特に電気周波数の高い帯域で鉄損が増加する傾向を示す。例えば400 Hz-1 T の条件下では、コアロスは 45 W/kg に達する。
Somaloy® 700HR 5P: EV駆動用途における高周波数作動要求に対応するため、Somaloy® 700HR 5Pが開発された。当グレードでは、Somaloy® 700HR 3Pで採用している3P絶縁被覆とは異なる5P絶縁被覆を取り入れており、従来よりも高温での熱処理(窒素雰囲気)を可能としている。この5P絶縁被覆により鉄粉粒子間の電気的絶縁性が高められ、渦電流損失成分を大幅に低減することが可能となった。また高温での熱処理により圧粉コアの残留応力をさらに緩和できることもコアロス低減に貢献している。こうした結果、400 Hz-1 T の条件下におけるコアロスは 30 W/kg まで低減される。一方その代償として、3Pグレードと比較し磁気特性および機械的強度の低下がみられる。具体的には最大比透磁率が770から600へ低下し、TRSも120 MPaから60 MPaへ低下する。
Somaloy® 700 7P: 最新世代のSomaloy® 700 7Pでは、新たな7P絶縁被覆に加え、圧縮成形および熱処理も最適化されたプロセスが採用されている。これにより、400 Hz-1 T の条件下で 29 W/kg という低いコアロスを実現するとともに、最大120 MPaの機械強度(TRS)が得られる。最大比透磁率は500と低めとなるが、5P絶縁被覆と比較しても高い機械的強度を維持しながら低鉄損化を達成している点が特徴である。このようにSomaloy® 700 7Pは、従来グレードにおいて課題であった高周波数帯域におけるコアロスと機械的強度のトレードオフを改善した材料と位置付けられる。なお、本研究で参照したSomaloy® 700 7Pの材料モデルに用いた諸特性値およびB-H特性については、JMAG26.0において実装される予定であり、実装後は材料ライブラリから選択して利用することが可能である。

B. 材料グレード 特性比較

3P材、5P材、7P材の3種類のグレードを公平に比較するため、本研究ではすべての材料について密度を7.5 g/cm³に統一して評価を行った。飽和磁束密度は圧粉成形後の密度に依存するため、各材料間における性能比較は、主として透磁率およびコアロスに着目して実施した。
Fig. 1 に、3種類の材料グレードについて、最大比透磁率(Max Permeability)、コアロス(Loss Score)、および3点曲げ強度(TRS)の3つの観点から比較した結果を示す。7P材は、従来の3P材および5P材の優れた特性を兼ね備えていることがわかる。また、3グレードのB-H特性、比透磁率特性、コアロス特性、およびTRSを、それぞれFig.2a、Fig.2b、Fig.2c、およびFig.2dに示す。

Fig. 1: Somaloy® 700HR 3P, 700HR 5P, および700 7P の特性比較( 7.5 g/cm3 )Fig. 1: Somaloy® 700HR 3P, 700HR 5P, および 700 7Pの特性比較( 7.5 g/cm3 )

(a) BH カーブ(a) BH カーブ
(b) 比透磁率(b) 比透磁率
(c) コアロス(c) コアロス
(d) TRS(d) TRS

Fig. 2: Somaloy® 700HR 3P, Somaloy® 700HR 5P, Somaloy® 700 7Pの磁気的および機械的特性

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