新しい技術に挑戦することを大切にし、モータ構造の改革に取り組む
2021年に新しく設立された長岡技術科学大学の日高研究室。
先生の企業経験を学生に継承しながらも、新しい技術に挑戦することを大切にし、日々モータ構造の改革に取り組まれています。
今回は、研究内容から学生さん達との関わり方までを日高先生に伺いました。
2012年4月 – 2014年3月北海道大学 大学院情報科学研究科 システム情報科学専攻
2014年4月 – 2021年3月三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 研究開発員
2021年4月 – 現在長岡技術科学大学 工学部 電気電子情報工学専攻 准教授
私は、2021年3月までメーカに勤めており、製品開発に携わっていました。そこで得た企業ならではの経験を学生に伝えていくことが、人材育成に繋がると考えています。
研究室名は先進モータシステム研究室です。シミュレーション技術ではAIや最適化、駆動システムでは多相化など、モータ研究は日々新しいキーワードが出てきています。これらキーワードに敏感になり、新しいものに失敗を恐れずチャレンジするという思いを込めて、この研究室名を考えました。私の研究室では、海の物とも山の物ともつかぬ未知の技術への挑戦を、研究テーマ選定の軸においています。
私の研究室は、2021年度に新設した研究室です。そのため、シミュレーション環境や実験環境は、まだまだ立上げ中です。学生は、新設ならではの大変さを感じる一方で、徐々に環境が整備される楽しさも感じているようです。また、私の研究室では、研究も大切ですが、プライベートも大切だと学生に教えています。大学/大学院生の期間は、働く前の最後の自由な時間です。アルバイトやサークルなど、自分の価値観を広げるプライベートな時間と、研究を進める研究室での活動時間を、しっかり分けて考えるのが日高研の基本方針です。
図 研究室での活動風景(左:シミュレーション、右:実験装置)
JMAGのトポロジー最適化機能を活用した事例を紹介します。同期リラクタンスモータと呼ばれるモータ方式では、下左図のようなフラックスバリア形状が肝となります。そこで、JMAGのトポロジー最適化機能を用いて、フラックスバリア形状を最適化しました。また、従来モータと磁束密度等を比較し、トルク特性の改善をシミュレーション上で実現しました。設計したモータは、強度設計を行い試作機を製作し実機検証までを行いました。このように、JMAGは最適化機能が充実しており、JMAGを用いることで、設計者の知見に依らない特徴的な構造を見出すことができます。本機能を活用し、日々新たなモータ構造の創出に取組んでいます。
図 トポロジー最適化機能で獲得した同期リラクタンスモータの新構造
(左:従来モータとの磁束密度の比較、右:強度設計行い試作モータを作製)
モータ設計で今着目されているのは、数値最適化やAIだと思います。学会でもこれらワードを目にする機会が多くなりました。これら研究はもちろん、さらに先の技術として量子計算機の研究を立上げています。量子計算機は、古典計算機とは計算原理が異なり、使い方次第で大化けする可能性があります。一方、クセが強く、モータ設計に適用するには、基礎的な検証がまだまだ不足しており、日々シミュレーションでの基礎検証を進めています。
大学教員の多くは学生の居室と教員室を別々に設け、週に一回のゼミを通して研究の進捗を確認していると思います。一方で、私は研究だけでなく日常的な会話も、学生との距離を縮める上で重要と考えています。そこで、会議や講義の時間を除き、私も学生居室で一緒に過ごすようにしています。学生との日々のコミュニケーションを通じて、相談しやすい環境づくりに力を入れています。
モータに限らず電気工学の研究は、今後も益々の発展が期待される、非常に面白い分野だと思います。一方で、基礎/応用的な知識が必要になる、難しい分野でもあると思います。日々の学習/研究活動で挫けることもあると思いますが、大切なのは完璧さよりも着実な進歩です。わからないことがあるのは当然で、全く落ち込む必要はありません。めげずに日々努力すれば、今抱えている課題も必ず解決する時が来ると思います。
お話を伺った方
日高 勇気氏
日高研究室Webページ:
https://whs.nagaokaut.ac.jp/ams-lab/