巻線界磁モータ(WFSM/EESM)は広い駆動範囲で高効率が要求される駆動用モータとして着目されています。永久磁石モータ(PMSM)と比較して低トルク域で高効率が期待できますが、損失増による冷却対策、界磁側も含めた制御など特有の設計課題があります。JMAGはこれらの課題も含め巻線界磁モータの設計検討が行えます。
巻線界磁モータの特徴
Ld, Lq
- 順突極(Ld>Lq)モータのため、遅れ位相(<0)でリラクタンストルクが生じます
- 界磁電流による飽和で特性が大きく変わるため、電磁界解析が有効です
界磁電流によるLdLq特性
効率マップ
- 同体格の永久磁石モータと比較して低トルクの範囲において永久磁石モータの効率を上回る可能性が確認できます
巻線界磁モータ(左)と永久磁石モータ(右)の効率マップ
赤破線より低負荷の範囲で巻線界磁モータの効率が上回る可能性を確認
効率と損失内訳
- 制御回路と組み合わせ、インバータ駆動時の損失を含めて巻線界磁モータと永久磁石モータの効率の差および損失の内訳を確認します
- 界磁側の銅損を考慮したとしても、低負荷、高回転では効率が高い特徴が表れています
巻線界磁モータと永久磁石モータの効率(%)の差
効率マップの全領域について両者の差分を取って効率を比較している
右軸で効率 > 0 は巻線界磁モータの方が高効率であることを示す
(a)
(b)
(c)
(d)
動作点(a)~(d)の各損失内訳と効率
高回転や低負荷で鉄損が低減され巻線界磁モータの効率が高い特徴が表れている
On-demand Webinar
※機械翻訳による日本語や各国の字幕付きでご確認いただけます。
JMAGのソリューション
特性評価、効率マップ
- 効率マップ(速度優先モード)は、界磁電流毎の効率マップから各動作点の最高効率を抽出し効率マップを作成しますV22.1新機能
- Ld, Lqなどの特性も得られ、制御回路のパラメータに使用できます
動画による機能紹介
アプリケーションカタログ
制御による損失の高精度化
- 効率マップ(精度優先モード)は制御回路と組み合わせ、インバータ駆動時の損失を考慮した効率マップを作成します
- 電流ベクトル、制御パラメータは速度優先モードで得られた効率マップ、特性の値を使用します
制御回路
電機子側の回路にプリインストール素子を用い、制御シミュレーションを実施
リーフレット
熱設計
- JMAGの熱等価回路では代表的な冷却タイプについてプリインストール素子が使用できます
- 電磁気の設計者においても冷却方式に関するパラメータを指定するだけで簡単に温度評価が始められます
例:スプレー冷却とクーリングジャケットによる界磁巻線の冷却効果の検討
冷却方式とモデリング
冷媒流速を変えた時の界磁巻線温度
この例では120℃以下にするにはスプレーの流速が4m/s程度必要なことが分かります。クーリングジャケット(CJ)の流速を倍にしても界磁巻線の温度への影響が小さく、スプレーで直接冷却する必要性があることが分かります。
アプリケーション / ソリューション
MIL/HIL連携
- 試作機/実機と等価なFEAをベースとした高精度なプラントモデルJMAG-RTモデルに対応
- JMAG-RTモデルを用いて、信頼性の高い制御シミュレーションを可能にします
例:JMAG-RTモデルと古典的プラントモデルdqモデルを用いた特性評価の比較
巻線界磁モータ(左)とMATLAB/Simulinkの制御回路図(上:メイン回路、下:サブ回路)
界磁電流および相電流の時刻歴
トルクの時刻歴
電機子電流20A・界磁電流10Aと、それぞれに指令電流値を与えた際の電流・トルク特性についてFEAとJMAG-RTモデル、dqモデルとで解析した結果を比較します。界磁電流および相電流の時刻歴を確認すると最終的には指令値通りに制御されますが、dqモデルでは立ち上がりにずれが生じています。また、トルク特性はdqモデルではFEAとの乖離が大きく、JMAG-RTモデルを用いることで十分なプラントモデルの精度が期待できます。巻線界磁モータは界磁電流の大きさによる磁気飽和の違いがその特性に大きく影響するため、FEAをベースとした高精度のプラントモデルが有用です。
正常系の電流制御においてFEAとRTで精度が一致することを踏まえれば、「異常系の機能検証」や「性能検証」でも巻線界磁モータのRTモデルを活用することが可能です。