株式会社富士電機総合研究所 真下 明秀
概要
モータの小型化を行う上で、巻線を電機子スロット内にいかに充填させるかは重要である。
近年のモー夕、特に永久磁石同期電動機においては、希土類磁石の利用と巻線高充填化技術の進展で小型化が著しい。今回は、巻線高充填型・永久磁石同期電動機のコギングトノレクの発生要因を解析、及び試作にて検証した。
巻線を高充填化する方法のーっとして、電機子鉄心をヨークと、内径をブリッジ状に連結したティースに2分割する方式が用いられている。この方式では、分割した連環ティースコアの外周側より直巻方式で巻線を挿入するため、巻線の挿入が容易になり、充填率も向上する。今回の検討には、このコア分割方式を用い、極数・スロット数はコギングトルクの出難い8極、9スロットとした。
コギング、トルクは極数とスロット数の最小公倍数の成分となり、その次数が高くなるほど、コギングトルクの波高値は小さくなる。8極・9スロットの組合せとした場合、コギングトルク波形は1回転あたり72山の波形となり、波高値も小さくなる。
しかし、実際に試作機で検証すると、8山や9山が支配的であり、解析結果と大きな違いが現れた。原因として考えられたのは、製作時に生じたさまざまな寸法バラツキの影響である。特に、電機子ティースコアとヨークコアの俵合部に存在する微少スキマ各歯でばらついた場合、また、歯先ブリッジ厚みが各歯で、ぱらついた場合の影響が大きいと考え、解析により確認した。その結果、両者とも8山成分の要因となり、微少のバラツキでも比較的大きなコギングトルクとなり得ることが分かった。また、回転子側の要因として、磁石着磁量および極ピッチのバラツキの影響を調べたところ、9山成分の要因となることが確認できた。
今回の調査で、2分割コア方式は原理的に現れる72山のコギングトルクより、製作時の各バラツキによって発生する、電機子鉄心磁気抵抗及び回転子起磁力のアンバランスによるコギングPトルクが、支配的になる事がわかった。製作のバラツキを予測するのは困難であり、本方式のモータは解析者泣かせのモータであると言える。
PDFダウンロードサービスはご利用いただけません