JMAGユーザー会2015 開催レポート

JMAGユーザー会は日本だけでなく、韓国・インド・欧州・台湾・北米・中国でも開催しております。
各地で、日本のユーザー会でも紹介した開発計画ボードやJMAGメンバーとユーザーまたはユーザー同志のディスカッションを通じて得られた要求、フィードバックを一つ一つ蓄積していき、機能として反映する活動を年間通じて行ってまいりました。ここでは、日本・台湾・北米・中国で開催したユーザー会についてそれぞれ振り返ります。

開催概要

主催 : 株式会社JSOL
日時 : 2015年12月8日(火)~12月9日(水)
場所 : 東京コンファレンスセンター品川(日本:東京)
URL : http://www.jmag-international.com/jp/conference2015/

JMAGユーザー会は、魅力的なユーザー事例やパートナー展示とともに、JMAGの開発方針をユーザー様に評価いただく場でもあります。現在の機能について、サポートについて、そしてこれからの開発方針に対して多くの皆様から忌憚のない御意見を賜りました。この貴重な情報をもとにJMAGは開発を推し進めております。
今年参加いただけなかった方も、ぜひ来年はJMAGユーザー会に参加いただき、御自身にとって使えるJMAGにしてください。それでは、日本で開催したJMAGユーザー会を紹介します。

講演

基調講演に、北海道大学 教授 五十嵐 一様、University of Glasgow Emeritus Professor T.J.E. Miller氏をお招きし、JMAGユーザー様による13セッション、全33の講演を行っていただきました。最新のトピックスやJMAGを使用した事例の発表、開発の成果や業務で苦労したことなどを講演いただき、参加者の皆様から「最新の業界事情がわかってよかった」「同じところで苦労していることがわかった」などの声をいただいております。

開発計画(12月8日 10:10~11:10)

JMAG開発計画
株式会社JSOL
山田 隆

計算高速化のための並列ソルバーから解析業務効率化のためのGUIの改良まで、この1年間の成果と、私達が現在考えている開発計画を共有させていただきました。
今年は特に設計空間探索を重要トピックの1つに加え取り組みを紹介しました。

基調講演1(12月8日 11:10~12:10)

電磁界解析を用いた最適設計
北海道大学 大学院 情報科学研究科 教授
五十嵐 一氏

遺伝的アルゴリズムを始めとした最適化手法の解説から、それらを電磁界解析の最適化問題に適用した事例紹介まで行っていただきました。
特に電磁界解析を利用したモータ設計の領域におきましてもトポロジー最適化の取り組みが始まったことを具体的に示していただきました。

最適化セッション(12月8日 13:10~14:40)

Optimization of Traction Motors for Automotive Applications using High-Performance Computing
IAV GmbH Chemnitz Advanced Powertrain Electrificatio
Bernd Cebulski氏

Electromagnetic-thermal coupled multi-objective optimization on HPC systems for rotating electrical machines used in phev applications
Robert Bosch GmbH GS-EH/EDM1
David Philipp Morisco氏

Multi-Physics Machine Design Optimization Based on Finite Element Analysis Using High-Throughput Computing
Nanjing University of Aeronautics Department of Electrical Engineering
Wenying Jiang氏

3件の発表はどれもマルチフィジックス(磁界-熱、磁界-構造)を考慮した多目的最適化を大規模なクラスタを用いて短時間に解析するという点が共通していました。従来は時間がかかっていた最適化計算が、実用的に使われている雰囲気が感じられるセッションでした。

電力セッション(12月8日 13:10~14:40)

クローポール回転機の発電解析
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 電機システム技術
小松 大河氏

負荷電流により発生する油入変圧器の騒音と振動
株式会社明電舎 変電事業部 事業統括部 変電配電開発室 変圧器チーム
脇本 聖氏

有限要素法による塊状磁極形同期電動機の始動特性解析
東芝三菱電機産業システム株式会社 回転機システム事業部 大形回転機第一部 設計課
丹 涼輔氏

変圧器1件、発電機2件の発表をいただきました。
変圧器は振動/騒音連成解析のテーマとして3年連続の発表であり、変圧器の振動/騒音の課題に対する系統的な取り組みが見えたと思います。
発電機は、いずれも巻線端部の効果に関する発表で、発電機解析のトレンドの一端が見えたのではないかと思います。

モータ1セッション(12月8日 16:10~17:40)

大規模電磁場解析における高速化の取り組み
スズキ株式会社 技術支援部 CAE推進課
安部 寿久氏

JMAGを活用したPMモータの熱・構造・磁界連成解析
JFEテクノリサーチ株式会社 ソリューション本部(川崎) CAEセンター 倉敷グループ
田中 進也氏

モータサイクル用エンジン電装部品の開発におけるJMAG活用事例
ヤマハモーターエレクトロニクス株式会社 開発統括部 第2技術部 技術21課
山白 紘大氏

3件の発表はいずれも、MPPによる大規模計算、熱-構造-磁界連成解析、設計者への展開というモータに関する発表でした。

ワイヤレス給電セッション(12月8日 16:10~17:40)

電磁誘導と磁界共鳴の違いの紹介
東京大学 工学系研究科 電気系工学専攻
居村 岳広氏

ワイヤレス給電技術開発と電磁界解析
株式会社テクノバ 新技術開発部
保田 富夫氏

車両搭載下での非接触充電コイルの電磁気設計手法
トヨタ自動車株式会社 湯浅 浩章氏、木佛寺 宣博氏
/ 日本自動車部品総合研究所 木村 統公氏

産学両面から3件発表いただきました。
「学」の面からはワイヤレス給電の歴史と伝送効率に関する理論、「産」の面からは自動車をターゲットにした利用技術について紹介いただきました。
セッションを通じてJMAGに期待される解析技術が明確になったと思います。

モーニングセッション (12月9日 9:30~10:00)

JMAG-Designerの便利な小技のご紹介
株式会社JSOL
河合 優行

「JMAG-Designerの便利な小技集」を紹介しました。
バージョンアップ資料では紹介しきれない、けれども知っていると便利な機能をデモを交えて紹介いたしました。

基調講演2(12月9日 10:00~11:00)

The Electric Machine Designer in the 21st Century
University of Glasgow Electronics and Electrical Engineering Emeritus Professor
T.J.E. Miller氏

詳細解析が可能であるという点でのJMAG-Designerの価値を紹介されながらも、実務的なモータ設計ツールとなるための指針を示していただきました。
シンプルすぎては精度が足りず、複雑すぎては迷路に迷い込んで使い物にならない、速度が追い付かないなどの問題があるなど説明と共にモータ設計ツールの要件を示していただきました。

モータ2セッション(12月9日 12:00~14:00)

モータ設計におけるJMAG最適化機能の適用の検討
株式会社ピューズ 技術部
坂下 善行氏

磁石間距離のあるIPMSMにおいて省磁石を図ったJMAG設計
株式会社前川製作所 技術研究所
薗部 忠氏

JMAGを活用した重希土類元素拡散磁石の保磁力分布の違いによる熱減磁解析
TDK株式会社 技術本部 材料開発センター
眞保 信之氏

交流回転機における固定子鉄心締付用スタッドボルトの渦電流損評価と温度上昇検証
東芝三菱電機産業システム株式会社 回転機システム事業部 大形回転機第2部 設計第1課
多久 征吾氏

モータをテーマにした4件の発表をいただきました。
1つめはモータ設計をJMAGのGA機能を用いての事例紹介、2つめは磁気回路設計及び遠心力解析を行っての構造設計、3つめは拡散磁石の減磁特性解析、4つめは大型機の支持構造部材に生じる渦電流の評価方法、と多岐にわたる内容で発表いただきました。
多岐にわたる内容からも、JMAGは色々な側面から利用されるようになってきていることがうかがえるのではないでしょうか。

誘導加熱セッション(12月9日 12:00~14:00)

高周波焼入れシミュレーションコードの開発と実験検証
埼玉工業大学 先端科学研究所
巨 東英氏

境界条件をフィードバック制御した誘導加熱解析方法
NTN株式会社 先端技術研究所
結城 敬史氏

JMAGとSTAR-CCM+の双方向連携による金属誘導加熱解析
富士電機株式会社 生産・調達本部 生産技術センター 設備技術部 設備設計課
竹内 正樹氏

高周波焼入れクランクシャフトの残留応力解析
ヤンマー株式会社 中央研究所 研究センター 信頼性グループ
上田 英明氏

JMAGと他社ソフト連携の事例を3件と、カスタマイズ案件を1件発表いただきました。
年々、適用範囲と評価項目が増えており、JMAGの適用範囲が増えていることを知っていただけたのではないでしょうか。

損失セッション(12月9日 16:05~18:05)

加工歪を考慮した損失解析と材料モデリングの検討
株式会社JSOL
佐野 広征

Evaluation of performances of a PMSM taking into account the impact of the lamination cutting
Leroy Somer Technical Direction
Xavier JANNOT氏

Propulsion System Linear Motor: Optimization using HEEDS + JMAG
Hyperloop Technologies Transponics
James R Dorris氏

圧縮応力を考慮した電磁鋼板鉄損の計測と評価
株式会社豊田中央研究所 電気機械研究室
浦田 信也氏

3件の発表はいずれも鋼板の切断や応力による影響の検討事例で、いずれも損失への関心の高さがうかがえました。また、HEEDSとの連成による最適化事例もありました。損失の課題解決の一助となったのではないでしょうか。

JMAG-RT / 計測セッション(12月9日 16:05~18:05)

JMAG-RTをもちいたモータHILSによる制御開発と検証事例
富士重工業株式会社 スバル技術本部 HEV設計部
森田 知洋氏

モータのセンサレス制御開発のHILS適用
株式会社豊田自動織機 技術開発本部 開発一部
井手 徹氏

磁歪センサの磁気回路設計
ヤマハ発動機株式会社 基盤技術研究部 システム研究グループ
松本 弘氏

地球低軌道における超小型衛星の磁気姿勢外乱トルクに関する検討
東京大学 大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻
稲守 孝哉氏

前半2件は制御検討やECU検証でのJMAG-RTの活用事例で、後半2件は新しいJMAGの活用事例の紹介でした。どの講演もJMAGの活用範囲拡大に参考となる講演でした。

パートナーセミナー

12月8日 14:45~15:15

JMAGと設計探査ツールHEEDSを利用した設計最適化の新しい世界
株式会社CD-adapco
松村 泰起氏

12月8日 14:45~15:15

仮想パワートレインシステム統合解析によるモデルベース信頼性検証
メンター・グラフィックス・ジャパン株式会社 テクニカル・セールス本部
Front-endソリューショングループ
上田 雅生氏

12月9日 14:05~14:35

On the modeling, prediction and solutions for acoustic emission of Reluctance Machines (RM)
SIEMENS PLM Software Simulation Division
Koen De Langhe氏

12月9日 14:05~14:35

1Dと3Dを融合したEVシステムの2段階多目的最適化
サイバネットシステム株式会社 FC営業本部
重松 浩一氏

12月9日 15:20~15:50

PCクラスタを使ったJMAG並列実行環境
SCSK株式会社 ITエンジニアリング事業本部 エンタープライズ第一部 技術第三課
中田 温朗氏


12月9日 15:20~15:50

260mm×190mm×84mmボックスで動作するJMAG-RT
ディエスピーテクノロジ株式会社 開発部
尾崎 順彦氏

12月9日 14:05~14:35

最新のリアルタイムテスト用ツールの動向と取り組み
National Instruments Ben Black氏
/ OPAL-RT Technologies Jean Belanger氏

オープンフォーラム(12月9日 18:05~18:25)

JMAGへのユーザー提言とJSOLの回答
株式会社JSOL
山田 隆

開発計画ボードに書き込んでいただいた要求、フィードバックの中から、特に多くの声が寄せられました項目を紹介しました。
2016年のJMAGユーザー会の場で一つでも多くの機能の開発、改善が図れたことを報告するために一年間邁進してまいります。

ポスター展

解析技術の紹介からトラブルシューティングまで、15枚のポスターを常設展示しました。
物理現象を理解いただくための電磁解析の基礎から、JMAGの操作手順を記したものまで展示いたしました。情報発信だけではなくコミュニケーションも重視しました。疑問点や解析のコツなどJMAGの開発者や技術者にすぐ質問できるため、よりポスターの内容を理解いただけたのではないでしょうか。
JMAG-Designer Ver.15.0は最適設計を支援するための機能追加や使い勝手の改善を中心に開発を進めてきました。新機能の紹介だけではなく、今後の開発要望についてもじっくり皆様からお聞きすることができました。結果を多面的に分析するために必要なポスト機能も改善について紹介したところ「ポスト機能についてまとまった資料があるととても参考になる」と好評をいただきました。いつかはやってみたい、難しそうで手を出せないとの意見が多かったマルチフィジックス解析は、様々な事例を紹介しました。「こんな解析ができたのか」という声から、「より詳しく解析手法について知りたくなった」との声をいただきました。
ポスター展に参加された方からは、「常設のためじっくりと細部まで見ることができた」、「これからJMAGを本格的に使うために必要な情報収集ができた」との声をいただきました。これからも皆様にとって有益な情報をお伝えしたいと思います。

セミナー

JMAGテクニカルパートナー様からのご発表並びに、JMAGをよりよく使っていただくための紹介を行いました。開発者自らがプレゼンターとして機能について紹介しましたので、JMAGを深く知っていただく場として活用いただけたのではないでしょうか。
毎年人気が高い鉄損解析、今年は解析初心者にも理解いただけるようにシンプルなモデルを使いながらも、いろいろな解析手法を利用した時の結果の違いについて紹介をしました。特に、直流磁化特性についての紹介が参考になったようです。セミナーに参加することで、現在の業務課題が解決したとのお声もいただきました。
課題解決の一助となるセミナーをこれからも企画してまいります。
みんなで作る開発計画と題し、自由に意見を書き込める開発ボードを展示しました。参加者の皆様から様々な意見を頂戴し、多数の書き込みをいただきました。皆様から頂戴した意見を基に、今後の開発を進めてまいります。

展示、開発ボード

最新バージョンJMAG-Designer Ver.15.0をリリースに先駆けてJMAGブースにて披露しました。新機能や改善された機能をいち早くお試しいただき、より使いやすくなったJMAGを体験いただけたのではないでしょうか。
モニターに協力いただいた方々からのフィードバックを書き込んだモータ設計教科書には、書き込みの多さに驚きの声が上がっていました。教科書は2016年度に販売を開始いたします。後日詳細をお伝えいたしますので、今しばらくお待ちください。

パートナー展示

材料DBにご提供いただいている材料メーカー様をはじめ、多くのテクニカルパートナー企業の方にご出展いただきました。
プレミアムスポンサーのSCSK社がクラスタマシンを持ち込み、多量計算をテーマに実演しました。クラスタ化を検討している方からは「実際のクラスタマシンが見られて感激した」などのお声をいただきました。
JMAGユーザー会では、パートナー企業を通じて電気機器の開発に有用な様々な情報を提供しています。

Premium Sponsor

Exhibitors

セミナー、ポスター資料に関しまして

ユーザー会当日に掲載しましたセミナー資料、ポスター資料は2016年2月初旬より期間限定で公開をいたします。準備ができ次第、詳細をお伝えいたします。

CD-ROM版講演論文集に関しまして

ユーザー会当日にアンケートをご記入いただきました方には、2016年2月中旬にCD-ROM版講演論文集を発送いたします。今しばらくお待ちいただけますようお願い申し上げます。

「JMAGユーザー会2016」開催決定

JMAGユーザー会2016は、2016年12月7日(水)~ 12月8日(木)に、東京コンファレンスセンター品川 (日本:東京)にて開催をいたします。どうぞ皆様の手帳やカレンダーにマーク願います。

アーカイブ

アーカイブ