単なるシミュレーションではなく創造性の喚起へ
−JMAGを導入していただいたのは1990年代の後半ですが、導入に至った経緯はどのようなものでしょうか?
野村氏 CAE(Computer Aided Engineering)導入の一つの進化、また到達点としてJMAGがあります。当社は、80年代半ばに「CAEセンター」を開設し、有限要素法 I を用いた解析ソフトによる設計支援が始まりました。この当時はまだ、電磁界解析は自作のプログラムと汎用ソフトを併用して、試行錯誤の中で行っていました。
私たちの業界では、PM(Permanent Magnet)モータ、つまり回転子(ロータ)に永久磁石を使用したタイプのモータの出現が大きな転換点でした。90年代に入ってPMモータの技術開発が本格化すると、3次元の電磁界解析が必要になってきました。例えばエレベーター用途では、トルクリプル II は乗り心地に直結するので、正確にトルクを算定できるツールが不可欠です。またPMモータは磁石に生じる渦電流の問題がありますので、渦電流の経路を考慮できない2次元解析では限界があり、どうしても3次元形状を考慮した解析が必須でした。
そういった状況の中、種々の電磁界解析ツールを探し、JMAGにめぐり合うことができました。JMAGは抜群の使いやすさがあり、何よりもモータの回転を模擬した過渡現象の解析と、磁石渦電流の発生を3次元でシミュレーションできることが、まさしく期待に応えるものでした。個人的には、PMモータの永久磁石に生じる渦電流の解析には本当に驚かされ、それにより設計段階での新たな冷却方式の検討など、いわゆる前工程と後工程の擦り合わせ作業を充実させられるようになりました。
松橋氏 導入当初のJMAGは、ワークステーション上で動作するため解析専任者が必要でしたが、現在は、PC上で動作するようになって操作性が格段に向上し、いろいろな部署で活用されるようになりました。そして、設計・開発者がJMAGを使えるようになった事で、試作のレベルアップと試作回数の削減を同時に実現できるようになりました。
PMモータをはじめとした全ての製品開発では、さまざまなステージ毎に試作を繰り返し、技術と品質の検証を行っています。わたしたちは、ステージ毎の試作を確実に1回で完了するため、解析技術を用いたフロントローディングに取り組んでいます。もちろん究極の目標には、全てをシミュレーションに置き換えた試作レスがありますが、その理想を実現するにはもう少し時間が掛かりそうです。しかし、試作回数削減へのJMAGの貢献度は高く、JMAG導入後は、大幅な作り直しや開発を一からやり直すといったことはほとんど無くなっています。

SPMモータの磁束密度分布
|

IPMモータモデル
|

永久磁石の渦電流損失分布
|
I 有限要素法=物体を、仮想的に有限の大きさの要素に分割して物体を要素の集合体として解析する手法。
II トルクリプル=モータが回転する際に生じるトルク(力)脈動のこと。トルク脈動の発生は騒音や振動の原因となり、制御性を悪くする場合もある。
|