「モータで困っている人や会社の力になりたい」という思いから、長岡技術科学大学発のベンチャー企業として設立。
長岡モーターディベロップメント株式会社は、「モータで困っている人や会社の力になりたい」をモットーに大学発のベンチャー企業として設立されました。モータやドライバの試作、解析受託を通して、新たに「モータ」を使った製品を開発したい方や「モータ」をより省エネルギーかつ高性能に動かしたいお客様の依頼内容に、高い技術力をもって対応されています。
モータでお困りのお客様の”求める技術”にあわせて技術力を提供したい。
佐藤氏:
弊社では主にモータに関する受託開発を行っています。具体的には、モータを動かすドライバ(ECU)の試作や、モータの試作、それから磁界解析の案件が多いです。
モータの設計・解析・試作、マイコンへ書き込むモータ制御プログラムの設計・解析・実装は弊社で行います。一方、ドライバに用いる電力変換回路や制御回路などのハードウェアについては外注しています。ドライバの外注先は大学時代の研究室(長岡技大伊東研究室)の先輩方が起こした会社で、その先輩方は回路設計や電源制御の研究をされて博士号を取得しています。モータだけでなくドライバも一緒に作製してほしいとご要望をお客様から頂いた場合は、お客様にドライバへの要求事項の確認や提案を行い、外注先に作製を依頼するという形をとっています。
私は主に、モータ試作の電磁設計と磁界解析を担当しています。最近扱っているモータはPMモータが一番多いですがSRモータやシンクロナスリラクタンスモータを扱うこともあります。最近は、シンクロナスリラクタンスモータとハルバッハ配列の磁石を使ったモータの案件の引き合いが増えてきたように思います。
佐藤氏:
先ほども申し上げましたが、基本的には受託開発がメインでモータの設計・試作から駆動まで幅広くやっているというところが特徴なのですが、私たちが会社を立ち上げたきっかけは「モータで困っている人や会社の力になりたい」という考えからです。
お客様によっては、それほどハイレベルな技術を求めない方もいらっしゃるので、簡単にできるものは簡単に、難しい技術が必要ならば都度その技術を磨いていくという形で仕事を進めています。
「自分たちのコアになる技術は必須」と思いますので、今はモータの自動設計やモータ制御の技術を磨いているところです。磨き上げた技術の一部は学会等で発表してオープンにしています。
自動設計と高精度化に対する技術向上とJMAGへの期待。
佐藤氏:
自動設計というと、AIを使ったアプローチと最適化の延長のようなアプローチがあると思いますが、私が今取り組んでいるのは後者の考え方です。
モータの仕様から機器定数を求めて、寸法や巻数などを汎用性の高い形で算出できないか、試行錯誤しています。
佐藤氏:
そうですね。どちらを優先するかということも考えたりするのですが、制御とモータの磁気設計でバランスをとりつつ進めていくということが必要だとも思います。弊社のお客様は、とにかくサイズを小さくしたいという要求が強い方が多く、低振動にしたい、騒音を小さくしたいという要求は今のところそこまで多くないです。ですので、トルクリップルを無視するということではないですけれども優先度的には低くなり、そのまま設計と試作を進め、制御してみると高調波が大きくて困ったということがありました。
優先度をどこに設定するかで、進め方が変わっていくというところは本当に難しいですね。
佐藤氏:
熱を考慮した設計はまだ弊社の中で確立できていない状況ではありますが、独自のテーマで、モデルを実際に作って、設計段階でどこまで高精度に熱を考慮できるかということをトライしているところです。
“JMAGがあること”を前提に考えている。
佐藤氏:
そうですね。きっかけというのはあまりなくて、元々使っていたからというのが一番大きな理由なのですが、この仕事をしていく上でシミュレーションソフトウェアは必須だという考えはずっと持っていました。起業当初はソフトウェアに割く予算がなく、すぐに導入できなかったのですが、いずれ導入しようという思いはありました。晴れて利用再開しても大学時代から使っていたので、操作性で困ることもありませんし、心配はありませんでした。
仕事上、JMAGを使っている方もしくはJMAGを使っている会社の方に出会うことがとても多いです。そういう方達と情報をシェアすることを考えた時に、私たちも他のソフトウェアではなくJMAGを持っている方がいいよね、いうのが2つ目の理由です。取引先も使っていると、データのやり取りという観点からも同じソフトウェアを使っている方がいいですからね。
佐藤氏:
先ほどの内容と重複がありますが、お客様案件以外ですと、モータの自動設計方法の開発が今取り組んでいることの一つです。やり方は古典的で、モータの諸元を入力として与えた時、磁気回路をもとにしてコア寸法や巻数を計算して、得られた結果に間違いがないかをJMAGで確認するという作業をしています。モータのタイプとか形によって設計手順が変わると考えていますが、SRモータや一般的な磁石配置のIPMモータの設計方法は、ある程度確立できたかなと思っています。
SRモータの設計手法については論文にもまとめました。私は学生時代にSRモータをメインでやっていたわけではないのですが、お客様と話していてSRモータが話題にあがることが多く、勉強を兼ねて設計してみようと思ったのがきっかけです。色々調べてみたら、私にとってわかりやすい設計手法が示されているわけではなかったので、だったら自分たちでSRモータの設計方法をまとめようと思いました。これを始めるタイミングで、母校の長岡技大の伊東先生の研究室の学生さんがインターンとして3~4か月くらい来ることになったので、一緒に検討してもらいました。それに取り組むうちに論文を書ける成果が得られたので、2020年1月の回転機研究会で発表させていただきました。
佐藤氏:
最終的な目標は、JMAG-DesignerやJMAG-Expressに入力する、ベースモデルを作ることとしました。どうやって寸法を決めていくかというフローを、参考書や論文を参考にしながらフローチャートとしてまとめました。元々「SRモータはこういうふうに設計したらいい」というのが色々な文献に散りばめられて書いてあったので、それを集約してきれいにフローチャートとして表しました。ですので、書いている内容自体は結構一般的には知られているようなことだったりします。最終的に出てきた設計案の妥当性は、JMAGを使って確認しました。
JMAGがあったからこそ妥当性の確認ができたという意味では、JMAGというソフトウェアがあることを前提で考えた設計手法とも言えます。実は、あの設計手法は最初の計算だけではそこまで精度良く設計できません。JMAGを使っていくつかのモデルの解析をし、その結果をフィードバックすることで高精度に設計できる手法なのです。
設計は反復の連続。要因分析ができるのはシミュレーションだからこそ。お客様のものづくりに柔軟に対応。
佐藤氏:
そうだと思います。ほんの一例ですが、シンクロナスリラクタンスモータを設計していた時、参考にしていた論文だと「こうなるからトルクのリップルが抑えられる」とか「こうするとトルクが大きくできる」とか書かれていたのに、同じような手順を踏んで試してみても思ったほどの効果がでないということがありました。
なぜ効果が得られなかったかと考える時、磁束密度コンターや磁束線は要因分析にとても役立ちます。「この部分を直しただけだとトルクに寄与する磁束が増えるわけではない」などということが可視化されて簡単に考察できますから。参考書や論文に書いてあったことはその条件だと効果があるけど今回のケースだと当てはまらなかった、という結論が得られたのはよかったです。
佐藤氏:
JMAG-Designerで解析した結果と実測結果の比較ですと、誘起電圧やトルクはほぼ合うので今のところ満足しています。問題になるのはやはり損失や効率の評価になってくると思うのですが…。わかりきっていることですけれども、鉄損や機械損の評価というのは、JMAGが悪いということではなく、やはり限界があるとは思います。そもそも測るのも難しいですから。弊社の場合、今のところそこまで効率を重視する話が多くないというのもあり、解析結果と実機の違いというのはそこまで目くじらを立てるほどのことではないかなと思っています。むしろ、よく合ってくれているなと思うくらいです。
佐藤氏:
必要に応じて三次元モデルでの解析もやってはいますけれども、弊社の場合、構造上三次元解析が必須な事例でなければ、お客様に「三次元モデルで解析してほしい」と依頼されない限りは二次元解析で済ませています。そこまで三次元解析でなければ結果が得られない事例は多くないですね。
私たちの仕事では、解析結果と実測結果を必ずしも合わせる必要はなくて、最終的に仕様通りの試作品が作れればOKです。そのためのあたりをつける時にJMAGを活用しているので、例えば、三次元的な影響が恐らくあるだろうモデルを二次元で解析したとしても、「こういう理由でちょっとトルクが下がってしまうかもしれませんね」という話をお客様として終わることも結構あります。そういう意味で、アキシャルギャップ以外のモータでしたらそこまで三次元化する必要性は多くないかなと。
佐藤氏:
SRモータに関しては、今はそこまでの要求をされている案件がないというのが現状ですね。元々、SRモータという時点で振動騒音が大きいという認識をもたれている方が多くて、そこを気にするのであれば積極的にSRモータを選択しないだろうと思います。そういったこともあり、振動騒音の解析をしてほしいとか、振動騒音を考慮した設計をしてほしいという話も今のところきていません。
学生時代からの利用・経験を通じて今思うこと。
佐藤氏:
JMAGに関しては学生時代から使っているので、苦労を苦労と思っていないところがあって。苦労というより勉強という感覚でした。
一番JMAGで大変だったのは、機能や用語がわからなかったことかもしれません。調べたり、サポートの方に聞いてみたりして乗り越えていました。もちろん、サポートの方に教えていただいてもわからないことがあったりもしました。その時は、例えばチェックを入れるか入れないかというレベルだったら、チェックの有無で結果がどう変わるのかを実際自分で確認したり、条件を変えてその条件がどう影響するのかを確認したりしていました。そうやって経験的に覚えていきましたが、用語集があるといいのかもしれませんね。
佐藤氏:
はい、よくみています。前にやったことのある解析方法でも、内容を忘れてしまって、アプリケーションカタログで事例を見ながら思い出すということはよくあります。
佐藤氏:
チャレンジしたいこととは違うと思いますが、さきほどからお話している自動設計をした時に、モデル作成を簡便化するため、ユーザーが作ったツールの出力がそのままJMAG-Expressの設定ファイルになればよいなと思います。JMAG-Expressでの寸法などの入力の手間を省けたら楽なので。
あとは、ライセンスがなくてもJMAG-Designerの起動ができればよいなと思います。例えば、ソルバー実行はできないけれど、設定の確認や結果の表示だけはできると、出張先で提案や説明に都合がいいと感じる時があります。ビューアのようなイメージです。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
お話を伺った方
博士(工学)
佐藤 大介 氏
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