配電・制御機器の総合メーカーとして築いてきた伝統のもと、社会と共に発展する企業として、創意と工夫をもって時代の様々なニーズに応える企業へ
株式会社戸上電機製作所は、配電・制御機器の総合メーカーで、社会インフラに関わる重要な製品を扱われております。取引先様や時代の様々なニーズに創意工夫をもって、国内にとどまらず海外にも事業展開をされています。今回インタビューさせていただいた西村様は主に海外向け高圧機器の開発を担当されています。
「社会を、地球を、未来を豊かに。」をスローガンに生活の当たり前を守る。
西村氏:
はい。弊社は企業理念として「社会を、地球を、未来を豊かに。」をスローガンに掲げ、配電・制御機器の開発製造を行っています。
私は海外事業推進部に所属しています。当部では東南アジアから米国まで幅広いエリアで活動しています。主な業務として米国向けの高圧機器に組み込まれる部品の設計開発を担当しています。
西村氏:
社会インフラに関わる重要な製品を扱っていますので、開発段階からお客様の信頼を損なわず、要求された性能を満たしつつ、より高品質で低コストなものを提供できるようにと常に心がけています。職場には緊張感がありつつも上司とコミュニケーションが取りやすい非常に雰囲気のよい環境で日々開発ができていると思います。
西村氏:
日本国内では6.6キロボルトがメインになります。(一般的な高圧機器の電圧)
高圧だと危険が伴うため実験が難しいと思われがちですが、弊社では国内製品を網羅できるような試験設備は完備しています。但し、私が担当する海外向け製品は、上限が27~38キロボルトとなり、27~38キロボルトの階級になると一部の試験ができない状況になってきます。
図:電磁ソレノイド試作品
解析と実機との検証を繰り返して相関を確認。使っていくうちに解析の実用性を感じる。
西村氏:
導入の目的は、業務効率化の一貫で解析結果をフィードバックして試作品に活かし、試作回数を減らすことでした。開発コストの削減ですね。
当初はレンタルができる電磁界解析の製品を探していまして、JMAGを商社に紹介されたことが、導入のきっかけだったようです。使っていくうちに扱う案件数が増えて使用頻度もかなり上がってきたため、本格的に導入させていただきました。実機との相関確認など実用性を感じています。
私が入社した時点では製品の開発案件に直接使っている状況ではなかったのですが、当時所属していたR&D研究開発部門でJMAG活用を任されました。
最初は、設計初期に試作前の基本的な性能確認をするために使っていました。解析結果から修正点を洗い出し、再検証を行うという使い方です。その次の段階としては、要求性能を満たす結果が見つかった後、試作を行い、試作品の性能検証結果と解析結果を照らし合わせました。そして解析を繰り返してよりよいものを見つけ、また試作にフィードバックするという形で使っています。製品を作っていく以上、性能以外にコストも重要になってきますので、設計の改善点を発見する際にも活用しています。
西村氏:
最初は私しかJMAGを使っていなかったような状況なので、開発担当者数名を集め、レビューをして「こういった形で使えます」という説明をしました。それを機に他の人たちが使い始めた形です。会社的にはこのようなレビューの機会は結構あり、特にJMAGのように設計に活用できるソフトウェアは「積極的に活用してくれ」という意味でレビューの場が設けられています。
現在、私の方は担当案件が増えたこともあり、JMAGをメインで使っているのは引き継いでくれた同僚です。私は分からないところがある時に質問を受けて、アドバイスをしています。
「習うより、慣れろ」。まずは各自で解析ノウハウを蓄積して、現場を底上げ。
西村氏:
ある程度結果がまとまった段階で、解析結果とそれをどのように設計に反映したのかを報告書としてまとめています。次の利用者はそれを参照するという流れです。まだ環境が整えられていないので、報告書と紐づくモデルまでは書いた人の記憶をたどって探すしかない状態ですが…。
解析ノウハウについても、時間をとって指導をするというよりかは不明点があったら聞いてもらうようにしています。たまに様子を見ながら「ここはこうした方が良い」というアドバイスをすることもあります。
ノウハウの共有は難しいところで、解析対象や内容によってモデル化の方法は違うため自分で基本的なところを理解しながら進めてもらった方が良いと私は思います。「習うより、慣れろ」ですね。ある程度できるようになってから、アドバイスをすることが多いですね。
西村氏:
一般的に解析ソフトウェアは扱いが難しかったり、使い方がわからなかったり、とっつきにくい印象がどうしてもあります。なので、最初は慣れるのに時間がかかり初歩的な電磁界解析ができるようになるまで半年くらいかかりました。過渡応答解析ができるようになったのはさらにもう少し先です。
西村氏:
最初はJMAGのWEBサイトで提供されているPDFとデータがセットになった解析事例サンプル(JMAGアプリケーションノート)をダウンロードして、そこでどういった設定がされているのか、どんな機能を使っているのかを確認し、理解しながら進めていきました。またセミナーにも参加し、情報を収集し参考にしました。
今もJMAGをこれから始める人には極力セミナーに参加してもらっています。弊社はモータを扱っているわけではないので内容が直結しないこともありますが、業務に関連がありそうなセミナーをチェックして参加を検討しています。
目に見えない現象を可視化することで、知識も理解も深まる。
西村氏:
主に解析しているものはソレノイドです。ソレノイドの推力を利用する製品、例えば開閉機器のような製品が主な適用先になります。
先ほど導入目的として「解析結果を試作にフィードバックする」と申し上げましたが、予測の精度として100%というのはやはり難しい数字です。様々な外部要因や機械的な構造のロスなどからも影響を受けるので、大体80~90%程度を目標にしています。実機とのずれはどうしても生じてくるので、それが根本的に問題にならないような原因であれば、そのまま単純化したモデルで評価をしています。
ソレノイドでの評価項目としては「磁気回路、磁束密度、過酷環境における動作時の減磁特性など」の基本的な特性から製品運用条件で性能や品質に関わる項目に関して重点的に評価しています。
磁気回路については、プランジャの保持力やソレノイドの動作に大きく関わってきます。ロスにつながるようなムダは可能な限り排除していき最小限の材料および単純な構造で要求しているパワーを発揮できるような設計を目標としています。
当初は静解析がメインでしたが、今は過渡応答解析をメインで行っています。現実の動作により近い状態を再現して運用している状態です。また、減磁解析なども含め、だんだん活用の幅は広がってきています。別の案件では電界を評価することもあります。
西村氏:
電界解析を行っている解析対象は、コンデンサのようなものを想像してください。樹脂の中に空隙や欠損部分がある場合、その空隙の両端に高い電圧をかけると空隙中に電界が集中します。この電界集中により放電が発生して、最終的に高電圧部と低電圧部で絶縁破壊を起こし得るので、解析によって局所的に高い電界が発生していないかなどを確認しようとしています。
図1 簡易モデル断面
図2 解析時の磁束様相
図:製品および解析の簡易モデル
製品名:電磁ソレノイド
概要:一般的なリニアソレノイドに磁石を使用してラッチ機構を持たせたもの。高圧機器では投入時や電流印加時に相当量の電磁反発力が発生するため、駆動部品の保持力や動作スピード等は最終製品の性能を決定付ける重要な設計要素となる。
西村氏:
はい、もちろんあります。導入前は知見や勘に頼る部分が大きく、そのやり方だとどうしてもトライアンドエラーが多くなってしまいます。試作製品としては作る必要がありますが、部品に関しては適用できる範囲で解析ソフトを活用することにより試作の回数が格段に減っています。今までは1つ変更して試作、また1つ変更して試作ということを繰り返していたのに対し、解析ソフトを活用すれば1つ1つの試作工程をある程度省略することができますので。
また、知見が浅い設計者の設計業務のスピードアップにもつながっていると思います。磁気や電気は目に見えないので設計が難しく最初は時間がかかります。それが可視化されることによって設計のスピードが速くなっている印象があります。具体的にどのくらい速くなったのかを数字で表すのは難しいところですが。
解析ソフトウェアの強みは、設計アイデアの試行錯誤を手軽に試せること。
西村氏:
はい。解析ソフトウェアの強みは、設計アイデアの試行錯誤を理論立ててできる部分ですね。「ここを変えたらもっと性能がよくなるのではないか?」というアイデアを解析上では手軽に試し、検証することができます。また、検証を繰り返しながら自分の知識や理解を深めることができるので、そこは大きな強みだと思います。理解が深まるのは自分だけではありません。見えない現象の可視化という解析ソフトウェアの強みは、相手の理解も深めることができます。コンター図やベクトル図を表示することで、レビューの時に設計意図の説明がしやすくなり、また知識の浅い相手にも理解してもらいやすくなります。
西村氏:
1つは、やはり磁界や電界は目に見えない現象なので、実現象と解析の相関をどう考えるか、解析結果をどうフィードバックするかということですね。解析で考慮していない部分が影響していれば解析の条件設定を見直すこともありますし、試験自体のやり方を見直すこともあります。今は相関をとった後、個人の知見から改善できるところを探して、設計に反映しています。
もう1つは、さらなる業務効率化です。今も少しずつ短縮はできてはいるのですが、解析結果から形状を変更するところは設計者の知見に頼っており、その部分を効率化できないか検討しています。そのためにはJMAGの最適化機能を活用したいのですが、今はまだ時間を確保できず手が回っていません。経験者が設計したアイデアよりJMAGの最適化機能が導き出したアイデアの方がいい可能性がありますからね。今後、ぜひ使っていきたいです。
西村氏:
初期の段階で渦電流まで加味していたこともあって、今のところ十分評価できていると感じています。ですので、さらに時間を費やすということは考えておりません。実機の検証が一段落してより詳細な分析に時間を費やせるようになったら、当然進めていきたいところではあります。
西村氏:
モータを扱うユーザーが多いというのは認識しているのですが、今後はソレノイドも含めた幅広いアプリケーションの解析事例を用意していただけると、ユーザー側も利用の幅を広げられるではないかと思います。
ユーザーインターフェースはかなり使いやすいと思っているので、今でも十分満足はしています。ただ、外部の3DCADソフトウェアからインポートした時のモデルが、元の3DCADソフトウェアで見えていたモデルと若干違う場合があるので、そこを改善していただけると非常に助かります。
この度はインタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。
お話を伺った方
海外事業推進部 商品開発グループ
西村 拓氏
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