第1回 モデルベースデザインに対するJMAGの取り組み

解説:モデルベース開発

開発現場において、最近“モデルベースデザイン(開発)”という言葉が使われはじめています。
このレポートでは、「モデルベースデザインとは何か」「我々にどのように係わりがあるのか」を知ると共にJMAGがどの様に関わっているのかについて報告します。
今回はモデルベースデザインの基本についてご紹介してまいります。

モデルベースデザインは時代の流れ

実際にモデルベースデザインが多く使われている例としては、自動車のシステム開発があります。
ご存知のように、自動車はエンジンの電子制御化を皮切りに、トランスミッション、パワーステアリング、ABS、駆動制御などのユニットが次々に電子制御化されており、それぞれがソフトウェアを持ったECUで制御され、ある種のコンピュータの集合体となっています。これら複数のECUがそれぞれ連携しながら、運転者の意思に沿った動きをシステムとして実現出来ているかを確認する必要性があります。

勿論、全てのユニットが出来上がってから試験車で走行評価を行う事で確認は可能ですが、その時点で大きな欠陥が確認された場合の手戻りは膨大なものになります。各ユニットの単体評価はもちろん、結合評価に関しても開発の前倒しを行なうことは、開発コストやリスクの低減のために重要です。

この解決案が、“モデルベースデザイン”です。
モデルベースデザインとは、コンピュータ上で、各ユニットを”モデル”という概念で表現し、“モデル”同士のインターフェースをバーチャルで再現することで、システム(プラント)評価を行っていく手法です。
通信を伴うECU連携では、一部のユニットのタイムラグがシステム全体に思わぬ悪影響を与える恐れがあり、全てを評価するためには、“モデルベースデザイン”が有益です。

“モデルベースデザイン”は目新しい言葉ですが、実はコンセプト自体はもともとあり、皆さんが通ってきた道の延長線上にあるものです。

昔は図面や仕様書で部品の情報を提供していました。この図面という情報に基づき、システム設計者は機器の配置設計は図面で、性能や品質は手計算で設計していました。この場合“図面”=“モデル”です。

しかし、三次元CADの普及に伴い、“図面”にあたるものが“三次元データ”で提供されるようになりました。

“三次元データ”が”モデル”に変化しましたが、コンセプトの根本の部分である、情報を”モデル”という形で提供する事に変わりありません。
三次元データのやり取りが当たり前の昨今から考えると、図面をやり取りしていたことが前世紀のことに思えますが、根本は同じものであるのです。

形状が二次元の紙から三次元のデジタルデータに進化し、情報量が大幅に増えたように、性能についても同じことが期待されるのは当然です。
電圧をかけるとどように動くのか。どのような性能を発揮するのか、また発揮しないのかとの挙動も予め知った上で設計することになります。

形状が進化したように、モデルベースデザインもこれから誰もが通る道へと進化していくのではないでしょうか。

モデルベースデザインに対するJMAGの解答

JMAGはモデルベースデザインに対するソリューションのひとつが“JMAG-RT”です。名前の由来は、現時点でのモデルベースデザインの理想である“リアルタイムシミュレーションに対応出来るJMAG”を目指してつけられました。

電気機器設計においてJMAGは精度の高い磁界解析結果を得ることが出来きます。そのため、従来では電気機器設計者が自分の設計を磨き上げるツールとして使われていました。
しかし、モータやトランスなどの電気機器は駆動回路から電力を投入されて始めて動くもので、お互いを切り離すことは不可能です。
そのため、電気機器設計の成果を回路設計者やシステム設計者と共有する必要がでてきました。

この問題を解決するために、解析結果を用いた高精度な”モデル”の形に変換するツールとしてJMAG-RTは開発されました。

例えば、モータ開発においては、小型化・高出力・高効率・高品質・高制御性・低コストといった相反する目標が要求されています。そのために、磁化特性の非線形性領域を使わざるを得なくなり、インバータ側からみたら扱いづらいモータが開発されます。
当然、インバータ自身にも同様な要求が課せられていますから、どの地点で落ち着くかが開発の鍵となります。
着地点のすり合わせを行うためには、実機に限りなく近い挙動を示す”モデル”が必要によるシミュレーションを行う事が要求されます。

JMAG-RTは電気機器を制御回路シミュレータで活用できるモデル(ビヘイビアモデル)形に変換できるので、既に多くの開発設計者に使われています。

JMAG-RTは市場のニーズに呼応できるよう、日々進化しております。

既にリリースしているPMモータ、ステッピングモータ、リニアモータの他に、誘導モータ、SRMモータのモデルも提供を予定しています。
PMモータでは鉄損をモデルに組み込む機能の追加を予定しています。

LMS Virtual.Labを用いた音響解析

JMAG-ABAQUS連成を用いたI誘導加熱解析

モデルベース開発は制御や電気回路に留まりません。電磁力や応力を介した磁界-構造のモデルによる振動・騒音評価、電流発熱と熱を介した熱-磁界のモデルによる昇温解析を容易に行えるよう、他社のアプリケーションとのインターフェースの性能向上にも注力しています。今後は熱ビヘイビアモデル、構造ビヘイビアモデルなども市場のニーズに応じて開発いたします。

今回は序章として、モデルベースデザインの概論とモデルベースデザインに対するJMAGの取り組みについてお話しました。
次回はJMAG-RTの新機能についてご説明したいと思います。

[JMAG Newsletter 2011年春号より]

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