[W-VI-97] 実機と解析モデルで剛性を合わせるための相関解析

目次
1. 概要
2. 解析による振動推定時の課題
3. 課題を解決する相関解析
4. 相関解析の詳細
5. 相関解析の実例
 5.1 対象モータの仕様
 5.2 固有振動数測定
 5.3 ステータコアのモデル構築
 5.4 ステータコアにコイルを追加したモデル構築
 5.5 ステータコア、コイル、フレーム結合モデル構築
 5.6 アセンブリモデル構築
6. まとめ
7. 参考文献

1. 概要

近年、電気機器設計の現場では振動対策が重要なテーマである。電気自動車で使用されるモータは一般的にはエンジンよりも静かだが、駆動範囲が広いことから振動・騒音が問題になることがある。また、大型変圧器は特に住宅街に近い場所に設置される場合、振動・騒音の規制が厳しくなってきている。
これに伴い、シミュレーションの分野においても電磁振動シミュレーションが盛んに行われており、電気機器設計に活用されている。振動・騒音は、電磁振動が起振源となり、構造体が共振・増幅することによって発生する。振動騒音を低減するためにCAEを活用する場合、電磁界解析により電磁力の分布と時間変化を求め、得られた結果を入力として振動・騒音解析を行い、電動機構造が有害な振動や騒音を発生しないかを評価する流れとなる。高精度で振動を推定することが可能になれば、試作や試験のコストを下げることができ、製品開発全体の時間を短縮させることも可能となる。

2. 解析による振動推定時の課題

電磁振動シミュレーションの従来の課題として、実測とシミュレーションの結果が整合しないケースがしばしば見受けられる。これによりシミュレーションを設計に活用することが出来ず、試作や試験の回数を削減することが出来ない。
前述の通り、振動は加振力と固有モードの重ね合わせで大きな振動が発生する。すなわち、振動の推定精度を上げるには、加振力と固有モードの双方を正確にとらえる必要がある。加振力については今までの経験より精度が得られているケースが多いため、ここでは固有モードの高精度化にフォーカスする。以下に、モータを例として、固有値が合わない要因と対策について述べる。
まずは、コアの積層構造による剛性への影響が考えられる。積層コアの場合、面内方向は常に鉄であるが、積層方向は鉄と絶縁層が交互に積み重なっている。これより、剛性に関しても面内方向と積層方向で異方性を持つが、部品をバルクでモデル化し、等方性の剛性を与えているため実測と乖離しているケースが多い。対策としては、コアの積層構造を厳密にモデル化することである。
次に、巻線の素線構造を簡略化することによる影響が考えられる。コイルは本来素線を束ねた状態となっており、さらに絶縁皮膜もあるため詳細なモデル化がされていないことがほとんどである。これを厳密にとらえるには巻線および絶縁皮膜を形状モデル化し、それぞれの接触や摩擦も考慮する必要がある。
部品単体のみならず、部品間の締結、接触、摩擦のモデリングによる影響も考えられる。ロータコアと磁石の間やステータコアとケースの間は本来剛結ではなく、接着層や接触、摩擦による影響が含まれる。剛結としてしまうと剛性が高くなってしまうため、対策としては接着層、接触状態、摩擦を厳密にモデリングする必要がある。
とはいえ、全ての物理現象をモデル化するのはモデル規模が増大するおそれがあり、また実機の接触や摩擦、締結の状態を把握するにはどのような測定が必要か、どのように解析モデルに落とし込むかという技術的な課題もあり現実的ではない。(続く)

解析対象(永久磁石同期モータ)
解析対象(永久磁石同期モータ)

ステータコアの#5モードシェイプ
ステータコアの#5モードシェイプ

ステータコアとコイルの#1モードシェイプ
ステータコアとコイルの#1モードシェイプ

ステータの#2モードシェイプ
ステータの#2モードシェイプ

アセンブリの#3モードシェイプ
アセンブリの#3モードシェイプ

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