富士電機機器制御株式会社

仏シュナイダーとの合弁をバネに、電磁開閉器市場のリーディングカンパニーに飛躍

電磁石を利用して電気回路の接点を開閉する電磁開閉器などの制御機器の最大手が富士電機機器制御株式会社。2008年には同分野で世界2位の仏シュナイダーエレクトリック社の日本法人と合併。日本市場をリードする旧富士電機機器制御と、グローバルカンパニーとしてのノウハウを備える旧シュナイダーの合併により、グローバルな製品力と付加価値の高いソリューション提案で市場をリードしている。その開発現場では、JSOLの電磁界解析ソフトウェア「JMAG」が活用されている。同社技術・開発本部開発技術解析グループのマネージャーで、シミュレーションソフトウェア活用の推進役でもある坂田昌良氏にJMAG活用法などを聞いた。

富士電機機器制御株式会社
技術・開発本部
開発技術解析グループ マネージャー
坂田 昌良 氏

制御機器と受配電機器分野で世界最高レベルの製品を提供

― 御社の社名には、「機器制御」という言葉がありますが、その意味と具体的な事業内容をお教えください。

坂田氏 当社の事業分野は大きく2つに分かれます。電磁開閉器や操作表示機器などの「制御機器」分野と、配線用遮断器や漏電遮断器などの「受配電機器」分野です。
具体的には、有接点の機器であることを前提に、(1)配線用の遮断器や漏電遮断器(ブレーカー)、(2)電磁開閉器や電磁接触器、(3)操作機器用の各種のスイッチやセンサー、制御リレー、(4)高圧電力の受配電に必要なヒューズや開閉器類などを開発・製造しています。
もう少し詳しく言いますと、電力回路や電力機器が正常に動作している時に電気の流れ(電路)を開いたり閉じたりするのが「開閉器」いわゆるスイッチです。スイッチや電力機器の状態に応じて制御用の電気信号を出力する電力機器を「継電器(リレー)」といい、継電器と連携して電路に過大な負荷電流がかかり設備に重大な被害をもたらすと予想される時に電流を遮断するのが「遮断器」です。さらに電路の開閉に電磁石を利用して行う装置(電磁接触器)と遮断器を組み合わせたものが「電磁開閉器」です。
当社では、系統電力では変電所から消費者寄りの領域にある、例えば工場やビルで利用される開閉器やブレーカーを、また電動機回路向けの電磁開閉器などを開発・製造しています。

― 電磁界解析ソフトウェア「JMAG」を導入いただいた経緯は、どのようなものでしたか。

坂田氏 富士電機グループではかねてから、モータの設計や解析のためにJMAGが活用されていました。ここの吹上工場では別の解析ソフトウェアを使っていたのですが、とにかく操作が難しく、開発者が気軽に利用できるインターフェースのレベルにありませんでした。
これはわたしたちの業界に限られたことではありませんが、製品の省力化、省エネ化、小型化の追究は避けて通れない流れであり、そのためにはシミュレーション手法の活用が不可欠です。インターフェースの良いシミュレーションソフトウェアの活用は、喫緊の課題であったのです。
わたしは、本社でさまざまなシミュレーションの技法の構築にかかわってきましたが、2007年に埼玉県吹上事業所に異動したのにあわせてJMAGの導入に踏み切りました。わたしの異動そのものが、開発や設計現場へのシミュレーション技法の普及をめざすものであり、その期待に応えてくれる使いやすいインターフェースのソフトウェアがJMAGだったのです。

電磁石を活用するだけにシミュレーション範囲は多岐に

― 開閉器の開発にあたって、どのような部分に電磁界解析ソフトウェアが使われるのですか。

坂田氏 電磁開閉器を例に、もう少し詳しく構造をお話ししましょう。電磁開閉器(通称マグネットスイッチ)は、電気回路の開閉制御を行う電磁接触器と、モータの過負荷保護などを行う熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)を組み合わせたものです。
電磁接触器は、電磁石部と接点部、これらを一体に組み込むためのフレームで構成されています。電磁石のコイルに電流を流し、電磁石に磁力を発生させる(励磁)することによって接点を閉じ、逆にコイルの電流を切ることで消磁して接点を開きます。
一方、サーマルリレーは、モータが過負荷になり過電流が一定時間以上流れると、ヒートエレメントのバイメタルの温度が上昇して湾曲し、リレーの接点を動作させて連携する電磁接触器の接点を開き、モータの焼損を未然に防止します。

― つまり電磁開閉器の開発・設計には、電磁界の分析が素材選びや回路設計の重要なポイントになるということでしょうか。

坂田氏 その通りです。たとえば接点部分の動きをよりスムーズにするにはどのような磁力が発生すれば良いのか、それは本体構造とどのようなかかわりがあるのかなどをシミュレーションするのです。
また過電流が発生した際には、電磁接触器の接点部分は強い反発力で一瞬にして開かれるのですが、この力も利用してスムーズな動きとするための構造設計、さらに配線設計なども重要になります。
さらに、電流が遮断される際には、放電アークが発生しますが、その発生のメカニズムを解明するだけでなく、アークの力を利用するためにさまざまな擬似的なアークを設定してシミュレーションを繰り返します。

接点部アークの解析

JMAGはモータ関連だけの解析ツールではない

― 実にさまざまな活用例があるのですね。

坂田氏 本当に使い道はたくさんあるのです(笑)。例えば、小型の電磁開閉器を並べて使うと互いが磁気干渉を起こすので、そのシミュレーションをしたり、装置類に振動を与えて発生する磁気の変化を探ったりもします。
わたしたちは、まず数十パターンの基本形をつくり、その先の細かな部分の設計などにJMAGを活用しています。構造の応用解析でも利用していますね。
JMAGは、モータ類の電磁界解析に特化したシミュレーションソフトウェアだと思っていたのですが、意外と言っては失礼ながら電磁開閉器の分野でも非常に使いやすく、力強い道具だと認識させられました。
わたしたちが開発し、製造する機器類は、10年や20年という長期間にわたって使われるのが当たり前の製品です。ですから量産化の前には期間でいえば半年から1年間、回数でいえば開閉を1000万回繰り返すなどといった耐久試験がなされるのですが、だからこそさまざまな課題をきちんと解消しておかなければ量産化に踏み切れないのです。わたしたちの現場でJMAGが不可欠なものになっているのには、そうした背景もあります。

― 御社ではJMAGの新バージョンである「JMAG-Designer」をご活用いただいていますが、感想をお聞かせいただけますか。

坂田氏 最終的な細かな解析と確認は、解析担当者が行うのですが、JMAG-Designerにより設計者がますます使いやすくなったと感じます。2011年3月に、JMAG-Designerへのバージョンアップを契機として設計者を対象とする社内勉強会を開催したのですが、今までJMAGを使っていなかった設計者たち全員がJMAGを使うようになりました。その良さを実感できるのですね。
CADデータの取り込みもできるようになっていますし、メッシュモデルに対して直接、形状変更して解析結果を得られるようにもなりましたので、利用者はさらに増えるのではないかと思います。ただ、方向性を数値だけでなく視覚的に確認できる機能があればありがたいと感じます。

シミュレーションソフトウェアを通じて「なぜ?」という探求力を育てる

― 最後に、JMAGを活用するための坂田マネージャーなりのコツなどがありましたらお教えください。

坂田氏 二次元データから三次元をイメージできる人は少ないのですが、三次元CADが登場したことによって三次元イメージをにらみながらの設計の敷居は随分低くなりました。
ですが一方で、三次元で設計して形まで自動的にできてしまうので、「なぜ、このような形になるのか」という基本的な部分についての理解が希薄になっています。シミュレーションソフトウェアは、解析を通じた妥当性を提示することで、この基本的な部分についての理解を促す効果があると思っています。
言い方を変えれば、間違った数値を入力しても答は出るので、さまざまなシミュレーションを通じて設計者が、「何故にこうなるのか」と考え、かつ、そのようになる理屈を見極められる力を育てなければなりません。それが設計者としてのレベルアップにほかならないのです。“試行錯誤のためのツール”といってもよいでしょう。ですが、試行錯誤をするには、やはり”試行錯誤ができる力”が必要なのです。

電磁接触器に用いる交流電磁石の解析

商号
富士電機機器制御株式会社
設立
2008年10月1日
本社所在地
東京都中央区日本橋大伝馬町5番 7号 三井住友銀行人形町ビル
資本金
76億円
連結従業員
2600人
代表者
代表取締役 伊藤 文夫

事業概要
1923年(大正12年)に古河電気工業と独シーメンス社との資本・技術提携により設立されたのが富士電機。1935年に電話部を独立させて発足したのが富士通信機製造、現在の富士通だ。
富士電機機器制御株式会社は、2003年10月に富士電機グループが持株会社制に移行したことにより機器・制御部門の中核事業として設立された。その後2008年に、受配電の制御機器では世界2位の仏シュナイダーエレクトリック社の日本法人と合併して(新)富士電機機器制御株式会社が発足。名実共に受配電・制御機器分野における日本のリーディングカンパニーとなる。
国内には吹上(埼玉県鴻巣市)、大田原(栃木県大田原市)、秩父富士(埼玉県秩父郡小鹿野町)の3つの製造拠点がある。

事業内容 受配電機器
制御機器等の開発、製造、販売およびサービス

[JMAG Newsletter 2011年秋号より]