273 – 交流損失を考慮したIPMモータの効率マップ作成

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モデルデータ

概要

IPMモータは、磁力の強い希土類焼結系永久磁石を用い、磁石の磁界と回転磁界によるマグネットトルクに加えて、d軸とq軸のインダクタンスの差に起因するリラクタンストルクを利用できるため、運転範囲が広くかつ高効率なモータです。そのため、電気自動車の駆動用などに用いられます。
モータの効率は回転数や負荷に応じて変化するため、モータ設計および制御設計を行う上で効率マップを描くことが有益です。
JAC165で効率マップ作成事例を示しています。JAC165は後処理によりPWM鉄損を考慮していますが、入力は正弦波であり、コイルの交流損失は無視されています。駆動用モータはパワーエレクトロニクスが用いられるため、PWMの影響を無視するとモータの性能を過大評価する可能性があります。
ここでは、PWMによる交流損失を考慮したIPMモータの効率マップを作成し、交流損失を考慮しない場合の効率マップと比較しています。

交流損失を考慮しない効率マップ

交流損失を考慮しない効率マップを図1、交流損失を考慮した効率マップを作成するための、抽出する動作点を図2に示します。
PWMによる交流損失を考慮した効率マップを作成するために、まず図1のような交流損失を考慮しない効率マップを作成します。交流損失を考慮しない効率マップについてはJAC165を参照してください。
この効率マップから、交流損失を考慮した効率マップを作成するための動作点を抽出します。
ここでは、図2に示すように、低速域、中速域、高速域の3つの領域に分けて抽出しています。この際、最大トルク点が含まれるように動作点を選択します。

交流損失を考慮するためのモデル化

制御回路を図3に示します。
PWMの影響を考慮するために、制御回路を作成します。また、交流損失を計算するため、概要図で示したように、コイルは素線形状をモデル化します。
制御回路では、JMAG-RTモデルを使用しています。解析開始時の過渡状態はJMAG-RTモデルで計算を行い、定常状態到達後に電気角一周期分だけFEAを行うことで、解析時間を短縮しています。

交流損失を考慮した効率マップ

PWMによる交流損失を考慮した効率マップを図4に示します。また、交流損失を考慮しない場合と考慮した場合の比較として、効率の差のマップを図5、銅損の比のマップを図6に示します。
図5より、交流損失を考慮しない場合と考慮した場合の差は、低速域、中速域では1ポイント程度であることがわかります。また、高速域では2~5ポイント以上の差があります。駆動用モータのように90(%)以上の高効率を達成したい場合、この差は精度に影響を与える可能性があります。
図6より、交流損失の考慮の有無により高速域で銅損に大きな違いがあることがわかります。これにより、図5で示した効率の差が発生したと考えられます。

損失成分の内訳

図6で示した、低速低負荷および高速低負荷における損失を確認します。
低速低負荷における、損失成分の内訳を図7、交流損失を考慮した場合のステータコアの渦電流損失の周波数成分を図8に示します。
PWMのキャリア周波数は6,000(Hz)です。図7と図8より、低速低負荷での渦電流損失はPWM高調波成分の影響が大きいことがわかります。なお、交流損失を考慮しない場合の解析は後処理でPWM鉄損を求めています。これにより、交流損失を考慮した場合との差が小さくなります。
高速低負荷における、損失成分の内訳を図9、交流損失を考慮した場合の磁束線と電流密度分布の周波数成分を図10に示します。
図9より、高速低負荷ではPWMによる渦電流損失の影響は小さいですが、交流損失の考慮の有無で銅損に大きな差があることがわかります。図10より、この銅損の差はスロット内の漏れ磁束による渦電流が要因と考えられます。

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