[W-SC-214] 異方性を考慮した高温超電導体の解析

 

目次
1. 概要
2. 超電導体の材料モデリング
3. 異方性による影響の評価
 3.1 臨界電流密度分布
 3.2 電流密度分布
 3.3 交流損失
4. まとめ
5. 参考文献

1. 概要

高温超電導体は液体窒素温度で超電導状態を実現できるため、医療、輸送、エネルギーなど幅広い分野での応用が期待されている。しかし、超電導機器の試作による性能検証は、コストや時間を要し、さらに、クエンチや構造破損といったリスクを伴うことから、シミュレーションを活用した設計検討が重要である。
高温超電導体の中でも、特にREBCO(希土類系銅酸化物)テープ線材は、高い臨界温度と優れた臨界電流特性を有している。しかし、REBCOは結晶構造の異方性に起因して、臨界電流密度特性が磁場の印加方向に依存する。具体的には、磁場がab面(テープ面内)方向の場合、臨界電流密度は高く、c軸(テープ面垂直)方向の場合は低くなる。
この異方性を無視したシミュレーションは、設計精度に重大な影響を及ぼし得る。例えば、面内方向の特性のみを考慮すると超電導体に流れる臨界電流を過大評価し、面垂直方向のみを考慮すると過小評価することになる。これはクエンチリスクの過小評価や限界設計における誤った判断を招くため、実現象を忠実に再現する材料モデリングに基づく高精度な解析が不可欠である。
本稿では、図1に示すCORC型ケーブルを対象とした解析例を通じて、電磁界解析シミュレーションにおける異方性考慮の必要性を検討する。一様な交流磁場を印加し、その際の臨界電流密度分布と電流密度分布、交流損失を評価する。

図1 試験に使用したCORC型ケーブルモデル:モデル全体(左)とテープ断面の拡大図(右)図1 試験に使用したCORC型ケーブルモデル:モデル全体(左)とテープ断面の拡大図(右)

2. 超電導体の材料モデリング

超電導特性を記述する構成方程式として、べき乗則で近似したモデル(以下、n値モデル)を採用すると、電気伝導率\(\sigma\)は次式で表される。

(1)

(1)

ここで、\(E\)は電界、\(B\)は磁束密度、\(T\)は温度、\(E_C\)は超電導体の臨界電流密度\(J_C\)を定義する基準値である。また、指数\(n\)はn値と呼ばれ、超電導体の非線形性を表すパラメータである。

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