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概要
永久磁石同期モータはHEV駆動、エアコンのコンプレッサー等、様々な分野で活用されています。中でも特にHEV駆動用では小型、高出力密度化を達成するために、従来よりも高速回転化が進んでいます。永久磁石同期モータの鉄心は電磁鋼板で構成されますが、従来電磁鋼板で発生する鉄損は磁界解析の後処理で評価されることが一般的で、その場合は磁界解析に鉄損の影響は考慮されていませんでした。しかし、高速回転化に伴い鉄損が電磁界に及ぼす影響が無視できなくなると後処理で鉄損を評価する手法ではモータの出力するトルクなどの解析精度が得られない恐れがあります。
ここでは、電磁鋼板で発生する渦電流損失を磁界解析中で考慮し、トルクに及ぼす影響を解析する手順を紹介します。
ここでは、電磁鋼板で発生する渦電流損失を磁界解析中で考慮し、トルクに及ぼす影響を解析する手順を紹介します。
トルク特性
電磁鋼板中の渦電流を磁界解析中で考慮しない場合と考慮した場合のトルクの比較を図1に示します。渦電流を考慮する場合は解析初期から過渡現象が生じていることが分かります。電気角180-360degで平均を取った値を表1に示します。本モータの様に回転数が高い場合、電磁鋼板中の渦電流を考慮しないとトルクが過大評価されることが分かります。
線間電圧
電磁鋼板中の渦電流を磁界解析中で考慮しない場合と考慮した場合のU-V線間電圧の比較を図2に示します。トルクと同様、電磁鋼板中の渦電流を考慮しないと電圧が過大評価されることが分かります。また、渦電流を考慮することにより電圧の高調波成分が抑制されていることが分かります。これは磁石や電流の磁束の変動が渦電流により抑制されているためです。
鉄損、効率
電磁鋼板の渦電流を考慮した解析で得られる渦電流の分布(電気角180-360degで平均を取った値)の分布を図3に示します。ステータのティース先端部およびロータ表面で大きな渦電流が生じていることが分かります。次に電磁鋼板の渦電流を考慮しない解析と考慮した解析の鉄損を図4にまとめます。鉄損は電磁鋼板のヒステリシス損と渦電流損および磁石の渦電流損の和です。ただし、渦電流を考慮した解析においてもヒステリシス損失は磁界解析の後処理で計算しています。
銅損、鉄損及び出力から計算した効率を図5に示します。電磁鋼板の渦電流を磁界解析内で考慮しないと効率が約1%過大評価されることが分かります。