233 – 誘導加熱コイルの最適化

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概要

鋼の表面硬化を目的とした焼入れの手法の一つとして、高周波焼入れが多くの機械部品に適用されています。
一般に高周波焼入れ装置の試作や試験には、大きな費用と時間を要し、さらに危険を伴う場合もあります。また、誘導加熱という複雑な現象に加え、キュリー点を超える加熱により材料特性も大きく変化するため加熱状態の推測は困難です。そのため、詳細な現象を扱うことができる有限要素法に基づいたシミュレーションが有用です。
また、焼入れを行う際は均一な加熱が期待されますが、加熱コイルの形状・配置、電流周波数や大きさの調整など検討すべき要素は少なくありません。多くの設計変数や評価項目がある場合には、最適化機能を用いた自動計算をシミュレーションに適用すると、工数を大きく削減できます。
ここでは、歯車の高周波焼入れに使用するコイルの設計に最適化機能を用いて実施した例を示します。

最適化条件

コイルは2巻とし、ワークの中心からの距離CPositionとコイルの幅CWidthを設計変数とします。また、入力電流Iampも設計変数として定義します。
コイル寸法の設計変数を図1に、各設計変数と設定範囲を表1に示します。
温度評価点を図2に示し、コイル最適化設計における目的関数を表2に示します。目的関数には、次の3点を定義します。

  • 入力電流最小化
  • 評価点における温度𝑇_𝑖(図2)に対して、目標温度𝑇_𝑅からの標準偏差Tdevの最小化
  • 評価点における温度𝑇_𝑖(図2)に対して、目標温度𝑇_𝑅からの偏りTbiasの最小化

初期設計案

初期設計案の温度分布を図3に示します。
図3より、ワーク温度はワーク中心の温度評価点T2とT4の温度が高く、ワーク端面に近い温度評価点T1とT3の温度が低いことがわかります。
初期設計案では温度評価点の温度のばらつきが大きいため、改善する必要があります。

多目的最適化によるパレート解

集団サイズを15、世代数を10とした多目的遺伝的アルゴリズムの最適化計算を行います。多目的最適化によって得られた入力電流Inputと温度の標準偏差Tdevのグラフを図4に示します。
温度の標準偏差Tdevが最小値のケースを最適値として示します。最適値は初期設計案にくらべ、入力電流値を下げることができ、かつ標準偏差も小さくなります。
一方、最適化で得られた値より電流を下げた場合について確認します。図4に示すように、電流値を下げると全体的に温度が十分に上昇せず、標準偏差Tdevが悪化します。
最適形状における入力電流による温度分布の比較を図5に示します。

相関行列による感度評価

相関行列を図6に、CPositionとTdevの散布図を図7に、最適設計に対して同程度の電流でTdevが悪化したケースとの温度分布の比較を図8に示します。
図6を確認すると、設計変数のうち最もTdevに感度があるのはCPositionであり、コイル幅Cwidthは感度が小さいことがわかります。また、図7より、CPositionが大きくなるにつれてTdevも大きくなっていることがわかります。
図8を見ると、コイル位置がワーク端部に移動することによって温度もワーク端部に近い部分が高くなり、温度のばらつきが大きくなっていることが分かります。
これらの結果より、今回の例ではCPositionのTdevに関する相関性が高いこと、小さい値の方が均一加熱されること、CwidthはTdevとの相関性が低いことがわかります。

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