目次
1. 概要
2. 交流損失のモデリング
3. 制御適合事例:最大効率制御のための電流ベクトル適合
3.1 モータおよび制御仕様
3.2 プラントモデル仕様
3.3 電流指令値の適合方法
3.4 適合結果
4. まとめ
5. 参考文献
1. 概要
有限要素解析(FEA)ベースのモータモデルによるモデル・イン・ザ・ループ・シミュレーション (MILS)に対する制御パラメータ適合は、モータ駆動システム開発のためのモデルベースデザイン (MBD)における標準手順となることが予想されている。電気機械の現在の標準モータモデルは、その基本的な挙動を把握するために使用することができるが、その精度は、固体の導体巻線における交流損失が無視できない場合の制御パラメータ適合で、特に評価時において十分とはいえない。本ホワイトペーパーでは、交流損失を考慮したモータプラントモデルを紹介し、PMSMの最大効率制御における制御適合へ適用する。
2. 交流損失のモデリング
ここでは、固体の導体巻線を有するPMSMに着目する。PMSMの位相に対する電圧方程式は、(1)で示され、ここで\(V_i\)、\(R_i\)、\(I_i \)、および\(\phi_i\)は、それぞれ位相iの電圧、抵抗、電流および磁束鎖交である。(1)の右辺の第2項と並行して等価抵抗を追加することにより、鉄損を含めることができる。
交流損失を考慮するために、\(R_i\)は導体内の渦電流によって反作用を表すことができるCauer回路に置き換えた。Cauer回路におけるインダクタンスと抵抗は、解析的に計算した。
\(V_i = R_iI_i + \frac{d\phi_i}{dI_i}\) (1)
3. 制御適合事例:最大効率制御のための電流ベクトル適合
3.1 モータおよび制御仕様
図1、表1にモータ断面図と仕様を示す。図2に制御モデルを示す。電流ベクトルは、PI制御により制御される。指令値となる電流ベクトルは、適合作業により各動作点で効率が最大になるように選択される。
3.2 プラントモデル仕様
表2にプラントモデルの分解能を示す。鉄損の計算方法について説明する。プラントモデル生成時は、正弦波電流を与えて基本波および空間高調波成分を求める。制御・回路シミュレーションにおいては等価回路にて鉄損等価抵抗を用い、時間高調波鉄損を考慮する。精度比較のために基準としてFEAモデルと鉄損を考慮しないプラントモデルを用いた。後者は鉄損を考慮しない以外は分解能をそろえた。
図1 モータ断面図
表1 モータ仕様
極数/スロット数 | 8/48 |
コア材 | 35JA300 |
磁石 | NdFeB, Br=1.2 (T) |
出力 | 80 (kW) |
DC電圧 | 600 (V) |
最大電流値 | 250 (A) |
キャリア周波数 | 6 (kHz) |
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