[W-MB-181] JMAG-RT空間高調波モデルの精度検証 ~微分法モデル、積分法モデルとFEAとの比較~

目次
1. 概要
2. 微分法モデル、積分法モデルの特徴
3. 精度検証
 3.1 検証に用いたモータとLUTの作成
 3.2 スター結線、正弦波駆動、正常運転時での精度検証
 3.3 スター結線、正弦波駆動、W相断線時での精度検証
 3.4 スター結線、PWM駆動での精度検証
4. まとめ
5. 参考文献

1. 概要

JMAG-RTは、モータの非線形特性を表現できるモータモデルとして、SILを用いた制御回路設計やHIL上でのテスト等に利用されている。JMAG-RTでは種々のモータモデルを取り揃えているが、現在最も利用されているのはPMSMモータモデルである。特に、空間高調波モデルの2種(微分法モデル、積分法モデル)は、ステータ・スロット開口部等、モータの幾何学的特徴に起因する空間高調波を考慮する事ができる高精度なモータモデルである。本誌では、これら2つの空間高調波モデルを用いて、3相スター結線の条件の元、正弦波駆動の正常運転時、正弦波駆動のW相断線時、及び、PWM駆動時での数値実験を行い、その計算精度を示す。

2. 微分法モデル、積分法モデルの特徴

両モデルの違いは、その離散化手法にある。微分法モデルでは、一般座標系において微分形式で表現された3相の電圧方程式を、磁束及び微分インダクタンスの離散化方程式に帰着させ、それらをパッケージ化したルックアップテーブル(LUT)を参照しながら解く。LUTは、微細なモータ形状や材料の非線形特性、ステータ及びロータの相対位置を考慮してFEAを用いて算出されているので、これを用いて計算される電圧方程式はモータの詳細な挙動を表現する事ができる。一方の積分法モデルでは、3相の電圧方程式をDQ0軸上での方程式に変換する。その電圧方程式を時間積分して磁束の方程式に変換し、磁束のLUTを用いて未知変数である電流を陽的に計算する。磁束のLUTは、微分法で作成したLUTを逆変換することで予め準備しておく。

3. 精度検証

3.1 検証に用いたモータとLUTの作成

精度検証には、JMAGのHPにて入手できるJMAG-RTモータモデルRTML025(図1)を用い、3相スター結線の条件下で、正弦波駆動、正弦波駆動でW相断線、PWM駆動の試験を行う。正解を得るためのFEA計算、及び、LUTの作成には図2に示すメッシュ分割図、及び、図3に示すHB点列を用いた。12万要素を超えるメッシュ、また、2.7Tまでを257点で表現するHB点列は、2次元計算には過剰であるが、これは出来る限りの離散化誤差を取り除く為である。微分法のLUT作成における、電流振幅分解能は0~369Aまでを30点、電流位相分解能は0~360degを37点、機械角ピッチを0.46875degとした。積分法のLUTは、微分法で作成された電流、磁束のテーブルを逆変換することでJMAGが自動的に作成する。なお、今回の設定では、D軸磁束を40不等分割、Q軸磁束を40不等分割した磁束、電流テーブルを作成している。

図1 計算に用いたIPMモータ図1 計算に用いたIPMモータ

図2 計算に用いたメッシュ分割図(2次元、1/8モデル、要素数:122,513)図2 計算に用いたメッシュ分割図
(2次元、1/8モデル、要素数:122,513)

図3 計算に用いたHB点列(2.7Tまでを257点で表現)図3 計算に用いたHB点列
(2.7Tまでを257点で表現)

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