[W-TR-15] 均質化法に基づく変圧器遮蔽板の損失評価

目次
1. はじめに
2. 均質化法による変圧器の漂遊損失解析
 2-1. 均質化法に使用する電気抵抗率の探索
 2-2. 均質化法に基づく電力用変圧器の漂遊損失解析
3. まとめ

1. はじめに

電力用変圧器では巻線由来の漏れ磁束によって周囲の構造物に生じる漂遊損失がしばしば問題となる。特にタンクは人が直接触れる可能性があるため、タンク内部に遮蔽板を適切に配置するなどの対策が取られる。遮蔽板は電磁鋼板などの磁性体が使用されるケースが多く、これにより漏れ磁束は主に遮蔽板を磁路として通ることになる。この結果、タンクへ鎖交する漏れ磁束が抑えられ、タンクにおける発熱は大幅に低減されるだけでなく、遮蔽板を含めた漂遊損失全体の低減も期待される。
では、遮蔽板による損失低減効果は定量的にはどの程度になるのであろうか。変圧器全体に生じる漂遊損失は実測からも評価が可能であるが、遮蔽板の有無によるタンク漂遊損失の低下と遮蔽板における損失の発生など部品ごとの損失評価は有限要素解析(FEA)に基づく電磁界シミュレーションによる評価が必要となる。さらに損失の発生要因が事前検討の困難な漏れ磁束であることもシミュレーションの必要性を高めている。FEAに基づく電磁界シミュレーションは、メッシュモデルを通して解析対象をありのままにモデル化し、Maxwell方程式を適用することで高精度な解析を実現する。
FEAに基づく電磁界シミュレーションは、モデルの詳細度を上げることで必要なだけの詳細な解析が可能である。しかし変圧器内部の遮蔽板は、電磁鋼板を使用した場合、薄板の積層構造のため、変圧器全体の体格とのアスペクト比を考えると、鋼板内部の自由度も考慮したメッシュモデルは現実的な計算レベルではなくなってしまう。このため、何らかの近似的な扱いが必要になる。
本稿では遮蔽板の電磁鋼板を1枚ごとにモデル化するのではなく、磁気的、電気的に等価な材料に置き換えた均質化法を適用することで、現実的なメッシュモデルを提案し、解析を行ったので下記に報告する。

キーテクノロジー

  • 材料モデリング
    電磁鋼板に均質化法を適用する場合、磁化特性と電気特性は本来の値とは異なる実効的な値を設定する必要がある。JMAGは鋼板占積率の指定、電気抵抗率の異方性の指定が可能であり、均質化法を適用した材料モデリングが容易に行える。
  • メッシュ生成
    変圧器は遮蔽板だけでなく、タンク、クランプなど多くの薄板状の構造物から構成される。解析あたっては、薄板形状に渦電流を考慮したメッシュを生成する必要があるが、JMAGの自動メッシュ機能は、これらの構造物に適したメッシュを生成することができる。
  • 並列計算
    電力用変圧器は多数の部品から構成されるため、モデル規模が大きくなる傾向があり、数百万要素規模になることも珍しくない。JMAGの並列計算機能はこのような大規模モデルに適した高速な解析処理を実現する。

2. 均質化法による変圧器の漂遊損失解析

2-1. 均質化法に使用する電気抵抗率の探索

遮蔽板の渦電流損失解析に均質化法を適用するには、遮蔽板の実効的な電気抵抗率を求める必要がある。実効的な電気抵抗率を求めるには、遮蔽板を厳密にモデル化したレファレンスが必要となるが、変圧器の体格が非常に大きくメッシュの規模が膨大となるため、元のスケールでは求めることができない。
そこで図1に示す遮蔽板相当のブロックを配置した体格が26mm×22mm(1/8形状)の簡易形状に対して、このブロックを厳密積層化したモデル(厳密積層モデル、図1(a))と均質化法を適用したモデル(均質化法モデル図1(b))を用意し、均質化法モデルに生じる渦電流損失が厳密積層モデルのそれに等しくなるような電気抵抗率を探索計算により見出した。(続く)

電力用変圧器モデルのメッシュと遮蔽板部分を拡大した図電力用変圧器モデルのメッシュと遮蔽板部分を拡大した図

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