223 – 高回転時の応力を考慮したIPMモータの多目的最適化

アプリケーションノート・モデルデータ

概要

IPMモータには、永久磁石をロータ内に埋め込むと同時に、フラックスバリアを設けます。このフラックスバリアは磁石磁束が隣の磁極に流れるのを防ぎ、磁力を効率よくトルクに変換することを目的としています。そのため、隣の極への磁路の磁気抵抗を高めるため、ブリッジ部を薄くすることがトルク向上の観点から望まれます。しかしトルクを優先した設計を行うと、低回転では顕在化しなかったブリッジ部の強度の問題が高回転時の高い遠心力で破損等の形で現れることがあります。
高回転時に機械的な問題が起きないようにするには、トレードオフの関係にある高回転時の遠心力によって生じる応力とトルクの両特性を考慮して、高精度な設計を行う必要があります。その場合、精度面ではFEAが必須であり、トレードオフの問題を扱うツールとして遺伝的アルゴリズムを用いることが推奨されます。
ここでは、トルク特性(5,000(r/min))と高回転時(10,000(r/min))の遠心力による応力を目的関数とし、多目的遺伝的アルゴリズムによるロータ形状の設計を行った事例をご紹介します。

最適化条件

図1に設計変数を、表1にその範囲と評価項目を示します。ロータ形状の設計変数には6個を選択しています。ミーゼス応力とトルクへの影響が大きいと考えられる磁石の位置、磁石の形状、フラックスバリアの形状をパラメータとしています。
今回は、5,000(r/min)でトルクが高く、かつ10,000(r/min)で回転した時のロータ内のミーゼス応力が低い形状を得ることです。したがって2つの評価項目を使って、ロータ形状の性能評価を行います。

最適化結果

ミーゼス応力の最大値と平均トルクを目的関数とし、遺伝的アルゴリズムを用いて多目的最適化を行った結果を図2に示します。初期世代と10世代目の個体全体を比較してみると性能の改善が確認できます。また10世代目ではミーゼス応力とトルクの間にトレードオフの関係が見られます。
初期世代のケースの中で、ミーゼス応力が最小のケース①と平均トルクが最大のケース②に注目します。これら初期世代のケースと同程度の最大ミーゼス応力を持つ10世代目のケースの中から最大の平均トルクを持つケースA、Bを抽出し、表2に示します。それぞれ、最大ミーゼス応力はほぼ同じ値となりますが、平均トルクは①とAの間で約36%、②とBの間で約15%改善していることが確認できます。

ミーゼス応力分布

図2に示した形状A、Bのミーゼス応力分布を図3に示します。ブリッジ部が薄い形状(B)では、その箇所の応力が高い傾向にあることが確認できます。逆にブリッジ部が厚い形状(A)ではミーゼス応力が低く抑えられており、ブリッジの厚みを維持することがミーゼス応力を抑制するために有効であることが分かります。

ロータ内の磁束の流れ

図4に各形状の磁束密度分布と磁束線を示します。ブリッジ部が厚い形状(A)では、ブリッジ部を通って隣の磁極に磁束が流れ、トルクの低下を招いていると考えられます。一方スリットが薄い形状(B)では、ロータ内で短絡する磁束が抑制されてステータに流れるため、高いトルク値が得られています。

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