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概要

IPMモータの高回転時に機械的な問題が起きないようにするには、トレードオフの関係にある高回転時の遠心力によって生じる応力とトルクの両特性を考慮して、高精度な設計を行う必要があります。また、形状が変われば最大トルクが得られる位相が変わるため、それを考慮した最適化計算が必要です。その場合、精度面ではFEAが必須であり、トレードオフの問題を扱うツールとして遺伝的アルゴリズムを用いることが推奨されます。
ここでは、形状ごとに高トルクが得られる最適な電流位相を求め、その時のトルク特性(1,000(r/min))と高回転時(10,000(r/min))の遠心力による応力を目的関数とし、多目的遺伝的アルゴリズムによるロータ形状の最適化を行います。
ここでは、形状ごとに高トルクが得られる最適な電流位相を求め、その時のトルク特性(1,000(r/min))と高回転時(10,000(r/min))の遠心力による応力を目的関数とし、多目的遺伝的アルゴリズムによるロータ形状の最適化を行います。
最適化条件
図1に設計変数を、表1にその範囲と評価項目を示します。ロータ形状の設計変数には6個を選択しています。ミーゼス応力とトルクへの影響が大きいと考えられる磁石の位置、磁石の形状、フラックスバリアの形状をパラメータとしています。
今回は、5,000(r/min)でトルクが高く、かつ10,000(r/min)で回転した時のロータ内のミーゼス応力が低い形状を得ることです。したがって2つの評価項目を使って、ロータ形状の性能評価を行います。


最適化結果
ミーゼス応力の最大値と平均トルクを目的関数とし、遺伝的アルゴリズムを用いて多目的最適化を行った結果を図2に示します。初期世代と10世代目の個体全体を比較してみると性能の改善が確認できます。また10世代目ではミーゼス応力とトルクの間にトレードオフの関係が見られます。
初期世代の中で、ミーゼス応力が最小のケース①と平均トルクが最大のケース②に注目します。これら初期世代のケースと同程度の最大ミーゼス応力の10世代目のケースの中から最大の平均トルクを持つケースA、Bを抽出し、表2に示します。それぞれ、最大ミーゼス応力はほぼ同等となりますが、平均トルクは①とAの間で約93(%)、②とBの間で約16(%)改善していることが確認できます。


ロータの位相の選択

図3に各形状の位相とトルクのグラフを示します。トルク式より求めた最大位相形状により最大トルクを示す位相は異なることがわかります。トルク最大値を示す位相を赤で示します。
ロータ内の磁束の流れ

図4に各形状の磁束密度分布と磁束線を示します。ブリッジ部が厚い形状(A)では、ブリッジ部を通って隣の磁極に磁束が流れ、トルクの低下を招いていると考えられます。一方ブリッジ部が薄い形状(B)では、ロータ内で短絡する磁束が抑制されてステータに流れるため、高いトルク値が得られています。
ミーゼス応力分布

図5に形状A、Bのミーゼス応力分布を示します。ブリッジ部が薄い形状(B)では、その箇所の応力が高い傾向にあることが確認できます。逆にブリッジ部が厚い形状(A)ではミーゼス応力が低く抑えられており、ブリッジの厚みを維持することがミーゼス応力を抑制するために有効であることが分かります。