概要
シミュレーションを用いて最適化を行うことで、広大な設計空間で多数の設計案を自動探索し、最適設計案を得ることができます。JMAG-Expressでは搭載されているテンプレートを用いて、モータモデルの作成、最適化計算、設計案の評価を簡単かつ高速に行えます。用意されたシナリオを組み合わせることで、磁界、温度、応力を同時に考慮した最適化計算を実施できます。
ここでは、温度と応力を制約条件として、効率とトルクを最大化するような自動車用主機モータの寸法最適化を行います。
冷却仕様、設計要件、設計変数、最適化の目的
冷却仕様を表1、設計要件を表2、設計変数を図1、最適化の目的を表3に示します。
初期設計案
最適化を実行する前の初期設計案のコイルの平均温度履歴を図2、最大応力値と走行モードの平均効率を表4、効率マップを図3に示します。
図2、表4より、最大応力は200(MPa)以下、平均温度は電機子コイル、界磁コイルともに130(deg C)以下であり、要件を満たしています。
図3、表4より、初期設計案では最大トルクは350(Nm)、走行モードの平均効率は90.8(%)です。
最適化結果
図4より、初期設計よりも平均効率、最大トルクが改善されている設計案が確認できます。最大トルクが初期設計案と同程度で最も効率が良い設計案Aと、トルクが最大となる設計案Bを抽出して形状および結果を確認します。
設計案の比較
設計案Aおよび設計案Bの形状、部品の平均温度履歴を図5と図6、最大応力値を表5、設計案Aの効率マップを図7、初期設計案、設計案A、設計案Bの界磁コイルの面積、銅損、電流値を表6に示します。
図6、表5より、設計案A、Bどちらも、最大応力は200(MPa)以下、平均温度は電機子コイル、界磁コイルともに130(deg C)以下であり、要件を満たしています。
図7より、設計案Aでは初期設計案よりも高効率領域が広いことがわかります。これは図5、表6より、界磁コイルの面積が広くなったことで素線径を大きくすることができ、銅損が低下したためです。
図5より、ティース幅が初期設計案22.5(mm)に対して設計案Bは28.0(mm)と広くなりティースを通る磁束量が増えたことでトルクが大きくなったと考えられます。また、図5、表6より、設計案Bでは界磁コイルの面積が初期設計案よりも狭くなっています。そのため素線径は小さくなりますが、界磁コイルの電流を抑えられたことで銅損は低下しています。なお、銅損は低下したものの界磁コイルの面積が狭くなったことで、初期設計案よりも設計案Bの方が温度が高くなっています。