概要

オープン巻線モータシステムの1つである共通電源方式では、2台のインバータをつなぐバスと巻線の間で零相電流と呼ばれる還流が発生します。零相電流はトルクリップルや損失を増加させる要因になるため、2台のインバータでの駆動時には零相電流を考慮した制御を行う必要があります。
JMAGではオープン巻線モータに対して、磁気飽和性や空間高調波、零相電流を考慮したプラントモデル(JMAG-RTモータモデル)を生成することができます。このプラントモデルを制御/回路シミュレータに組み込むことにより、モータ特性とドライバの制御の両方を考慮した連携シミュレーションを行うことができます。
ここでは、オープン巻線モータの運転時に負荷の増加に対してインバータを1台駆動から2台駆動に切り替え、零相電流を抑制しつつ目標トルクに制御する回路シミュレーションを行います。
制御回路
制御回路の制御部を図1、回路部とモータを図2に示します。
電流振幅と電流位相を指令値とし、インバータを介して電圧指令値がモータに接続されています。
目標トルクは低負荷時として時刻0.03(sec)までを30(Nm)、高負荷時として時刻0.1(sec)以降を150(Nm)とします。
指令値は時刻0.03(sec)までの電流振幅を41.4(A)、電流位相を21.6(deg)、界磁電流を11.8(A)とし、時刻0.1(sec)以降の電流振幅を106.6(A)、電流位相を3.1(deg)、界磁電流を29.8(A)としています。
電流振幅と電流位相以外の制御パラメータは一定とします。
時刻0.05(sec)にインバータの駆動方式を1台駆動から2台駆動に切り替えます。


インバータ1台駆動
負荷の増加に対してインバータの切り替えを行わずにインバータ1台で駆動した場合の電流波形を図3、トルク波形を図4に示します。
低負荷時(~0.03(sec))には電流指令値どおりの電流が通電されておりトルクも目標値に到達していますが、負荷を増加すると0.05(sec)付近から電流値が電流指令値に追従できなくなり、トルクも目標値に到達していないことがわかります。


インバータ駆動数を切り替え
負荷を増加させた際にインバータを1台駆動から2台駆動に切り替えた場合の電流波形を図5、トルク波形を図6に示します。
電流値が電流指令値に追従しており、トルクも目標値に到達していることがわかります。これは、インバータを2台駆動とすることで印加電圧を増やすことができているためです。2台のインバータでの駆動時に零相電流が発生していますが、零相電流が0(A)程度となるよう制御されています。

