第5回 次世代の電磁界解析セミナー モータの高精度損失解析の実務への展開

開催概要

近年の日本を覆う環境問題、エネルギー問題は電気機器への省エネルギー要求をさらに厳しいものにしています。特にエネルギー消費の半分以上を占めるといわれるモータの高効率化には継続的な改善が期待されています。このような状況で高効率であることは付加価値ではなく必須条件となりつつあります。

モータの高効率化のために、大型機での長年の努力は言うに及ばず、中小型機に関してもHEVやエアコンを中心に20年ほど前から精力的な研究開発が続けられてきました。その結果として、モータおよびそのドライブ技術は長足の進歩を遂げました。

進歩の過程で、モータの設計開発にコンピュータを使った電磁界解析技術が取り込まれ、電磁界解析は先進的なモータ開発にはなくてはならない技術になりました。特に、損失評価や分析、損失を最小化させるための損失解析はモータの高効率化に大きく寄与しました。

ところがここに来て解析技術に課題が見えてきました。

モータが進化し、更なる損失の低減を要求されると、解析に求められる精度は格段に高まり、これまでの解析技術だけでは不十分な場面が出てきました。新しい解析技術が望まれています。

これに対し解析技術研究の分野では材料測定と組み合わせた新しい方法が開発され有効性が確認されつつあります。

本セミナーでは、それぞれの分野の第一人者を講師に招き、今後のモータ開発において損失解析への要求を示すとともに、現在開発されつつある最先端の損失解析・評価の方法について解説いただきます。また、解説を起点として今後の方向性についてディスカッションを行い方向性を見出す場としたいと思います。

JMAGユーザー様以外もご参加いただけます。

※定員がございますので、お早めにお申込み下さい。

概要

主催 株式会社JSOL
会期 2013年7月23日(火)13:30~20:00(13:00 受付開始)
※18:10より簡単な懇親会を予定しております。
会場 トラストシティカンファレンス・丸の内 (東京駅日本橋口直結)
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-8-1 丸の内トラストタワーN館3階
https://www.tcc-kaigishitsu.com/tcc-m/access.html 
定員 好評につき、増席! 定員200
対象者 効率および損失に関する実測と解析の同定に課題をお持ちの方
損失解析の高精度化に関心がある方
測定した材料特性を効果的に解析に反映する方法を知りたい方
最先端の損失解析技術に興味がある方
参加費 無料
申込〆切 開催日5営業日前
(定員に達した場合、締切らせていただくことがございます。)

お申し込み

入力フォーム、電子メールのいずれかの方法でお申し込みいただけます。
※同業他社及びその関係者の方は、お断りさせていただく場合がございます。予めご了承ください。
※記入された情報は本セミナーの運営、弊社からの情報提供以外には使用致しません。

2013年7月11日
【満員御礼】定員に達したため、受付を締め切らせていただきました。お申し込みありがとうございました。

講演プログラム

時間 プログラム
13:00~ 受付開始
13:30~13:40 開会の挨拶
13:40~14:20 これからのモータ開発と望まれる解析技術
芝浦工業大学 工学部 電気工学科 准教授
赤津 観 氏

2020年をターゲットとしたモータの開発動向とそれに伴う必要解析技術について述べる。背景には省エネ要求、レアメタル供給不安、新興国の台頭等によるモータ開発スピードの一層の高速化要求がある。一方で、開発対象は従来の永久磁石同期モータから多種多様なモータに移行しつつあり、かつ個別の解析内容も電磁界だけでなく応力、振動、熱、回路、制御等のmulti
physicsの解析が当たり前となってきた。このような背景のもと、2020年までのモータ開発ロードマップをベースに今後必要となるモータ開発およびそのモータ開発を行うための解析技術に焦点をあて、現状技術を認識した上での次世代電磁界解析技術を述べる。

14:20~15:00 磁性材料の特性評価とモデリング技術の進展
同志社大学 理工学部 電気工学科 教授
藤原 耕二 氏

電磁界シミュレーションのさらなる高精度化のためには、実機の運転状態を勘案した材料の特性評価、およびその結果に基づいたモデリング技術の構築が必要不可欠である。機器内の電磁界分布を決定する偏微分方程式の空間的および時間的な離散化(ただし、材料特性に関わる部分を除く)については、コンセンサスの取れた有益な手法が提案されているが、それに比べて、実測された材料特性をどのように表現し、如何にシミュレーションに取り組むかについては、各人各様の感が強く、まだまだ発展途上にあるように思われる。ここでは、電磁鋼板を主な検討対象として、磁気異方性やヒステリシス特性、応力依存性などの評価結果を示すとともに、それらが機器特性に与える影響について報告する。機器の高性能化・高効率化に向けて、電磁界シミュレーションを活用する方法を検討する際の一助になれば幸いである。

15:00~15:40 大規模損失解析の課題
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 電機システム技術部
米谷 晴之 氏

発電機の端部部材に発生する渦電流解析など、大型回転機における大規模損失解析の実例を示し、解析を行う上で必要となる解析システムの構築を示す。また、大規模解析を実用化するための問題点を示す。

15:40~16:00 休憩
16:00~16:40 PMモータにおける損失解析の実情と課題
ダイキン工業株式会社 環境技術研究所 主席研究員
山際 昭雄 氏
電気学会で提案されているIPMSMモデル、およびNEDOのLi-EADプロジェクトで実施したPMASynRMにおいて、JMAGを用いた損失解析の結果と実測との比較を行い、現状の損失解析レベルを紹介する。また、今後、実用面で必要となる損失解析の課題についても紹介する。
16:40~17:20 無方向性電磁鋼板の開発・利用技術の最新動向
JFEスチール株式会社 スチール研究所 電磁鋼板研究部 主任研究員
戸田 広朗 氏

近年、エネルギー効率利用の観点から、モータに対する高性能化・省エネルギー化の要求はますます厳しくなっており、鉄心材料である無方向性電磁鋼板にも更なる高性能化が求められている。本発表では、無方向性電磁鋼板の特徴と従来製品について述べた後、新規・高磁束密度材(JNPシリーズ)の磁気特性とそのモデル誘導モータへの適用・評価結果について報告する。
また、電磁鋼板は、コンプレッサー用モータなど、圧縮応力が付与された状態で使用される場合もあるが、圧縮応力下の鉄損は、無応力下に比べて大きく増加することが知られている。その鉄損劣化を抑制するには、電磁鋼板の磁歪低減が効果的であり、特に磁歪がゼロとなる6.5%Si鋼では圧縮応力付与による鉄損劣化が極めて小さいこと、また、鋼板表層のSi量が6.5%で、板厚方向にSi量分布を有するSi傾斜磁性材料でも圧縮応力下の鉄損劣化が非常に小さいことを述べる。

17:20~18:00 JMAGの高精度モータ損失解析へのロードマップ
株式会社JSOL
山田 隆電気電子機器の小型化・高効率化を達成するには、電磁界解析による損失の高精度な推定が必須となっています。
弊社JSOLでは、JMAG 1stバージョンのリリース以来30年、様々な技術開発を行いお客様の声に対応してまいりました。
特にモータに対する損失解析については、その技術開発にどこよりも早く取りくみ、Steinmetzの経験式を基にした鉄損計算ツールの提供、鉄損の材料DBの搭載、応力依存性を考慮した磁界・損失解析機能の提供など、多くのユーザー様にこれら機能を使用していただいてきました。
また同時に、回路・制御を考慮した損失解析手法を提案、実機モデルとの検証を通じてその有用性を示すことで、ユーザー様に利用技術も提供してまいりました。しかしながら、昨今の更なるモータの高性能化への要求に対しては、これまでの損失解析では不十分であり、いくつかの課題がクローズアップされるようになって来ました。例えば、ヒステリシスを考慮して鉄損計算精度を上げたい、上の鉄損ツールではエネルギー収支は保たれるのか?、誘導機のスキューを考慮するのは計算時間がかかりすぎてしまう、、、といった課題です。現在JSOLでは、損失高精度計算のためのこれら課題に対する取り組みとして、ヒステリシス材料データベースの搭載、回転機における渦電流損失・ヒステリシス損失の高速計算機能の開発、ロータスキューを有する回転機の高速計算、などの技術開発を続けております。
本セミナではこれら技術開発の一端ご紹介すると共に、損失高精度計算に対する開発ロードマップをお示しいたします。是非弊社の取り組みに対する皆様のご意見を頂戴したく思います。
18:00~18:05 閉会挨拶
18:10~19:50 懇親会

※講演内容は、都合により変更となる場合がございます。

セミナーへの思い

世界規模でエネルギー問題に多くの関心が寄せられており、エネルギー消費の多くを占める電気機器の高効率化要求が益々高まっています。一方で、高効率化つまりは低損失化の取り組みは今までも積極的になされてきており、コストを維持したまま損失を低減することは例え1%でも容易には成し得ない状況にあります。

この状況を打破するには何が必要なのでしょうか。ひとつは材料特性を活かし切ることだと考えました。

言うは易く行うは難し。材料特性を活かし切るためには関連する4分野の英知を結集する必要があること、その内の3分野は私たちでは力不足であることに気付きました。そこで、各分野を代表する講師の方々のご指導を頂きながら、最良の解析機能を開発し、皆さまに提供したいと考えました。

一つ目の分野は材料の振る舞いです。例えば電磁鋼板磁気特性のマイナーループを含めた挙動、温度依存性、周波数依存性、加工劣化による損失への影響を正しく把握することが必要です。これには精緻な測定装置、技術が必要です。この分野から同志社大学の藤原先生をお招きしています。

二つ目の分野はアプリケーション技術です。モータやトランスといった電気機器の特性を理解し、それに適した材料に適した加工を施し、適した場所に配置する必要があります。加えて、例えばモータがインバータで制御された事象についても理解する必要があります。これには、電気機器設計、制御の知識と経験が必要です。モータ開発の将来像を芝浦工業大学の赤津先生に描いて頂きつつ、大型回転機分野から三菱電機の米谷様、中型回転機分野からはダイキン工業の山際様をお招きしています。

三つ目の分野は材料の開発です。材料を活かしきるような製品設計が追究された結果、より詳細な細部への設計要求が明確になりました。実現には、材料を正しく測定・解析する技術と、材料を開発する技術が必要です。材料の分野からJFEスチールの戸田様をお招きしています。

最後に私たちJMAGは、測定・アプリケーション・材料と三者の関係を、解析技術の開発を行うことで橋渡しし、皆様にお届けします。今回「次世代の電磁界解析」と題し、現在の最新技術に関するレビュー、次のステップに向けたキックオフを、各分野の第一線で活躍されている方々をお招きし開催いたします。是非ご参加ください。

損失解析に関するJMAGの取り組み

電気機器の高効率化のために

損失解析は電磁界解析にとって10-15年の最重要課題のひとつでした。近年、その重要性は大きくなっています。

損失解析と言ってもその内実は、解析手法、材料モデリング、実測との比較など多角的な視点があり、課題によってアプローチが異なります。課題、求められる精度は時代によって変化し、電気機器の高効率化要求により詳細な現象の分析を高い精度で行うことが求められています。

高い要求に応えるには一夕の技術開発では難しく、長年の実績と試行錯誤が必要です。ここではJMAGがどのように損失解析というテーマに取り組んできたかをご紹介します。

材料データの重要性にいち早く着目し、機能搭載

2000年、横浜で第2回次世代の電磁界シミュレーションセミナーが開催されました。タイトルは「電磁界シミュレーションにおける材料モデリング」。材料メーカ様、大学の先生、電気、自動車メーカ様から材料モデリングの重要性と課題が提示されました。これが現在のJMAGの開発方針となって来ました。

同年にはJMAGに材料データが搭載されました。ソフトウェアに各社材料メーカの物性が搭載されるのはJMAGが初めてです。材料データが重要であることに異論はないと思いますが、実際に機能として搭載するためには材料メーカ様とのパッケージがあって初めて実現されるものでした。

詳細な損失解析を実用性高く提供

損失データがJMAGに搭載され鉄損解析が実用化されると、お客様からはさらに詳細な解析のご要望を受けるようになります。

その要望に対してJMAGは「解析ができる」というだけでなく「簡単にできる」実用性をもって提供してきました。例えば、損失特性の応力依存性考慮です。JMAGで構造解析を行なった応力を計算して詳細に影響を見ることも可能ですし、部品ごとに応力値を入力して簡単に影響を見ることもできます。また、高調波鉄損はJMAG-RTにより高精度モータモデルを用いて高調波電流を短時間に精度よく求めることができて初めて実用化した解析でした。スイッチングトランスの損失解析においては高調波電流による素線の表皮効果、近接効果が重要です。素線をモデル化すれば解析できることはわかっておりますが、このモデル化をJMAGは自動化します。このようにJMAGは詳細な損失解析を簡単に行えるように機能提供してきました。

数値検証、実測比較に裏付けられた解析手法の信頼性

モータが高効率化され、損失が低減されることは、解析にとって高い精度を求められることになります。

また高調波鉄損の影響など現象が複雑になると解析の精度を検証するのが難しくなります。JMAGは解析機能を提供するだけでなく、実機での検証を行い、モデル化の精緻に取り組んできました。また、磁石の高精度な渦電流損解析に必要なメッシュ生成技法などにも取り組んできました。その結果はメッシュ生成機能、解析機能、制御連携用の高精度モータモデルなど様々な機能に還元されてきました。

さらなる高精度損失解析に向けて

モータの高効率化はさらに進んでいます。同時に損失解析に求められる精度も格段に高まっています。

加工歪の影響、より精緻な材料データとその測定技術など新しい技術の実用化が求められています。第5回次世代の電磁界セミナーでは最新の損失解析技術をご紹介します。ぜひご参加ください。

損失解析に関するJMAGの取り組み年表

出来事
2000 鉄損解析ツール搭載
材料データベース搭載
第2回次世代の電磁界シミュレーションセミナー開催
「電磁界シミュレーションにおける材料モデリング」
2003 応力依存性の磁界・損失解析機能搭載
2004 制御・回路連携機能を用いた高調波鉄損の評価が可能になる (JMAG-RT)
2007 磁石渦電流解析の高精度メッシュモデリング

三村ほか、“永久磁石中の渦電流解析におけるメッシュ分割の影響について”,
SA-07-26, RM-07-26, 2007 [1] 三村ほか、“永久磁石中の渦電流解析におけるメッシュ分割の影響について(2)”,

SA-07-78, RM-07-94, 2007 [2]

スイッチングトランス用巻線交流損解析機能搭載
2008 制御・回路を考慮した損失解析 実機での精度検証

電気学会論文誌D(産業応用部門誌)
Vol. 131 (2011) No. 11 P 1309-1315
永久磁石同期機の磁界-制御/回路連成解析技術と損失評価
成田 一行1), 山田 隆1), 坂下 善行1), 赤津 観2)

2010 磁石渦電流損 高速解析機能搭載
JMAG-RTモデルに鉄損情報搭載

最少開催人数/開催中止について

お申し込みが2名に満たない場合は中止させていただく場合がございます。
また、講師の急病、事故、交通機関のストライキ、台風や地震等のため、やむを得ず休講または日程変更することがあります。予めご了承ください。
その際は改めてご連絡申し上げます。

キャンセルについて

準備の都合上、お申込みの取り消しはセミナー開催初日の5営業日前までとさせていただきます。

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