東洋大学 理工学部 電気電子情報工学科 電磁エネルギー変換デバイス研究室(羽根研究室)

 

革新的な研究に挑戦する
~歴史ある電気機器研究に新しい風を~

東海大学 工学部 電気電子工学科 大口研究室

羽根研究室は、2024年にスタートした新しい研究室です。
立ち上げ期ならではの自由度を活かし、学生が試行錯誤を通じて創意工夫できる研究環境が整えられています。
本稿では、研究室の取り組みの様子に加え、モータやトランスなどの電気機器におけるさらなる高効率化を目指した研究課題について、お話を伺いました。

先生の経歴を教えて下さい。

東北大学工学部卒業後、同大学博士前期・後期課程に進学し、2021年3月に博士後期課程を修了して助教に着任。学部から助教時代まで一貫して中村健二教授の研究室に所属。2024年4月に東洋大学理工学部へ移り、2025年4月より准教授として教育・研究に従事。主として電気機器の鉄損解析に関する研究を行っている。

先生の研究のテーマ、研究理念、概要を教えて下さい。

近年、地球環境保全や省エネルギーの観点から、太陽光・風力といった再生可能エネルギーの普及促進や、ガソリン車から電気自動車への移行に象徴される動力の電化が急速に進んでいます。 私の研究室では、こうした社会的要請に応えるため、モータやトランスをはじめとする電気機器の高効率化に関する研究に取り組むことで、地球環境問題やエネルギー問題の解決に貢献することを目指しています。

研究室のご紹介をお願いします。

2026年1月現在、大学院生(修士課程)3名、学部4年生9名、学部3年生(仮配属)3名が在籍しています。学生には共同の居室内に一人ひとり専用のデスクとPCを用意しており、そこで各自が研究活動に取り組んでいます。教員用の居室は別にありますが、私自身も学生居室にデスクを設け、可能な限りそこで過ごすようにしています。学生とは日常的に研究相談を行い、時には雑談を交えながら、気軽にコミュニケーションを取れる環境づくりを心がけています。
多くの学生は、JMAGを用いたPMモータやSRモータ、トランスなどの解析・設計を研究テーマとして取り組んでいますが、解析技術の高度化や実験に関するテーマに挑戦している学生もいます。私の研究室は2024年度に立ち上げたばかりで、PCやソフトウェアなどの解析環境は概ね整っている一方、実験環境はまだ発展途上の部分が多くあります。そのため、装置類はこちらで準備しつつ、実験に取り組む学生には一から実験システムを構築してもらうこともあります。大変な面もありますが、立ち上げ期ならではの自由度や創意工夫の余地が大きく、楽しさややりがいを感じられる環境だと思います。
また、 毎週研究室ゼミを開催しており、学生は2週に1回程度のペースで自身の研究進捗を発表します。ゼミでは、他の学生の発表に対して質問する時間を設けており、自分の研究テーマ以外にも理解を広げたり、議論する力を養ったりできるよう工夫しています。さらに、私自身も学生と同じペースで研究進捗を発表し、専門知識の習得やプレゼンテーション技術の向上に役立ててもらえるようにしています。

研究室の写真
研究室の写真
JMAGを利用している理由と研究内容について、もう少し詳しく教えて下さい。

上述のように、私の研究室の学生の多くはJMAGを活用して研究を進めています。JMAGを採用している理由として、材料データベースの充実度やモータ解析に特化した豊富な機能、そして学生でも習得しやすい操作性が挙げられます。特 に教育面では、電磁界解析による電気機器設計の基礎から実践的な検討まで一貫して学べる点が大きなメリットです。以下では、研究にJMAGを活用した事例をいくつかご紹介します。

① 自動車用モータの三次元解析による効率マップ評価
4年生の卒業研究テーマです。自動車用モータのさらなる高効率化を目指し、JMAGを用いた三次元解析によって効率マップを作成しました。ラジアルギャップ型IPMモータをベンチマークモデルとして、鉄心材料に無方向性ケイ素鋼板と圧粉磁心を用いた場合の比較を行いました。その結果、低速回転域では無方向性ケイ素鋼板の方が最大トルク・効率ともに優れる一方、高周波領域では低鉄損である圧粉磁心を用いた方が高速回転域では高効率となることが確認できました。今後は、圧粉磁心の特徴である高い形状自由度を活かし、3D-CADを用いた三次元鉄心設計に取り組み、大トルクかつ高効率なモータの開発を目指していきます。

(a) 無方向性ケイ素鋼板(a) 無方向性ケイ素鋼板

(b) 圧粉磁心(b) 圧粉磁心

図1 鉄心材料の違いによる効率マップの比較

② ステップラップ接合構造を有する電力用大容量トランス
4年生の卒業研究テーマです。電自動車用モータの三次元解析による効率マップ評価力用大容量トランスは、電磁鋼板の単板配置を段階的にずらしながら積層するステップラップ接合構造が一般的です。本研究では、接合部における電磁力や磁歪に起因する振動・騒音の低減を目的として、JMAGを用いた解析と小型実証器による実験の両面から検討を進めています。ギャップ長、重なり長、段数など接合部の幾何パラメータが振動・騒音に与える影響を評価し、最適な接合部設計の指針確立を目指していきます。

(a) 接合部の断面図(a) 接合部の断面図

(b) 解析モデル(1/4モデル)(b) 解析モデル(1/4モデル)

(c) 卒業生が製作した小型実証器(a) PMモータの外観(c) 卒業生が製作した小型実証器

図2 ステップラップ接合構造を有する電力用大容量トランス

ここからは、私が東北大学・中村研究室に所属していた際の研究成果の一部をご紹介します。
③ 電気機器の高速解析手法の開発
私自身の主たる研究テーマは、磁気回路法を発展させた解析手法であるリラクタンスネットワーク解析(RNA)による電気機器の高速解析手法の開発です。研究では、有限要素法(FEA)とRNAを目的に応じて使い分けることで、設計検討の幅を広げています。JMAGは、RNAの妥当性を確認する用途に加え、三次元の電磁界分布や非線形材料の挙動など、詳細な解析が必要な場面の参考情報としても用いています。
RNAは、各部の寸法や材料の磁気特性から求められる磁気抵抗および起磁力の素子を接続し、解析対象全体を一つの磁気回路網として表現します。FEAがメッシュ分割に基づき計算を行うのに対し、RNAはモデルが簡便で高速に計算できる点が特徴です。さらに、三次元解析、制御システムや運動方程式との連成解析も容易に実行できます。例えば、図3(c)に示すRNAモデルでは、解析時間はわずか15秒です 。このように、FEAとRNAを適切に併用することで、計算効率と解析の信頼性を両立しています。

(a) PMモータの外観(a) PMモータの外観

(b) JMAGのメッシュモデル(b) JMAGのメッシュモデル

(c) 従来RNAモデル(一極分)(c) 従来RNAモデル(一極分)

図3 PMモータの解析モデル

さらに私は、RNAを用いてモータの鉄損を高速かつ高精度に算定する手法を提案しました。鉄損を高精度に求めるためには、磁気ヒステリシス、表皮効果、異常損といった複雑な電磁現象のモデル化に加え、キャリア高調波を考慮するための時間ステップ数の増加が不可欠です。一般にFEAでは、鉄損解析は電磁界解析の後処理として実施されるため、直接計算には時間を要します。これに対し、私の提案手法では鉄損の直接計算を約60分という実用的な時間で実行でき、さらに解析結果と実験結果の誤差率はすべての解析点で10%未満と、高い精度を達成しました。なお、本研究成果をまとめた論文「Reluctance Network Model of IPM Motor Representing Dynamic Hysteresis Characteristics for High-Accuracy Iron Loss Calculation Considering Carrier Harmonics」は、日本磁気学会の論文賞を受賞しています。

(a) 提案RNAモデル(一極分)(a) 提案RNAモデル(一極分)

(b) 鉄損の解析結果(左:従来RNA & FEA、右:提案RNA)と実験結果の比較(b) 鉄損の解析結果(左:従来RNA & FEA、右:提案RNA)と実験結果の比較
図4 鉄損を高速かつ高精度に算定可能なPMモータのRNAモデル
(※実験結果は東北大学 中村研究室において測定)

現在、最も力を注いでいる研究について教えて下さい。

現在、私はRNAをモデルベース開発(MBD)へ適用することを目指して研究を進めています。現行のMBDでは、モータ単体の初期設計から詳細設計までをあらかじめFEAで行い、その結果を基にプラントモデルを構築してシステムシミュレーションを実施するのが一般的です。これに対して私は、RNAを活用することで、モータ単体の初期設計とシステム全体の設計を同時並行で進められないかと考えています。もし実現すれば、研究の検証サイクルを大幅に短縮でき、開発効率の向上による競争力の強化、さらにはより優れた製品の創出につながると期待しています。また、この研究は産業界との連携にも大きな可能性を持っており、RNAとJMAGを組み合わせた新しい設計フローの確立に向けて、企業との共同研究も積極的に進めていきたいと考えています。
一方で、現状の課題として、RNAで鉄損を高精度に算定する際の解析時間が約60分である点が挙げられます。この時間はモータ単体の初期設計であれば何とか活用できるレベルですが、システムシミュレーションに組み込むには依然として長く、さらなる高速化が必要だと考えています。

図5 RNAとFEAを組み合わせた新しい設計フロー
図5 RNAとFEAを組み合わせた新しい設計フロー

未来のエンジニア(学生の皆様)に向けてのメッセージをお願いいたします。

モータやトランスといった電気機器は、約200年の歴史を持ちながら現在も活発に研究が進められており、日々進化を続けていますが、それでもなお多くの技術的課題が残されている分野です。しかし裏を返せば、これから研究を始める皆さんにも、新しいアイデアを生み出し、それを形にする大きなチャンスがあるということでもあります。ぜひ、既存の枠にとらわれず革新的な研究に挑戦し、この分野に新しい風を吹き込んでくれることを期待しています。

この度は、インタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。

お話を伺った方

准教授
羽根 吉紀氏

研究室Webページ:
https://www.toyo.ac.jp/nyushi/undergraduate/sce/deec/laboratory/hane/ 

東洋大学
学校名
東洋大学
開学
1887(明治20)年
所在地
埼玉県川越市鯨井2100(川越キャンパス)
学長
矢口 悦子
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