目次
1. 概要
2. 効率マップ作成方法
2.1 直接FEA法
2.2 ルックアップテーブル(LUT)法
2.3 ROM法
3. 効率マップの比較
4. まとめ
1. 概要
効率マップを使用した評価はモータ開発に不可欠であり、その作成には測定を用いる代わりにFEAが広く使用されるようになった。これはFEAによるアプローチが、測定よりも時間が削減でき、またどの設計段階でも利用できるためである。モータの設計要求として高効率化が求められており、設計業務の大半を効率向上に費やしている。効率を厳密に評価する必要があるため、FEAを使用した場合でも高精度な効率マップが要求される。従来の方法は効率マップの作成時間を短縮するために、いくつかの簡略化がなされている。ただし、この方法では効率評価時の精度に問題が起きていた。これらの簡略化なしに効率マップを作成すれば、高効率モータの設計を評価するうえで十分に高精度な結果を得ることができる。本ホワイトペーパーでは、EVなどの高度なアプリケーションには、高精度な方法が必要であることを示す、3つの方法をPMSMで比較した。高精度の効率マップを作成するためには、簡略化なしのFEAに基づく高精度な方法が必要であることを示した。
2. 効率マップ作成方法
2.1 直接FEA法
この方法は効率マップを測定する場合と同じ手順を再現している。本手順では、まず各速度点の最大トルクを求め、次に表1に示すような最小損失を与える電流ベクトルを求める、二つのステップにより構成される。ここで用いたFEAは、シミュレーションにおいて電流ベクトル制御が正確に再現されるように、制御シミュレーションモデルとの連成解析として行った。表1に示すように、すべての損失が自動的にFEAに考慮されていることに留意されたい。
2.2 ルックアップテーブル(LUT)法
この方法では、電流ベクトルと速度の関数として電圧、損失、およびトルクを出力するルックアップテーブルを、正弦波電流を伴うFEAを用いて生成した。これらのルックアップテーブルを使用して、表1に示すように効率マップが作成される。
MPMEの電流ベクトルを推定するうえで、ルックアップテーブルが使用されるため、多量のFEA 計算を省略できる。
損失は、銅損、鉄損、交流損および磁石損の合計であり、それぞれ以下のように計算される。PWM 損失の近似値は、補正係数を介して含まれることになる。交流損失は、スロット開口部を通過する磁束によって誘起される巻線導体内の渦電流損失として、ギャップからの磁束とスロット内の漏れ磁束を無視して計算される。磁石損失計算については、渦電流損失は磁石への流入磁束の関数として計算される。
2.3 ROM法
上述の直接法は、膨大な数のFEA計算を必要とする。FEA計算のステップと時間コストを削減するために、FEAモデルは表1に示すように、次数低減モデル (ROM)に置き換えることができる。ROMは、FEAによって生成されるルックアップテーブルを伴う、一式の電圧方程式に基づく。これらのROMは、ECUの設計と試験のために高精度モデルが要求されるモデル・イン・ザ・ループ(MIL)シミュレーションと、ハードウェア・イン・ザ・ループ(HIL)シミュレーションで用いられてきた。
表1 効率マップ作成における3つの方法
直接法 | LUT法 | ROM法 | |
電流ベクトル推定 | 計測でも使用されてきた電流ベクトル制御を考慮した、パラメトリックFEA計算によって推定 | 正弦波電流を伴うFEAで求めたLUTから推定 | 計測でも使用されてきた、変化する電流ベクトルを考慮した、ROMによるパラメトリック解析によって推定 |
PWM鉄損 | FEAで計算 | 補正 | FEAで計算 |
交流損失 | FEAで計算 | 補正 | FEAで計算 |
磁石損失 | FEAで計算 | 補正 | FEAで計算 |
3. 効率マップの比較
図1および表2に仕様を示す永久磁石同期回転機について、直接法、LUT法、およびROM法の性能を比較する。制御方法は、最大出力/最大効率制御である。
図1 モータ形状
表2 モータ仕様
出力電力 | 80 (kW) |
極 | 8 |
スロット | 48 |
外径 | 212 (mm) |
スタック長 | 200 (mm) |
インバータ電圧 | 600 (V) |
インバータ最大電流 | 250 (A) |
キャリア周波数 | 6 (kHz) |
得られた効率マップとそれらの差を図2、図3に示す。ROM法と直接法の違いは、LUT法と直接法の違いに比べて相対的に小さい。これらの差は、中速、高トルク、および高速の領域で発生している。
(a) 直接法
(b) LUT法
(c) ROM法
図2 効率マップ
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