[W-SE-94] 三次元ソリッドモデルの自動メッシュ生成の速度改善

目次
1. 概要
2. 自動メッシュ生成の速度改善評価
 2.1 速度計測モデルについて
 2.2 並列性能評価
 2.3 モデルの複雑さと速度向上率の相関評価
 2.4 メッシュ生成速度の計測結果
3. まとめ
4. 参考文献

1. 概要

計算機の目覚ましい性能向上に後押しされ、磁界解析の大規模化が進んでいる。設計開発現場における、大規模解析をより短時間で行いたいというニーズに答えるため、JMAGには高性能並列ソルバが搭載されている。しかし、大規模解析の対象モデルは多数の部品や複雑な形状を含む場合が多く、CADデータからメッシュを生成する工程にかかる時間も増大している。そのため、ソルバの大幅な高速化に伴い、メッシュ生成時間が解析全体におけるボトルネックとなるケースが見受けられるようになってきた。さらに、解析過程において要素サイズの調整等のためにメッシュの切り直しが必要になるケースは非常に多く、メッシュ生成時間の増大はより深刻な問題となる。JMAGは解析全体の時間短縮を図るため、Ver.16.1以降、処理内容の見直しやマルチスレッド並列化により自動メッシュ生成の高速化に取り組んでいる。
本報告書では、Ver.16.1以降の自動メッシュ生成の速度改善についての評価結果を報告する。評価のために、磁界解析の様々なアプリケーションの具体的モデルに対して、Ver.16.0から最新版である18.0までの各バージョンでメッシュ生成時間の計測を行った。特にVer.16.0でメッシュ生成に非常に時間がかかる事例を中心に取り上げ、バージョンアップによってどの程度改善したのかを評価する。JMAGの自動メッシュ生成機能は、「セミオートメッシュ」と「積み上げメッシュ」の二通りの生成手法を搭載している。そのため、二手法それぞれの場合について速度計測を行った。計測に使用した計算機のスペックは、CPUがIntel® Xeon® E5-2697 v4でメインメモリ容量が64GBである。

2. 自動メッシュ生成の速度改善評価

2.1 速度計測モデルについて

CADデータからメッシュを生成するためには、データの異常や部品の接触の確認、インプリント、形状修正といった前処理が必要になる。大規模解析の対象モデルではこれらの前処理に長い時間を要するケースが多い。その原因として特に以下の二点が考えられる。
A) 部品数が多い。
B) スプライン曲面を多く含む。
Aについては、接触確認を行う組み合わせが部品数の二乗に比例して増えることから理解できる。CADにおいて、解析曲面で表現できない複雑な曲面はスプライン曲面で表される。スプライン曲面は平面や解析曲面に比べると接触確認等に複雑な処理を要するため、それを多く含むモデルデータの前処理には時間がかかってしまうことになる。この二つの観点から速度改善を評価するために、メッシュ生成速度の計測対象として表1の六つのモデルを選定した。モデル1とモデル2は発電機とモータのモデルである。モデル1はコイルエンドが詳細にモデリングされており部品数が多い。
モデル2は極数、スロット数が多いため、部品数も非常に多くなっている。表1に記載されているようにどちらも非常に多くのスプライン曲面を含んでいる。モデル3はトランスのモデルである。コイルがリッツ線で複雑な構造をしているためスプライン曲面を含んでいる。ソレノイド式インジェクタをモデリングしたものがモデル4である。このモデルはコイルを多数の素線で作成しているため部品数が多い。しかし、スプライン曲面は含まれずモデル全体が解析曲面で表されているため、これまでのモデルに比べると複雑性は低いと言える。モデル5はワイヤレス電力伝送装置のモデルである。これもコイルが多数の素線で作成されており部品数は多めだが、スプライン曲面は含まれない。クランクシャフトの高周波焼き入れのモデルがモデル6である。今回取り上げるモデルの中では最も部品数が少なく細かな部品もないため、短時間でのメッシュ生成が想定されるモデルである。(続く)

表1 計測モデル

モデル1
モデル1
モデル2
モデル2
モデル3
モデル3
モデルタイプ 45度モデル フルモデル 1/8モデル
部品数 288 1,024 50
面の数 10,552 7,360 208
スプライン曲面の数 4,756 4,800 96
メッシュタイプ スライド(回転) スライド(回転) スタンダード
自動ヒーリング なし あり あり
要素数
(積み上げメッシュ)
約270万
(約110万)
約710万
(約110万)
約310万
(約310万)
モデル4
モデル4
モデル5
モデル5
モデル6
モデル6
モデルタイプ フルモデル フルモデル フルモデル
部品数 503 77 16
面の数 528 91 188
スプライン曲面の数 0 0 0
メッシュタイプ スタンダード スタンダード スタンダード
自動ヒーリング あり あり あり
要素数
(積み上げメッシュ)
約220万
(約110万)
約110万
(約73万)
約150万
(約97万)
続きを読むには、サインインが必要です
こちらは会員限定コンテンツです。
『JMAGソフトウェア正規ユーザー(有償会員)』または『JMAG WEB MEMBER(無料会員)』でサインインが必要です。

『JMAG WEB MEMBER(無料会員)』へ登録することで、技術資料やそのほかの会員限定コンテンツを無料で閲覧できます。
登録されていない方は「新規会員登録」ボタンをクリックしてください。


新規会員登録 サインイン 


サインイン
新規会員登録(無料) JMAG WEBサイトの認証IDに関して

絞込み検索

  • カテゴリー 一覧