目次
1. はじめに
2. 表皮メッシュ生成の課題
3. 表皮厚さが要素サイズと同等以上であるケースの改善
4. 2方向の押し出しへの対応による改善
5. まとめ
6. 参考文献
1. はじめに
近年、電気機器の設計において、渦電流を考慮した有限要素法による電磁界解析は広く用いられている。例えば誘導加熱における発熱量を評価する際には渦電流を考慮することは必須であるし、モータやトランスの損失・効率、電磁弁の応答性を評価する場合も渦電流の影響は無視できない。これら渦電流を考慮した解析を行う上で、メッシュは非常に重要な役割を果たす。
渦電流は主に導体表面近傍を流れ、その大きさは表面から指数関数的に減少する。そのため、解析において渦電流を精度良く表現するためには、表皮厚さを見積もって表面近傍に層状の表皮メッシュを作成することが極めて効果的である。したがって渦電流解析を行う際には、解析者が指定した表皮厚さで確実に表皮メッシュを生成することが強く望まれる。そこで今般JMAG-Designerでも表皮メッシュ生成の確実性を上げるべく改善を行ったので、本資料でその内容を紹介する。
2. 表皮メッシュ生成の課題
JMAG-Designerのセミオートメッシュによる三次元表皮メッシュ生成は、四面体メッシュを生成した後、表皮メッシュ生成対象の境界面上の節点を内部に押し出すようにして層状要素を作成することで実現している。しかしこの手法では以下のような課題があり、設定や形状によっては指定通りに表皮メッシュを生成することができないケースがしばしば発生する。
A) 表皮厚さが要素サイズと比べて同程度、または、大きい場合に表皮メッシュ生成が不十分になりやすい。
- 図1(A)のように赤い境界面上の節点が要素サイズよりも大きく押し出される場合、境界面のすぐ内側にある内部節点との位置関係が問題となって要素が大きく歪んだり裏返ったりするため、表皮メッシュは指定通りに作成されない。
- 誘導加熱で内部の深いところまで渦電流による発熱が生じるために、表皮厚さを大きく設定するようなケースが該当する。
B) 部品間接触境界面などで2方向以上の押し出しが必要になる場合がある。
- 図1(B)のように赤い境界面上の節点を押し出す際、部品間接触境界面上の節点をその接触面に沿ってのみ押し出すと層状要素が大きく歪んでしまい、表皮メッシュは作成されない。
- 絶縁されていない複数の部品や、本来1つである部品を解析上分割して作成されているモデルに対して表皮メッシュを作成するケースが該当する。
C) 角部のように滑らかでない箇所で表皮メッシュ生成が不十分になりやすい。
- 図1(C)のように角部を挟んで両側の赤い境界面から節点が押し出される場合、表皮厚さ・押し出し方向によっては要素の大きな歪みや裏返りが生じ、指定通りに表皮メッシュが作成されない。
D) 表皮厚さに比べて局所的に形状寸法(エッジの長さ、面の幅、ソリッドの厚さなど)が十分大きくない箇所で表皮メッシュ生成が不十分になりやすい。
- 図1(D)のように水色の細長い面の両側の辺上の節点が押し出される場合も要素の大きな歪みや裏返りが生じやすく、指定通りに表皮メッシュを作成することが難しい。
- こうした小さな形状は、実際の設計図面に存在する場合以外にも、CADデータの処理中に意図せずできてしまうことがある。
これらの課題のうち、A)、B)2つに対して改善を施したので、3章、4章でそれぞれ解説する。
(続く)
クローポール型オルタネータの渦電流によるロータコアのジュール損失密度分布
左:モデル全体図、中:改善前の結果(拡大図)、右:改善後の結果(拡大図)
誘導加熱モデルの渦電流によるワークのジュール損失密度分布
左:モデル全体図、中:改善前の結果(拡大図)、右:改善後の結果(拡大図)
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