[W-SE-101] 並列計算によるモータ渦電流の詳細解析

目次
1. はじめに
2. 高速回転時のモータの渦電流解析での課題
3. 渦電流解析の課題の解決策
4. 高速回転時のモータの渦電流解析の事例
5. 並列計算による速度向上
6. まとめ
7. 参考文献

1. はじめに

占積率の向上やエンド部縮小による小型化のために角線を用いたヘアピンコイルを採用したモータが増えており、高速回転時のコイル素線内の電流偏りや交流銅損の見積もりが重要になってきている。高速回転時にはコイルに流れる電流が高周波化するだけではなく、コイルを鎖交するロータなどからの漏れ磁束の周波数も同様に増加するため、素線内の電流の偏りが顕著になり、損失の増加が懸念される。
また漏れ磁束やコイルエンドによりもたらされるコア端部での軸方向磁束は、面内の渦電流損失を生じるため、高速回転化に伴う損失増加が同様に懸念される。加えてプレスリングや磁石など渦電流を生じる部品は数多くあり、設計の段階でそれらの損失を精度よく評価し、問題がある場合は、事前に解決策を講じる必要が求められる。

2. 高速回転時のモータの渦電流解析での課題

高速回転時のモータの渦電流損失を求めるためには、低速回転時には無視できるほど小さかった部品の渦電流も大きく影響する可能性がある。そのため、渦電流が生じる部品は同時にモデル化し、各部品に対して渦電流を表現できるメッシュを生成する必要がある。たとえば、ステータの電磁鋼板には、ロータから渡ってくる軸方向磁束やコイルエンドから生じる軸方向磁束によって渦電流が面内方向に流れる[1]。前者は磁気回路だけでなく磁石やプレスリングの渦電流によって、後者はコイルエンド部の配置やコイル内の電流の偏りによって、軸方向の磁束の大きさや流れ方が変化する。
しかしこれまでのモータの渦電流損失解析では、モデル規模や計算時間の制約から、渦電流を考慮する部品を限定した解析が行われ、コイルごとや電磁鋼板ごとなどと解析を分けて計算することが主流である。
その場合、磁束の流れ方には他部品の渦電流による影響が考慮されておらず、実現象の磁束の流れ方から乖離が生じて近似を含んだ計算となってしまう。この場合、損失値の精度が低下することや、誤差が小さくとも実測との比較など精度の検証が必要となる問題が生じる。

3. 渦電流解析の課題の解決策

高速回転時の渦電流損を求めるために、磁性体だけでなく、導電性をもつ周囲の部品も渦電流を表現できるようモデル化した解析が必要となる。そこで今回は、素線形状やコイルエンド、プレスリング、端部の電磁鋼鈑をモデル化し、磁石の渦電流も同時に考慮して解析する。これにより、(続く)

各部品の渦電流を同時に解いたIPMモータの大規模モデル
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電磁鋼板の最表層のティース先端の渦電流分布
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