概要
JMAG-Expressでは搭載されているテンプレートを用いて、モータモデルの作成と設計案の評価を簡単かつ高速に評価できます。また、用意されたシナリオを組み合わせることで、磁気設計、熱設計、構造設計、電界設計を同時に行えます。
ここでは、モータ設計案に対して効率、部品温度、応力、絶縁破壊の有無を同時に評価し、要件を満たす設計案を探査します。
設計要件、設計変数
設計要件を表1、設計変数とするロータコアおよびコイル素線の寸法を図1、冷却仕様を表2に示します。
ロータコアのスリット深さ、素線寸法、クーリングジャケットの流速を設計変数とします。
初期設計案の評価
ロータコアのスリット深さを0.1(mm)、素線幅を3.5(mm)、素線高さを4.5(mm)、クーリングジャケットの流速を0.02(m/s)とした場合の効率マップ、部品の平均温度、最大応力位置、最大絶縁破壊係数位置を図2~図5、最大応力値と絶縁破壊係数を表3に示します。なお、応力は回転速度10,000(r/min)時、絶縁破壊係数は試験電圧5,000(V) を与えた際の結果を示しています。
図2より、最大トルクが要件の280(Nm)、定格点での効率が要件の95(%)を超えていることがわかります。
一方で、図3よりコイルの温度が130(deg C)、磁石の温度が100(deg C)、図4、図5および表3よりブリッジで最大応力が200(MPa)、絶縁紙で絶縁破壊係数が1を超えており、温度、応力、絶縁破壊の有無の観点で調整が必要であると判断できます。
設計案の調整
初期設計案の結果より、設計変数を調整します。
ここではロータコアのスリット深さを0.5(mm)、クーリングジャケットの流速を2(m/s)、素線高さを4(mm)、素線幅を3.4(mm)に変更して再評価を行います。
得られた効率マップ、部品の平均温度、最大応力位置、最大絶縁破壊係数位置を図6~図9、最大応力値を表4に示します。
図6より、最大トルクが要件の280(Nm)、定格点での効率が要件の95(%)を超えていることがわかります。
図7よりコイルの温度が130(deg C)以下、磁石の温度が100(deg C)以下、図8、図9および表4より最大応力が発生しているブリッジで応力が200(MPa)以下、絶縁破壊係数が最大となる絶縁紙で絶縁破壊係数が1未満となっており、調整後の設計案であれば要件を満たせることがわかります。