[JAC290] 部品温度、応力の評価を含めたIPMモータの設計探査

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概要

部品温度、応力、絶縁破壊の有無の評価を含めたIPMモータの設計探査
モータの初期設計段階において、磁気設計だけを行い後工程に進めると、部品温度や応力が要件を満たさないことや絶縁破壊を起こすことがわかり手戻りが発生することがあります。初期設計段階から磁気設計だけでなく熱、応力、絶縁破壊の有無含めて多面的に評価を行うことでそのような手戻りを削減できます。
JMAG-Expressでは搭載されているテンプレートを用いて、モータモデルの作成と設計案の評価を簡単かつ高速に評価できます。また、用意されたシナリオを組み合わせることで、磁気設計、熱設計、構造設計、電界設計を同時に行えます。
ここでは、モータ設計案に対して効率、部品温度、応力、絶縁破壊の有無を同時に評価し、要件を満たす設計案を探査します。

設計要件、設計変数

設計要件を表1、設計変数とするロータコアおよびコイル素線の寸法を図1、冷却仕様を表2に示します。
ロータコアのスリット深さ、素線寸法、クーリングジャケットの流速を設計変数とします。

表1 設計要件
図1 設計変数
表2 冷却仕様

初期設計案の評価

ロータコアのスリット深さを0.1(mm)、素線幅を3.5(mm)、素線高さを4.5(mm)、クーリングジャケットの流速を0.02(m/s)とした場合の効率マップ、部品の平均温度、最大応力位置、最大絶縁破壊係数位置を図2~図5、最大応力値と絶縁破壊係数を表3に示します。なお、応力は回転速度10,000(r/min)時、絶縁破壊係数は試験電圧5,000(V) を与えた際の結果を示しています。
図2より、最大トルクが要件の280(Nm)、定格点での効率が要件の95(%)を超えていることがわかります。
一方で、図3よりコイルの温度が130(deg C)、磁石の温度が100(deg C)、図4、図5および表3よりブリッジで最大応力が200(MPa)、絶縁紙で絶縁破壊係数が1を超えており、温度、応力、絶縁破壊の有無の観点で調整が必要であると判断できます。

図2 効率マップ(初期設計案)
図3 部品の平均温度(初期設計案)
図4 最大応力位置(初期設計案)
図5 最大絶縁破壊係数位置(初期設計案)
表3 最大応力値(初期設計案)

設計案の調整

初期設計案の結果より、設計変数を調整します。
ここではロータコアのスリット深さを0.5(mm)、クーリングジャケットの流速を2(m/s)、素線高さを4(mm)、素線幅を3.4(mm)に変更して再評価を行います。
得られた効率マップ、部品の平均温度、最大応力位置、最大絶縁破壊係数位置を図6~図9、最大応力値を表4に示します。
図6より、最大トルクが要件の280(Nm)、定格点での効率が要件の95(%)を超えていることがわかります。
図7よりコイルの温度が130(deg C)以下、磁石の温度が100(deg C)以下、図8、図9および表4より最大応力が発生しているブリッジで応力が200(MPa)以下、絶縁破壊係数が最大となる絶縁紙で絶縁破壊係数が1未満となっており、調整後の設計案であれば要件を満たせることがわかります。

図6 効率マップ(調整した設計案)
図7 部品の平均温度(調整した設計案)
図8 最大応力位置(調整した設計案)
図9 最大絶縁破壊係数位置(調整した設計案)
表4 最大応力値、最大絶縁破壊係数(調整した設計案)

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