概要

温度依存性を持つ効率マップを用いたシミュレーションでは、磁界と熱の影響を同時に反映させることで、連続運転を考慮したより現実的な効率マップを作成することが可能です。JMAGでは、冷媒温度の変化を考慮したクーリングジャケットや、スプレーと組み合わせたシャフト中心冷却など、多様な冷却モデルを用いて熱回路を構成できます。
ここでは、IPMモータを対象に、連続運転を考慮しつつ部品温度に制約を設けた効率マップの作成を行います。
解析フロー

磁界解析(効率マップ解析)では、コイルおよび磁石の温度の組み合わせに応じて、損失情報を含む複数の効率マップを生成します。
続く熱解析(連続運転特性解析)では、磁界解析(効率マップ解析)で得られた効率マップをもとに各動作点を割り当て、それぞれに対して熱定常解析を実施します。各動作点においては、熱定常解析を反復的に行うことで、磁界解析(効率マップ解析)で得られた部品の発熱量の温度依存性と、解析によって得られる定常温度との整合を図ります。このプロセスにより、連続運転を考慮した電流や損失などのマップが得られます。さらに、このマップに温度制約を設定することで、制約温度を超える動作点が除外され、温度制約を反映した連続運転時のNT特性や効率マップを得ることが可能になります。
連続運転特性
部品温度が60(deg C)の短時間運転時と、温度制約(コイル温度上限140(deg C)、磁石温度上限180(deg C))を考慮した連続運転時のN-Tカーブを図2に、効率マップを図3に示します。なお、連続運転時の冷媒流量は2(L/min)としています。
図2より、磁石温度の上昇によるトルク低下および温度制約の影響により、連続運転時のトルクが短時間運転時に比べて小さくなっていることが分かります。
図3より、短時間運転時に比べて連続運転時は最高効率が約0.6ポイント低下していることが確認できます。


冷媒の流量が連続運転特性にもたらす影響
冷媒の流量が異なる2つの水準(0.5および10(L/min))において、連続運転を考慮した効率マップを作成しました。コイルおよび磁石の温度に制約を加えた効率マップを図4に、コイル温度のマップを図5に、コイル銅損のマップを図6に示します。
図4より、冷媒の流量、すなわちモータの冷却能力が大きくなることで、連続運転時のトルクが増加していることが分かります。また、冷媒の流量が少ない(0.5(L/min))場合には、回転数の低下によりシャフト冷却の効果が低下する超低速領域でトルクが減少している様子が確認できます。
図5より、冷却能力の増大により、同一の動作点においてコイル温度がより低く抑えられていることが分かります。また、冷媒の流量に関わらず、N-Tカーブの外縁付近ではコイル温度が制約値に近づいています。これにより、冷媒流量の増加によって冷却能力が向上し、温度が低下したことで制約から解放された領域が拡大していることが読み取れます。
図6より、冷媒の流量が多い(10(L/min))場合には、少ない(0.5(L/min))場合に比べ、より大きなコイル銅損を伴う動作点がマップ上に現れていることが分かります。これは、冷却能力の向上により、発熱量の大きい動作点においても温度制約内での運転が可能となっていることを示しています。


