目次
1. 背景
2. 鋼板内における物理現象とシミュレーションによる再現
3. プレイモデル+1D法によりモータ鋼板内の物理現象を読み解く
4. まとめ
5. 参考文献
1. 背景
これまでの鉄損評価における実測と解析との議論では、損失総量に対して、どの程度の一致がみられるかに焦点があてられていた。しかし高効率モータの登場によって損失評価技術の重要性が認識されるようになると、解析による評価も損失総量を見るだけでなく、コアに生じる物理現象の詳細な分析を通して損失の発生メカニズムを理解し、材料設計に反映させる動きが見られるようになった。それに伴い、解析手法にも大きな変化がもたらされた。その特徴は、これまでのエプスタイン試験結果を基礎とした解析手法から、損失データに依存しない、より原理的な解析手法(以下プレイモデル+1D法)が注目されるようになったことである(図1)。
プレイモデル+1D法は、材料の持つ磁化特性と電気特性に基づいて磁場と渦電流場を計算するため、最終的な損失結果だけでなく、損失結果を与える磁場や渦電流の詳細な分布を同時に提供することができる。
以上のような損失解析技術の進展を背景として、最新版のJMAGでは鋼板内のBH履歴、渦電流、損失分布の詳細を確認できる分析機能を搭載している。
ここでは、JMAGの最新の分析機能によるプレイモデル+1D法の解析結果の確認を通して、シミュレーションにより鋼板内の詳細な物理現象を捉えることができることを紹介する。
図1 プレイモデルに使用する磁化特性例(左)と鋼板内の渦電流イメージ(右)
2. 鋼板内における物理現象とシミュレーションによる再現
現実の鋼板内で生じている磁気的、電気的な現象には互いに強い相関があり、非常に複雑である。鋼板内の渦電流の積層方向の分布は、鋼板内での還流のため、鋼板中央でゼロを横切って逆向きに増加し、対向する鋼板表面でピークを採る点対称分布となる(図2)。また渦電流は、二次的な場である誘導場を生じるため、BH履歴に大きく影響を与える。この結果、BH履歴も積層方向に分布を持つ。磁気飽和による透磁率の低下は、表皮厚さの増大をもたらすため、実効的な電気伝導率が増加する(図3)。このため、同一の周波数であっても磁気飽和が大きくなると渦電流損失が増加する。
損失データをベースにした従来法による解析では、動作点ごとの両者の相互作用を考慮した損失解析は不可能である。プレイモデル+1D法による解析手法は、駆動条件に依らない両者の相互作用を考慮した解析を実現するため、損失だけでなく、鋼板内の詳細な物理現象を確認することが可能になる。(続く)
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