目次
1. 概要
2. 断線異常検知とフェールセーフ機能
3. モータおよび制御仕様
4. 断線条件と検証条件
5. プラントモデル
6. 検証結果
7. まとめ
1. 概要
モータの多相化が進み、システムの冗長性をもたせることでフェールセーフ機能を実現できるようになってきた。3相を2重化した6相モータもその例であるが、6相モータは2つの3相巻線の磁気回路が結合しているため3相間で相互干渉が生じる。そのため断線時のフェールセーフ機能がはたらくかどうかは相互干渉の影響を考慮する必要がある。
直接6相巻線をモデル化せず3相空間高調波モデルにバイアス3相交流電流を付加することで6相モータの挙動を再現することは可能である。しかし、相互干渉が強い動作点では断線の誤検知を招く恐れがあり断線時の異常検知検証のためには6相空間高調波モデルが必要となる。
2. 断線異常検知とフェールセーフ機能
電源を2系統有する6相モータは冗長性をもつことで1つ目の系統に異常が生じても動作し続けることができるフェールセーフ化を実現している。しかし、2系統ともに異常が検知された場合はモータを停止する機構がはたらく。異常系のECU機能検証として1系統に異常が検知された際にフェールセーフがはたらくのかどうかを検証する必要がある。
プラントモデルを考えたときに2重3相化した6相モータのモデル化には2つ方法がある。一つは6相コイルの自己・相互インダクタンスを考慮したモデルである(6相空間高調波モデル)。これは2つの3相間の相互干渉を考慮するメリットがあるが6相のインダクタンスマトリクスをもつためプラントモデル生成のための計算量が多い。
もう一つは3相モータを2つ用意して6相を表現することである(3相バイアス空間高調波モデル)。このメリットはプラントモデルとしては3相コイルのみをモデル化するため6相に比べてプラントモデル生成のための計算量が少ない。しかし、2つの3相間の相互干渉は考慮されない。モータ内部の磁気飽和については3相モータにもう一つ3相コイルを追加し負荷に合わせて交流電流をかけることで考慮する。この負荷的な交流電流は3相のモータプラントモデル生成時にはバイアス成分として扱われるため計算量を増やすことがない。
ここではこの2つのプラントモデルを用いて6相モータの断線検知とフェールセーフ機能を検証するために必要なプラントモデル精度を示す。
3. モータおよび制御仕様
図1、表1にモータ仕様を示す。図2に制御モデルを示している。2つの電源系統をもち、それぞれPI制御により電流ベクトルが制御される。
図1 モータ断面図
表1 モータ仕様
極数/スロット数 | 8/48 |
コア材 | 35JN270 |
DC電圧 | 600 (V) |
最大電流値 | 250 (A) |
キャリア周波数 | 10 (kHz) |
図2 制御モデル
4. 断線条件と検証条件
検証は回転数3,000rpm、電流振幅10Aおよび120A(ともに電流位相は36deg)の2つの動作点で行った。断線条件は、系統2のインバータU相下アーム(図2赤丸)がモータ駆動開始0.028secで断線することとした。
断線検知の検証を行うためのワークフローについて(続く)
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