ベルン応用科学大学

三次元解析を視野にJMAGを導入

ベルン応用科学大学のPMモータ専門チームは、高トルク、高出力密度のPM同期機を研究対象として注目しています。JMAGを利用することで、設計段階で高い精度で性能や損失を見積もることが可能となります。2008年以来、当グループは三次元FEAの利用を開始し、二重エアギャップモータのような特殊形状モータの設計において成果を挙げたり、様々なタイプの巻き取り装置の影響の予測をしています。

ベルン応用科学大学
産業エレクトロニクス学部教授
Andrea Vezzini氏

ベルン応用科学大学

ベルン応用科学大学の産業エレクトロニクス学部は、同大学の6つの学部の中では最大規模の学部です。同学部はスイスが参加しているボローニャプロセスという大学改革制度の導入を受けて1997年に創立されました。それ以前は、独立したエンジニアリング単科大学で、エンジニアリング分野において100年以上の教育実績がありました。ベルン応用科学大学は、その応用研究開発の名だたる成果に加えて、産業界との協力関係により、独自ランキングではスイスの応用科学大学の中で最高レベルに位置しています。同大学は、スイスにある全ての応用科学大学の中で政府および外部からの資金援助において最も高いシェアを持つ大学のひとつであり、その研究活動が国際的に評価され、多数の賞を受賞しています。
2012年には、同大学は外部からの資金援助を元に280を超える研究プログラムを実施しています。そのうち、45プログラムはスイス技術革新促進庁と共同で、19プログラムは各大学やスイス国立基金(SNF)と共同で、また4プログラムは欧州の研究開発の枠内で活動していました。

PMモータ(永久磁石同期モータ)専門チーム

1996年以来、Andrea Vezzini教授率いるPMモータ専門チームはPMモータと関連するパワーエレクトロニクス分野を中心に研究しています。この間、同チームは産業界との密接な協力関係のもとに活動し、2001年には電動モータグライダー用駆動装置の初の商業化に成功しました。この功績が認められ”スイス技術大賞”を受賞しています。
このチームは4人の教授を擁し、彼らの専門分野は電機機器設計に必要な電磁気設計およびシミュレーション、機械工学(CAD)、計算流体力学(CFD)の分野を全て網羅しています。

PMモータ設計授業でJMAGを利用

Vezzini教授は毎年スイスで工学の修士課程の学生を対象に、”PMモータの設計とシミュレーション”と題した3日間のゼミを行っています。
このゼミでは有限要素解析を用いた電気機器設計においてキーとなるポイントについての講義が行われます。この中には、電磁力計算の基礎知識に加えて、電気機器の寸法決定における最も重要なポイントも示されます。
講義の期間中に学生たちは、下記のテーマを学びます。

  • 電磁エネルギー変換の基礎(磁界、場の方程式、電磁力、トルク、電磁エネルギー)
  • 電磁界解析概論と電磁界に特化した有限要素法による数値解析、JMAGの基礎
  • 課題: 磁気回路(パーミアンス法、有限要素法)
  • 数値解法の応用問題: モデリング、パラメータの選定、適切な計算手法の選択、離散化
  • 電気機器およびアクチュエータにおける数値法の応用手順: GM, ASM, PSM, SRM およびアクチュエータ
  • 課題: 有限要素法によるPMモータの磁気回路および性能評価
  • 有限要素法を用いたコギングトルク、負荷トルク解析

講義は実習形式で行っており、数週間に渡って学生がチームを組んでJMAGを操作します。中にはFEAソフトを初めて使う学生もいますが、ほとんどの場合JMAGを使いこなすまでに多くの時間はかかりません。理由は、直感的で分かりやすいユーザーインターフェイス、パワフルなポスト処理、セルフラーニングシステムにあります。
実はJMAG導入以前にも電磁界解析ソフトを保有していたとのことですが、当時はソフトの性能から二次元解析、しかも静磁界解析しか行えなかったそうです。その後、解析精度をレベルアップする必要性から、幾つかのソフトの選定を行い、結果JMAGを導入することになりました。理由は、三次元過渡解析が精度よく高速に行えること、加えて操作が直感的で使いやすいからとの事です。この決断が、後述するプロジェクトの成功にも結びついています。

JMAGを用いた3つの研究分野への取り組み

Vezzini教授率いるPMモータ専門チームは、”再生可能エネルギー”、”多様な環境に適した移動手段”、”新興国や発展途上国との持続的開発協力体制への取り組み”、の3つの研究分野に取り組んでいます(図1)。

図1 3つの研究分野

PMモータ専門チームがその研究活動の中心においているのが、次の2分野です。

  • 超小型軽量高性能モータ
  • 高効率PMモータ

電動モータグライダーANTARES

研究分野の一例としては、電動モータグライダーANTARES(独Lange Aviation社)用PMモータがあります(図2)。
2001年にPMモータ専門チームは、このPMモータで発明賞を受賞しました。このモータは初の商用電動グライダー用で、自己始動が可能です。

図2 電動モータグライダー ANTARES

pmモータの特徴

電動モータグライダー用PMモータの特徴を以下に示します。

  • アウターロータ構造を採用し、相電圧波形が適切になるよう設計する事で高トルク密度を実現
  • 低速(1,500rpm)時に高トルク(250Nm)と高効率(92%)を実現、かつ軽量(28.5kg)
  • 完全一体型のロータ設計。ロータはプロペラと直結され一体で駆動される
  • 大径ロータにより、空冷にも関わらず負荷100%時で10分間の動作が可能
  • このモータはServax Landert Motoren AGにより製品化された

当時のモータ設計には設計ツールと静磁界計算用の二次元FEAソフトが使われていました。
2012年にPMモータ専門チームは、新世代の電動グライダー用モータの開発を新たに受注しました。チームはLange Aviation社の電動グライダーから経験を積んでいましたが、運転時間の延長とさらなるトルク密度の向上という要求に直面しました。
この要求を解決するために、三次元電磁界解析による検討を重ね、最終的には非常に高トルク密度を持つダブルステータ型PM機を設計することが出来ました。本構造の採用により、冷却効果の向上に加えて、2つの独立型インバータの使用が可能なったことで、システム冗長性による信頼性確保と、中負荷時でも高効率運転が出来るようになりました。

集中巻と分布巻の比較

巻線方式として、分布巻と集中巻の比較を行いました(図3)。モジュラ型集中巻の採用により、コイルエンドの高さの大幅な低減を可能にしています。また、分数スロットを採用することで総スロット数を削減しています。

図3 分布巻(左)と集中巻(右)

モータおよびモータドライブ仕様

下記の表1に、この機器用に決定したパラメータを示します。図4はモータ内部の磁束密度分布を示しています。

表1 モータおよびモータドライブ仕様

図4 磁束密度分布

損失計算

損失計算は発熱量や昇温を評価する上で重要です(表2と図5)。損失が少なければ、使用する材料が少なくできるので軽量化につながります。損失計算で最も重要な要素は、実機に即した材料データの設定でした。(例: 積層一枚での磁気特性と積層した状態での磁気特性の違いの考慮)

表2 入出力と各損失

p style=”text-align: center;”>図5 永久磁石とロータ表面の渦電流

熱解析

熱解析により各部品の温度と温度分布を評価されています(図6, 図7と表3)。温度を可視化することで熱の流れと冷却システムの検討ができます。


図6 温度分布


図7 各部温度の時刻暦

表3 各部の平均温度(20分後)

まとめ

Vezzini教授から”三次元電磁界解析を行ったことで性能と損失予測の精度が向上した”と仰っていただけました。また、”JMAGの計算速度の速さに加えて今日のハードウェアのさらなる強化により、三次元解析はより身近なものになっている”とのことです。微力ではありますが、Vezzini教授の取り組みに、JMAGは貢献していきたいと考えています。

ベルン応用科学大学
電子コミュニケーションエンジニアリング学部
Quellgasse 21, CH-2501 Biel/Bienne ; Switzerland
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[JMAG Newsletter 2013年9月号より]