[W-MA-100] 高精度損失評価のための電磁鋼板詳細解析手法のご紹介

目次
1. 電磁鋼板の詳細解析の必要性
 1.1 電磁鋼板内の渦電流分布の考慮
 1.2 電磁鋼板の磁気ヒステリシスの考慮
2. 鋼板詳細解析のための手法
3. 鋼板詳細解析による損失評価
4. まとめと今後
5. 参考文献

1. 電磁鋼板の詳細解析の必要性

電磁鋼板は電気機器の動作に際し重要な役割を担っており、その性能を左右する重要な要素の1つである。近年では、電気機器設計の高度化により高精度な損失評価が求められており、電磁鋼板の詳細解析の重要性は増してきているといえる。
電磁鋼板の損失評価の高精度化においては様々な手法が提案されており、磁界解析を行った後に、磁界解析で得られた磁束密度波形を用いて後処理として鉄損解析を行う手法が普及している。一方で、解析対象によっては渦電流による反磁界や磁気特性のヒステリシス性の考慮が必要なことがある。ここでは、簡単な例題を用い、磁界解析中に渦電流や磁気ヒステリシスを考慮することの意義を考える。解析対象は図1に示すような厚さ0.5[mm]、50A470相当の特性を持つ1枚の電磁鋼板とする。電磁鋼板には図に示すようにコイルが巻かれており、コイルに電流を流した場合に、鋼板内部で発生するヒステリシス損失と渦電流損失を評価する。


図1 電磁鋼板モデル

1.1 電磁鋼板内の渦電流分布の考慮

まず、渦電流の影響に焦点を当てるため、表1に示す4通りの計算を実施し、ヒステリシス損失と渦電流損失をそれぞれ求めた。渦電流考慮ありの場合の渦電流損失値は、図1の電磁鋼板内部の渦電流分布を捕らえられるように電磁鋼板部のメッシュ分割を行い磁界解析中に計算した。それ以外の場合の損失値は、磁界解析で得られた磁束密度波形をもとに後処理で過渡的に算出した 。ここでは渦電流の影響調査に焦点を絞るため、磁界解析では初磁化(直流磁化)曲線を用い、磁気ヒステリシスは考慮していない。以降、磁界解析中に鋼板内の渦電流を考慮しないで求めたケース1, 3の損失値が、考慮して求めたケース2, 4の値からどれほど乖離するかを確認する。

表1 渦電流の影響調査のための計算ケース

磁界解析中の渦電流考慮 コイル電流の周波数
ケース1 なし 50[Hz]
ケース2 あり 50[Hz]
ケース3 なし 1[kHz]
ケース4 あり 1[kHz]

最初にコイル電流50[Hz]の場合について考察する。ケース1とケース2の結果の対比を図2に示す。ケース1のケース2に対する相対誤差は、ヒステリシス損失、渦電流損失、それらの合計値の順にそれぞれ0.4%、3.7%、1.4%であった。これより、この場合には磁界解析で渦電流を考慮しなくても一定の精度で損失を求めることができているといえる。


図2 ケース1とケース2の結果の対比(左:ヒステリシス損失、右:渦電流損失)

次にコイル電流1[kHz]の場合について考察する。ケース3とケース4の結果の対比を図3に示す。コイル電流50[Hz]の場合と比べると渦電流の影響が大きく、ケース3で得られた損失値はケース4の数倍過大という結果になった。この原因を調べるために、両ケースでの磁束密度波形を図4に示す。ケース3では渦電流の影響を考慮しなかったためにケース4と比べて鋼板内の平均磁束密度振幅が大きいことがわかる(図4左)。ただし平均磁束密度振幅の大小がケース3, 4の損失値の大小につながったと考えるのはまだ早い。ケース4で得られた鋼板内の磁束密度分布を図4右に示す。凡例には鋼板表面からの深さを示す。磁束は鋼板表面に偏って通っていることが確認できるが、最も多くの磁束が通る鋼板表面においても磁束密度の値は高々ケース3における値程度となっていることがわかる。これによりケース3の損失値がケース4より大きくなったことの説明がつく。今回の例では磁界解析中に渦電流を考慮しないと損失値が大きく見積もられるという結果だったが、鋼板内の磁束密度の偏りの程度によっては小さく見積もられることも考えられるので、状況に応じた考察が必要である。


図3 ケース3とケース4の結果の対比(左:ヒステリシス損失、右:渦電流損失)

図4 ケース3とケース4の磁束密度波形の対比(左:鋼板内平均、右:鋼板内分布)

(続く)

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