[W-MA-47] 応力を考慮した鉄損解析が実用段階に

目次
1. 応力を考慮する背景
2. JMAGによる応力を考慮した鉄損計算のアプローチ
3. 課題
4. 実例
5. まとめ
6. 参考文献

1. 応力を考慮する背景

電磁界解析において鉄損解析の精度向上が課題となっている。従来の鉄損の計算方法では、あらかじめエプスタイン法等で測定した電磁鋼板の素材の鉄損特性より機器の鉄損を推定している。しかし、実際の電気機器に組み込まれた電磁鋼板では様々な要因より素材の鉄損よりも増加することが知られている。その要因の1つとして応力があげられる。図1に電磁鋼板の鉄損が応力によってどのような影響を受けるか例を示す。実機に組み込まれた電磁鋼板はフレームの焼嵌/圧入、かしめ/溶接/ボルト締めによる積層の固定、温度分布(熱応力)などによって応力を受けている。例えばモータのステータコアをフレームに圧入することによって生じる圧縮応力を構造解析で解析した結果を図2に示す。バックヨーク部分では30MPa以上の圧縮応力が印可されており、図1の増加率から考えると鉄損に及ぼす影響は大きく、無視できない要因であることがわかる。信頼性の高い損失評価のためには応力の影響を考慮する必要がある。

(a) 圧縮応力
(a) 圧縮応力

(b) 引張応力
(b) 引張応力

図1 応力による鉄損への影響(35A360)
圧縮応力の影響が大きく、数十MPa程度の圧縮応力で鉄損は2倍以上に増加する

図2 ステータコアにフレームを圧入した場合の圧縮応力
図2 ステータコアにフレームを圧入した場合の圧縮応力
値が小さい(負値で絶対値が大きい)ほど強い圧縮応力が働いている
スロット底部で最も強く、バックヨーク部分にも生じている

2. JMAGによる応力を考慮した鉄損計算のアプローチ

電磁界解析および構造解析を用いた応力を考慮した鉄損計算の手順を図3に示す[2]。

  1. 構造解析で応力分布を求める。
    焼嵌/圧入、かしめ/溶接/ボルト締め、温度分布などによる応力を計算する
  2. 応力依存性の磁化特性(B-Hカーブ)を設定する。
    鉄損と同様、磁化特性(B-Hカーブ)も応力によって影響を受けるため、応力によって場が変化する。図4に示すような応力ごとのB-Hカーブを設定する。
  3. 1.で求めた応力分布を磁界解析にマッピングし、磁界解析を実行する
  4. 鉄損計算に応力の影響を反映させる

図1に示したように圧縮応力か引張応力かで影響が異なる。そのため、図5に示すように磁界解析で求まった磁束密度を主応力Ⅰ(引張応力)と主応力Ⅲ(圧縮応力)の方向に分離し、それぞれの方向ごとに応力を考慮した鉄損の評価を行い、足し合わせて全鉄損として評価する。(続く)

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