目次
- 概要
- ECU機能検証とプラントモデルに求められる精度
- モータ仕様
- プラントモデル仕様
- トルク制御検証
- 速度制御の応答性検証
- 瞬断判定検証
- まとめ
1. 概要
ECU機能検証は正常系から異常系まで様々な条件下で行われる。またモータの駆動状態としてもトルク、回転数ともに幅広い領域で検証が行われる。通常、ECU機能検証では空間高調波を考慮しないDQモデルが活用されることが多い。しかし、モータの小型化・高出力化で設計のマージンが小さくなる、もしくは高い応答性を目指してゲイン調整が行われるような場合、プラントモデルの精度が十分でなく検証を誤判定してしまうリスクがある。このホワイトペーパーではECU機能検証に必要なプラントモデルの精度について解説し、事例を示す。定常トルク制御での電圧制限の考慮、速度制御における負荷ステップ応答、瞬断判定で空間高調波の影響を考慮する必要性を示した。
2. ECU機能検証とプラントモデルに求められる精度
ECU機能検証を行うためにプラントモデルに求められる精度について示す。通常、制御設計に使われるプラントモデルは線形もしくは磁気飽和を考慮したモデルが使用される。これらのモデルはECU機能検証に用いられることも多い。それはモータや制御は要求性能に対してマージンを持つように設計されるため、プラントモデルの精度が高くなくてもECU機能検証に適用可能だからである。しかしモータの小型化・高出力化やより高い制御応答性が要求され、設計のマージンが小さくなってくるとプラントモデルに対する要求も厳しくなる。要求は検証内容や制御対象によって異なり、磁気飽和、空間高調波、損失を考慮する必要が出てくる。ここでは定常トルク制御での電圧制限の考慮、速度制御における負荷ステップ応答、瞬断判定を例にモデルに求められることを示していく。
3. モータ仕様
図1、表1にモータ断面図と仕様を示す。以降示される事例については同じモータが使用されている。
図1 モータ断面図
表1 モータ仕様
極数/スロット数 | 8/48 |
コア材 | 35JA300 |
磁石 | NdFeB, Br=1.2(T) |
出力 | 80 (kW) |
DC電圧 | 600 (V) |
最大電流値 | 250 (A) |
キャリア周波数 | 6 (kHz) |
4. プラントモデル仕様
ECU機能検証で必要なプラントモデル精度を示すために2つのモデルを用いる。一つは制御設計で使用されることが多い非線形DQモデル(以降DQモデル)、もう一つは空間高調波を考慮したモデル(SHモデル)とし、モデルで考慮される特性について表2に示す。また表3には事例で用いたモデルの分解能を示す。精度比較の基準としてはFEAモデルを用いることとした。
磁気飽和 | 空間分解能 | |
DQモデル | 考慮(注) | 考慮されない |
SHモデル | 考慮 | 考慮 |
(注)磁石磁束の磁気飽和は考慮されない
図2 NT特性
図3 誘起電圧波形
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